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その143 悪魔達



 「さて、お揃い……って、随分少ないですね?」


 「ああ。過激派の連中がここへ戻ってくることは殆どないからな。マルコシアスのようにこの世界で生きていくと決めた者もいる」


 アガレス、サブナック、ヴィネといったこれまでレオスと関わった者に加え、メディナを回復したブエルや、


 「ウヴァルさん、グレモリーさん、久しぶりですね」


 「んふふ、久しぶり」


 「元気そうでなによりです」


 新しいメンツも会議室へ集まっていた。バス子は一度深呼吸した後、口を開いた。


 「まず、残念なお話から……。わたし達のトップであるバアル様ですが、蘇らせる手立ては、今のところありません。少し前に大魔王エスカラーチ様の蘇生をするため黄泉の丘へ参上しました。一応、復活をすることができたのですが、すぐに肉体は崩壊。長時間の蘇生はできないことがわかりました」


 「なんと……」


 「あいつらとそこまで行ったんだな。そうか……」

 

 あちこちからため息や落胆の声があがり、バス子は一度口を噤む。正直、バス子自身もあの蘇生には期待をかけていただけに仲間に申し訳ないと思っていた。


 「ふむ、バアル様の亡骸はまだあるが、処置を考えねばならんか……。それで、良いニュースというのは?」


 「ええ。この世界にわたし達を呼んだ黒幕の正体を知ることができました」


 「な!? それは本当かい! それじゃあ我々は何かの間違いでここへ来たわけでは無かった?」


 ブエルがメガネを直しながら立ち上がり、声を荒げる。バス子は頷き、話を続けた。


 「はい。ブエルさん。ここは大魔王様の領地ですが、前身はアスル公国という人間の国でした。当時の国王が怪しげな”旅の男”に唆され、戦争の道具のために呼んだみたいなんです。大魔王様も同じ境遇で、わたし達は公国に吸収される前に大魔王様が国王を、国を滅ぼしたというわけです」


 すると、ブエルが少し考えた後、首を傾げて口を開く。


 「旅の男……そいつは人間だろう? 異世界の者を呼び寄せる術をどうして知っているんだい?」


 「あ!」


 そう言われてバス子は手に口を当てて呻く。そういえば、と。

 旅の男が自分たちを元の世界に戻せる、という思考には行きつくも、レオスやエリィといった『転生者』の存在がバス子の常識を崩しており、『何故そんなことを知っていたのか?』という考えにはいかなかった。

 

 レオスという異端な力を持つ者は思考を鈍らせていたのだった。


 バス子はレオスにも知らせないと――そう思ったところで、アガレスが語り掛けてきた。


 「ご苦労だったな、アスモデウスよ。では、我等悪魔は全力で旅の男を探す。その者の風貌はわかるか?」


 「それが――」


 五十年も前のことで、もうそれを知る者はもういないことを告げる。この時点でレオス達が”国”を混乱に陥れようとしていることがわかっていたのだが、今のバス子には知る由もなかった。


 「むう……いいところまで来たが惜しいな。どちらにせよ姿を変えている可能性もあるし、五十年前とは容姿も違うだろう。だが、有益な情報だった。では、こうしよう。おかしな動きをしている男が居ないか、町を虱潰しに調べるとしよう。一つの国に二人、時間はかかるだろうが何もしないよりもマシだ。過激派の連中にも会ったら伝えるとしよう。皆の者、頼むぞ!」


 「了解です」


 バス子が返すと会議室が騒然となり、行動を開始していた。


 「んふふ、楽しくなってきたわね♪ 旅の男を見つけたら、八つ裂きにしちゃいそう」


 「やめろよグレモリー!? 帰れなくなるだろ!?」


 「ヴィネ、一緒に行こうぜ」


 「オッケー」


 各国へ散らばっていく悪魔達を尻目にアガレスは前に立っていたバス子へ近づいていく。


 「お前はどうするのだ?」


 「わたしはお嬢様のところへ戻ります。今お世話になっているパーティは信用できますし、何となくですが真相に近い場所にいます。わたしはわたしで調査をしますよ。丁度、レオスさんの故郷であるラーヴァが目的地ですしね」


 「……わかった。引き続き頼むぞ?」


 「ええ。そういえば、冥王……メディナさんも一緒ですよ」


 「そうか。なにかに使えると思って拾ったが、まさか大魔王も我らと同じ境遇とは因果なものだ」


 「行く前にバアル様の遺体を見せてもらってもいいですか? さっきはあのように言いましたが、一瞬だけ生き返るならバアル様がなぜ死んでしまったのかを聞くことはできるかな、と」


 「ふむ。それは確かに……もしかすると旅の男の情報を持っているかもしれん。悪くない案だ」


 そう言い、アガレスとバス子はバアルの遺体を見に行くが――


 「029089、と……」


 アガレスがパネルを操作し、カチッと封印されていた扉を開く。


 「……!?」


 「無い……!? 遺体が無いぞ……ど、どういうことだ!?」


 ガラスケースのような寝台は、もぬけの殻だった――

 



 ◆ ◇ ◆




 「……モラクスぅ……話をややこしくするなっての……」


 ルビアが魔聖と戦っていた時、変装をしたバルバトスはあの場にいた。そして、謁見の間での話も聞いていたのだ。


 「旅の男ねえ。どこのどいつか分からないのが一番の問題だ。雲をつかむようなことができるとは思えないが……」


 レオス達を見失って途方に暮れたのを誤魔化すように町中を歩きながらぼやくバルバトス。ラーヴァに行くと言っていたからまあいいかと呑気なものである。


 「そういえばアスモデウスはいなかったな……どこ行ったんだ? ま、いいか飯でも食って馬車を――」


 と、適当な店に入ろとしたその時、


 「はっはっは、久しぶりじゃないかバルバトス。こんなところで何をしているのだ?」


 「モラクス……!? お前……!?」


 ローブで顔を隠したモラクスが話しかけてきた。


 「シッ! 大きい声を出すんじゃない……! 昨日ちょっとやらかして肩身が狭いんだ。町を出ようとしたところでお前を見つけたって訳さ」


 「知ってるよ! あの場に俺もいたからな! ……自由人のお前がなんでまた戦争の手助けなんてしてたんだ? ならそっちのやつは魔聖か」


 「おや、いたのかね? まあ色々あるが、単純に雇われたのだよ! 彼女と一緒にね」


 「……」


 隣にいたローブを目深にかぶった人物を見て、魔聖かとバルバトスは思いつつ話を続ける。


 「これからどうするんだ?」


 「金はもらい損ねたし、隣町にでも行くことにするよ。君は?」


 「俺はアスモデウス様のパーティを追っているんだ。ほら、拳聖のルビア、居ただろ? あいつらだよ」


 「……! 居場所を知っているの!」


 「うわ!? ああ、ラーヴァに行くって言ってたから追うつもりだ」


 「わたくしも連れて行きなさい……! あの貧乳共に思い知らせてあげないと……!」


 「はあ!? 嫌だよ、勝手にいけよ!」


 「まあまあ、彼女がこういっているんだ、旅は道連れというだろう? よろしく頼むよ。久しぶりの再会に、まずはご飯を一緒にしようじゃないか!」


 はっはっはと笑い、飯屋に入っていくモラクスを見てプルプル肩を震わすバルバトス。


 「お前等みたいなでしゃばりが付いてきたら、隠密が出来なくなるだろうが……! おい、聞いてんのか!」


 

 彼らがレオス達に追いつくのは、もう少し先の話――


次回から再びレオス視点へ!


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『戦場はラーヴァか』


さて、どうなるかな?

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