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その156 振られた賽



 『……出てこない、か?』


 「何を言ってるの! レオスを離しなさい!」


 「……!」


 レオスを人質に取られているに等しい状態で、ルビアが踏み出せずにいた。

 そこへ、アスモデウス、バス子の視界に入ったのは首を折られたレオス……ではなく、破壊された扉の向こうにいる悪魔の同志であるモラクスとバルバトスだった。


 バス子は一瞬戸惑うが、目配せをもらった後、モラクスがアマルティアへと一気に迫る。元姿、すなわち牛頭の状態でだ。援護には矢をつがえたバルバトス。

 レオスの言うことが合っているなら自分たちの攻撃でダメージを与えられるはずと、バス子も動き出す。


 「メディナさん、メモを! お嬢様、わたしがレオスさんに触ったらカオティック・ダークムーンを撃ってください!」


 「これ。バス、お願い」


 「どうするつもり!?」


 「話をしている暇はありません……!」


 『ん? アスモデウス、君一人で私に勝てるとでも?』


 「レオスさんを助け出すのが先決でしてね! その後で相手をしてあげますよ!」


 『はははは! 大人しく返すわけないよね!』


 「まあそうだろうけど、今回ばかりは勘弁してくれ」


 ガゴッ!


 バス子に気を取られていた隙に、不意打ちでモラクスの太い腕がアマルティアの後頭部へ炸裂。バス子から目を離しモラクスに目を向けて口を開く。


 『む……!? 悪魔……モラクス君か! だけどひとり増えただけで――』


 ドスドス!


 「ひとりじゃないぞ」


 『バルバトス……!』


 モラクスへ魔法を放とうとしたアマルティアの腕に矢が刺さり、バルバトスも姿を隠したまま返事をする。一瞬。だけどバス子にはその一瞬で十分だった。


 「メディナさん!」


 バス子がメディナへ叫ぶと、レオスに握らせた青いうさぎのメモ帳を破った。直後、フッとセブン・デイズに串刺しになっていたレオスの姿が消えた。


 そして直後にベルゼラも叫んだ。


 「離れてバス子! ”カオティック・ダークムーン”!」


 グォン……!


 月を模した魔力の塊がアマルティアへ向かう! バス子とモラクスが離れると、アマルティアへ直撃した!


 『ぐ……! やるね、でもこの程度じゃ――』


 「”カオティック・ダークムーン”! ”カオティック・ダークムーン”! ”カオティック・ダークムーン”!」


 『う、お、おお!』


 ベルゼラは一発で終わらせず、何度も撃ち込んでいく。その中へバルバトスも矢を次々と放ち、足止めをする。一方、メディナの下へ転移したレオスは――


 「エリィ、こっち。まずい」


 「レオス……!? は、早く回復を……! 《キュアヒーリング》!」


 「か、貫通しちゃってますよ……《ヒール》!」


 エリィとアニスの二人がかかりで回復魔法を使いレオスを癒していく。


 「レオスがここまでやられるなんて……」


 「悔しいけど、あたしでも傷を負わせられるかどうか……。クロウ、あんた今からすぐにアニスを連れてここから逃げなさい」


 「そんな……!? 僕も一緒に戦います!」


 「それでアニスを死なせる気? あいつは逆らう人間は確実に殺すわよ。でもあくまでも『遊び』の延長なら逃げた人間までは追わないはず。レオスとエリィ、ベルが頼みの綱だけど勝てるとは限らない……見なさい」


 ルビアが冷や汗をかきながらアマルティアへ目を向ける。


 「も、もう、力が……」


 「お嬢様!」


 バス子がくず折れるベルゼラを支えると、爆発がおさまりアマルティアが再び姿を現す。


 『ふう……さすがは別世界の大魔王の技。私もそれなりにダメージを受けたよ。腕も背中もちょっと痛いかな』


 「……化け物が……」


 モラクスが遠目で呟くが、アマルティアは気にした風もなくレオス達に目を向けて目を細める。


 『それじゃ、そろそろ消えてもらおうかな? 生かしておいて楽しもうと思ったけど、こう抵抗されたら面白くない。悪魔の力は面白いけど、いいや、他になにか呼び出せばいいし』


 スッとアマルティアがルビア、クロウ、アニスの方へ手を掲げると、


 「逃げてふたりとも!」


 まずい、そう判断したルビアが叫んだ!


 「アニスこっちだ!」


 「で、でも……!」


 『まずはそっちのふたりからかな? 《イグナイトブレイク》』


 ゴォォォォ!


 業火と呼んでいいほどの火柱がクロウとアニスを襲う。


 「う、うわ……!?」


 「急ぐ。元気で」


 「メ、メディナさん……ありがとうございます……!」


 メディナが二人の前に立ちはだかり、左手でイグナイトブレイクを吸収しことなきを得る。アマルティアは無駄だと言わんばかりにもう片方の手で窓へ向かうクロウ達へ魔法を放つ。


 『もう一撃! ははは! その腕じゃ間に合わないだろう!』


 「……」


 魔力量が大きいのか、メディナの左手はどす黒く変色していた。涼しい顔をしているが、腕はだらりと下がったままだった。


 「もう少し……!」


 「ダメ……!」


 「この距離じゃ間に合わない……!」


 業火がふたりを焼き尽くす、そう思われたが――


 「《エクスプロージョン》……!」


 ドゴォオォォン!


 『おや?』


 突如現れたエクスプロージョンでイグナイトブレイクが相殺され、大爆発を起こした。すぐに女性の声が響き渡る。


 「行きなさい!」


 「あ、あなたは……すみません……!」


 クロウはアニスを抱え、窓破って外へと脱出。それを見送り、安堵のため息を吐いたのは、陰に隠れていたルキルだった。


 『……ふーん。まだ愚か者がいたんだ。はあ……こう色々と邪魔されたらさすがに温厚な私も少し腹が立つね。国王は傀儡にして戦争を起こそうと思ったけど、もういいかな。この部屋ごと消滅させるよ! ……このバアルの力を使ってね』


 右手から目を瞑った男の顔がにゅっと飛び出し、バス子が大きく目を見開いた。


 「バ、バアル様!? 遺体が無いと思ったら……! あんたが!」


 『そういうことさ。一番最初にどさくさで殺して力を奪ったんだけど、中々使いどころが無くてねえ。色々な知恵があるのは楽しいからいいけどね! この”カタストロフ”で終わりだよ』


 あマルティはそう言い、両手に力を収束させていく。咄嗟にモラクスがルキルの前に立ちはだかり、


 「まずい……!? あれは真面目にこの辺り一帯を焦土と化すぞ!?」


 バルバトスが矢を放ちながら叫ぶ。


 だが、アマルティアが止まる気配はない。


 「私が行く」


 「メディナ、その腕じゃ無理よ!」


 『終わりだ。”カタストロ……”』


 にやにやと笑いながら放とうとしたその時!


 ゴシャ……!


 『うぐあ!?』


 ゴロゴロゴロ……


 いきなり顔面を殴りつけられ、アマルティアは勢いよく吹き飛び床に転がった。


 【ふう……危なかった……。死にかけていたから入れ替われたよ。バス子ちゃん、エリィを殺すふりをしたのは褒められないけど、あの時暴走とはいえ、僕を呼び覚ましたのは結果的に良かったかもね】


 そうウインクするのは、エクスィレオス……大人レオスだった。

ここまでは予測通り! さて、次回は……?


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『とりあえずふたりは逃げることができたか……』


犠牲が増えるよりはね


『ルビアとルキルは完全お荷物ですやん』


シッ! 聖職のプライドがあるの!

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