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その153 黒幕

 

 「どうしたのよレオス!?」


 「レオスさん!」


 「待って! ルビア、ベル、倒れている人たちの介抱を! アニス、回復魔法を手伝って!」


 「は、はい、です!」


 背後でエリィとベルゼラの叫び声が聞こえ、各自動き出す。手伝いたいが今はそれどころではない。目の前の男、何者か分からないけど、こいつはやばい。僕の直観がそう訴えるのだ。


 「離れろ……!」


 苦しむ国王様から引き離すよう、男へ剣を振るう。


 「おっと。そうか、君が先に来ていたのか!」


 「当たらない……!? <インフェルノブラスト>!」


 手加減は一切していない僕の剣を最小限の動きだけで回避する銀髪の男。目の前にいるのにまるで幻覚を見ているかのような錯覚に襲われ、広範囲の魔法でケリをつけることにした。


 ゴゥ!


 とんでもない熱量が男を包みこむ! そこへバス子とメディナが駆けつけてくれた。


 「どうしたんですかレオスさん! 急に斬りかかるなんて」


 「バス、油断しない」


 そういうメディナの眉は険しく、珍しく汗をかいていた。その目は業火に包み込まれた銀髪の男から離さない。


 「なんでかわからないけどこいつは『やばい』と感じたんだ。対峙してわかったけど、存在が希薄なのに悪神の僕のような気配を漂わせていた」


 「ははは、酷いね。私を『君のようなもの』と一緒にされちゃあ」


 「な……!?」


 ボフッ! と、燃えさかる炎を取り払いなが銀髪の男が髪をかき上げて僕に笑いかけてきた。無傷……!? 驚愕する僕達の顔を見て満足げな表情で口を開く。

 

 「ははは、足止めは失敗したのか、相当数の魔物に襲われたと思うけど孵化させたんだ? いやはや、伊達に【悪神】じゃないってことだね」


 「……!? どうしてそれを――」


 「――知っている? かい? ……そうだね、#本当__・__#の顔を見られてしまったからには仕方がない。面白いことを教えてあげるよ。まず最初に言っておくと、私は君のことを知っている。いや、そこの賢聖や大魔王の娘のことも。異世界からきた悪魔もね」


 そこでバス子が目を細めて槍を構えて質問をする。


 「……あんた、もしかして”旅の男”じゃないですかね……? ハイラル王国で国王に呪いをかけて、わたし達をこの世界へ呼んだ」


 「はは。そうだよ、アスモデウス」


 「……っ!」


 彼がバス子の本名を言ったその瞬間、バス子は今までにみたことのない表情で槍を構えて突撃した!


 「元の世界へ戻る手段、教えてもらえませんかねえ!!」


 ビュ!


 速い! 奇襲にほぼ近い状態で捻じるように突き出した槍は男の足を捉えている。


 「まあ、その前に話を聞いてほしいかな」


 鬼気迫るバス子の攻撃をやんわりと、まるでこどもを窘めるような言い方で軽く打ち払う。


 「嘘……!?」


 「バス子下がれ! こいつは嫌な感じがする……!」


 「チッ……」


 「ああ、ありがとうエクスィレオス君。これで話ができるよ。さて、どこから話そうか。はは、こういうのもたまにはいいね!」


 「……」


 僕の前世でのフルネームを……。本当に何者なんだ? 物腰は柔らかだけど嫌な感じはまったく変わることは無い。にやにやと笑う猫目をした銀髪の男に尋ねてみることにした。


 「なら聞かせてもらうよ。あなたが大魔王と悪魔達を呼んだ張本人、”旅の男”ってことでいいかい?」


 「ははは! 私はそんな呼び名なのかい? まあ、各国を巡って話をするとき、そう名乗っていたからそんなものなのかな? そうだよ、私がアスル公国の国王を唆して異世界からの人物を召喚させた黒幕ってやつさ。ああ、いいね黒幕って響き」


 銀髪の男が愉快そうに答えると、駆け寄ってきたクロウが構えながら口を開く。


 「こいつが……!? アスル公国って五十年も前に滅びたのに、どうして僕達とそれほど変わらない姿をしているんだろう……」


 「いい質問だよ、クロウ少年! そうそう、まだ名乗っていなかったね。私の名は『アマルティア』この世界の神だよ』


 「は……?」


 僕はつい間の抜けた声を出してしまう。しかし、この嫌な感じは#悪神__僕__#に近いものだと思えばそれもあり得るか? アマルティアはさらに続ける。


 『なので、歳は取らない。だからエクスィレオス君達も知っている。これでいいかな? ではこれで……』


 と、踵を返して去ろうとするアマルティア。


 「<アクセラレータ>!」


 『おっと、まだなにか用かい?』


 「あるに決まってるだろ……! エスカラーチとバス子達悪魔を呼んだ理由を聞いていない。戻る方法もだ。それとこの世界に神は居ないとソレイユが言っていた。なら神と名乗るお前はなんだ!」


 『ソレイユ。あの女神か。いいよ、答えてあげる。エスカラーチと悪魔のことからでいいかな? あれは面白いかなと思ったんだよ』


 「面白い……?」


 『そうだよ、アスモデウス。世界は平和だろう? ずっと眺めているのも飽きてくる。だから刺激が欲しかったのさ』


 「そんなくだらない理由で……」


 『そうかい? 君達も退屈な日々に飽きてきたら趣味をやるだろう? それと同じさ。帰る方法はあるけど、悪魔達は私としても手放したくないから教えては上げられないなあ。ねえ?』


 そう言って右手を開くと、そこからフクロウの顔がにゅっと出てくる。


 「う、うう……」


 「あ、あなた! アンドラスさんじゃありませんか!?」


 「そ、その声はアスモデウスか……た、助け――」


 『はい、そこまで』


 にこやかに手を握りしめると、アンドラスと呼ばれたフクロウ頭は姿を消す。


 『悪魔達はそれぞれ面白い能力を持っているからね。取り込んでいるんだよ。君も取り込もうかな? そういうことだから帰る方法は教えてあげないよ?』


 悪気などどこにも無いと肩を竦めて言い放つ。そして、次の回答に、僕達は戦慄を覚える。


 『そうそう、神が居ないってことだけど、大昔は居たんだ。だけど――』



 ◆ ◇ ◆



 『嘘でしょ……!? レオス達、このままじゃ消されるじゃない!?』


 ルアが上位の神へレオス達の世界の神について事情を聞き、慌ててソレイユの下まで戻っていた。よほどの情報なのか、顔は若干青い。やがてソレイユの部屋へ辿り着き、扉を大きく開け放った。


 『ソレイユ、大変よ! あの世界って、これは?』


 『うん、慌ただしいレオスさんの様子を見ていたんだけど、神と名乗る男が現れたの』


 『こいつ……! いけしゃあしゃあと!』


 『いなかった訳じゃなかったんだね』


 ソレイユがそういうと、ルアは首を振ってソレイユに告げる。


 『こいつの名はアマルティア。大昔、光の剣を神に与えられて世界の膿を払った勇者』


 『え……?』


 『そして、その手で神を殺し、その力を奪ったとんでもない極悪人よ……!』

今日は0時に間に合った……!


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『いやっほぉぉぉう!』


うるさっ!? やっぱ出すんじゃなかった!?

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