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その140 王妃様のお願い



 「――ということだった」


 「ふえぇ……」


 「だ、大魔王が異世界の住人だったなんて……」


 喫茶店でケーキを頬張りながらメディナが黄泉の丘での顛末をあたし達に説明してくれ、アニスとクロウが本気で驚いていた。


 「このタイミングで旅の男が繋がってくるなんて、出来の悪い物語みたいね。で、バス子は仲間のところへ戻ったんだ」


 「うん。バスの一番偉い人物は蘇る可能性が少なくなった」


 「それで旅の男を探すことにしたんですね。ルビアさん、王妃様が各国に旅の男に注意するように通達するって言ってましたけど、大魔王の件も明らかにしておいた方がいいんじゃ?」


 「そうね。レオスと合流してからが良かったけど、書状が出来る前に言っておかないといけないわ。それを食べたら戻るわよ」


 「ん」


 「ゆっくり食べてね、メディナさん」


 高速で咀嚼をするメディナにあきれ顔をしながらアニスが言う。メディナの咀嚼がゆっくりになったところで、あたしに尋ねてきた。

 

 「ところでその卵、なに?」


 「ああ、これ? ちょっと前に子狼を誘拐して売り飛ばそうとしたやつがこの町に居たのよ。そいつを見逃す代わりに売ってもらったってわけ」


 「ルビアは優しい。そんなやつのめして奪えば良かった」


 「うーん、何かお金に困ってそうだったからお金を渡せば犯罪はしなくなるかなって思ったのよ」


 「そう。時に優しさは仇となるから、注意。そしてドラゴンはまだ食べたことないから楽しみ」


 「食べないわよ!?」


 よだれを垂らすメディナから卵を背中に隠し、あたし達は再び城へと向かう。途中、ネックスやフェネクとすれ違い、後でギルドに来るようにと声をかけられた。

 

 「拳聖のルビアよ。申し訳ないけど、もう一度王妃様と話がしたいわ」


 門番へそう告げると、城の中へ伝達をしてくれ、あっさりと再度の面通しをすることができた。


 

 「ルビア様、先ほどはどうもありがとうございました。それで、どうかなさいましたか?」


 「お忙しいところ申し訳ありません。実は――」


 バス子達悪魔のことは伏せ、大魔王の件と旅の男について王妃様へと伝える。


 「異世界……そんなことが有り得るのですか……」


 「しかし、事実です。そこで、書状を各国へ回す際、大魔王のことを書いてもらえますか? 彼は確かに公国を滅ぼし、旅の男を探すために世を混乱に陥れました。……結局あたし達が倒しましたが、本来であれば手を取り合える人物だった。アスル公国の国王の犠牲者でもあると」


 「どこまで理解が得られるかはわかりませんが、約束しましょう」


 王妃様が微笑みながら頷き、あたしも頷き返す。続けて王妃様が口を開く。


 「お話は以上でしょうか? ルビア様はこの後どうなされるのですか? やはり旅の男を探しに?」


 「いえ、あたしは明日、仲間と合流してラーヴァ国へ向かいます」


 「ラーヴァへ?」


 「はい。元々、そういう旅だったのです。途中、紆余曲折を得てこんなことになっていますけどね」


 あたしが肩を竦めて返すと、王妃様は少し考えた後、


 「……ルビア様、お願いがあるのですが」


 「え? あ、はい。なんでしょうか?」


 「ラーヴァ国へ送る書状ですが、ルビア様にお願いしてもよろしいでしょうか?」


 ……こういう話をした後にラーヴァへ行くと告げたので、話がくる可能性はあるだろうと思っていたから驚きはない。だから後はあたしがどう答えるか? それだけである。


 受けない、という選択肢が一番いいだろう。余計なことに首を突っ込む必要はないのだから。しかし、旅の男という共通の敵を探すなら国に協力をし、協力を仰ぐのが手っ取り早い。


 メディナの話。いえ、エリィの案ではギルド経由で『探してもらう』ということだったので、あたし達が探すことに、レオスが懸念を抱かないかが心配ではある。


 が、


 「……その依頼、受けます」


 と、あたしは承諾する。


 「いいんですか? レオスさんに相談もなしで」


 クロウが鋭いことを言ってくるが、あたしは頷いてから返事をする。


 「書状を出すのは早い方がいいでしょ? どうせラーヴァには行くんだし。レオスが嫌だって言ったら別行動するわよ」


 「構わない。でもそれでいいか?」


 「いいわよ。いざとなればあたしだけでも国に協力すればいいから。故郷に帰ったらレオスとエリィ、ベルにはゆっくりしてもらいましょ」


 「わかった」


 メディナも頷いて了承し、この話はこれで終わる。王妃様が即座に書状を用意し、あたしに手渡してくる。


 「ではお願いしますね。聖職が手伝ってくれれば少しは安心できます。魔聖も手伝ってほしいものですが……」


 そう嘆きながら、王妃様は見送ってくれた。旅の男は国王の病気の呪いのことで早く見つけたいのだと思う。それ故に精力的に働きかけているのだ。


 「さて、それじゃ今日のところは帰って休みましょうか」


 「え!? ギルドはいかないのおねえちゃん?」


 「ま、明日でもいいでしょ? 疲れたから寝たいわ……」


 「自由だなあ……」




 そして、翌日――



 「ああ、ちゃんといたよ! トマトパスタを食べている時に急に体が光り出したから驚いたよ、僕」


 「その瞬間、お皿のパスタを全部口に入れるあたりメディナさんというかなんというか……」


 「ふふ、無事でよかったわ。ルビア、そっちはどうだった?」


 あたし達は予定通り、レオス達と合流を果たしていた。黄泉の丘でのことはメディナに聞いたけど、まさかエリィが前世でレオスの恋人だったとは……。

 言われてみればレオスのエリィに対する態度は大幅に変わった気がする。以前はレオスがなるべくエリィから離れようとしていたけど、今は凄く距離が近い。


 「色々あったけど、旅の男に関して――」


 「やっぱり鍵は旅の男か……タイミングが良すぎる気がするけど……」


 「そうね。でも、手がかりが少しでもあればチャンスはあるじゃない」


 「そうだね。ありがとうルビア、別行動は思ったよりも収穫があったよ」


 「どうしたしまして。さ、それじゃギルドへ行きましょう!」


 「あはは。ルビアさん張り切ってるわね」


 と、ベルに言われたけど、なんだか大人びて見えるエリィと、レオスとの関係にあたしはあの大人のレオスを思い浮かべ、少しだけ嫉妬するのであった――


















 ◆ ◇ ◆



 【あとがき劇場】



 というわけでルビア視点はこれにて終了です! 次回からレオス視点へと戻ります。


 他キャラ視点はどうだったでしょうか?


 もう一人、予定していますので、ご感想などお待ちしております!



本文にあるので割愛!


いつも読んでいただきありがとうございます!

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[一言] メディナ・ハムスター ( *¯ ꒳¯*) お口のポケットいっぱいに
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