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その139 残る謎と事後処理



 ――キラールの国を私物化して戦争を起こす企みはあたし達の手により食い止めることができ、捕縛することができた。

 王妃と王子はキラールの私室にあった隠し階段から地下室で発見された。幽閉されたのはここ一週間程度のことだったようで、お二人とも元気なのは幸いだった。

 一週間も姿が見えないことに違和感を覚えそうだが、そこはキラールが上手く目を逃れるための工作をしていたようで、宰相以下の側近たちすら誤魔化せていた。


 しかし――


 「国王の容態はいまだ良くはならない、か」


 「キラール殿、本当に毒を盛ったりしてはいないのか?」


 「くどい。私は旅の男に国王が倒れることを聞いてからこの計画に乗り出したのだ! こやつが倒れた時、自領地に居たと言っているだろう」


 そう、国王様は具合を悪くしたままだったのである。キラールが関わっていると詰問してもこの通りで、自分には関係ないとそっぽを向く始末だった。

 ネックスと、あたし達に書状を渡したクライルの町のギルドマスター、フェネク、そして各町のギルドマスター達が国王の寝室でキラールを取り囲んであーだこーだと怒鳴ったりしていたけど、結局何もわからず仕舞い。

 

 すると王妃様が、


 「……皆様、この度は本当にありがとうございました。まだ起きられぬ国王に代わりお礼を申し上げます。なお、キラールは爵位と領地の剥奪し、十年禁固刑に処します」


 「……くそっ! お前達はわかっておらん! 大魔王という共通の敵が居なくなった今、次は人間や異種族同士の争いが起こるのは明白! 攻められる前に攻める、そのために強固な国づくりが必要なのだ……!」


 「……連れて行きなさい」


 「後悔するなよ! あ、痛っ!? 乱暴すぎやせんか!?」


 王妃様の一言で引きずられるようにキラールは連れていかれ、王妃を含めたあたし達も寝室から出て謁見の間へと場所を移す。



 「我々に協力できることがあれば何でもおっしゃってください王妃。ここには来ておりませんが、領主各位は国をサポートするため力は惜しまぬと伝言を預かっております」


 「心強いですね。キラールの領地を任せるものを決めるので、一度ここへ集まるように通達をします。宰相、他にキラールの協力者がいないか調査をお願いします。特に牢獄の監視強化を」


 「はっ! ギルドから冒険者を借り受けましょう。ネックス殿、良いか?」


 「ぜひ頼む」


 ふうん、王妃様って幽閉されるくらいだから影響力は少ないのかと思ったけど、逆だったわね。テキパキと指示を出す姿は王妃に相応しいと感じる。捕まったのはおそらく、王子を人質にでも取られたのだろう。


 「――では、各自よろしくお願いします。後は夫……国王ですね……。毒でもないのに衰弱していくのは一体どうして……」


 ぞろぞろと冒険者達が去っていき、ギルドマスターだけがその場に残されると、王妃が玉座に座り一言呟く。それにネックスが口を開く。


 「キラールが唆されたという旅の男が怪しいですが、ここに踏み入った形跡は無さそうですし、本当にご病気なのかもしれません。色々な医者に見せた方がいいかもしれませんな。予言が当たったとは考えたくありませんが」


 「そうですね……」


 王妃様が返事を返すと同時に、あたしの袖が引かれ、メディナが尋ねてくる。


 「ルビア。旅の男とは?」


 「ん? さっきぐるぐる巻きにされていた男が居たでしょ? あいつが旅の男に国王が倒れて、キラールが実権を握って王になるみたいな予言をされたんですって。で、それを真に受けた結果がこれってわけよ」


 「そう。もしかすると、黒幕は旅の男かもしれない。さっき国王を見た時、胸のあたりに黒いモヤがあった。多分、呪い」


 「呪い!? お、おい、君、それは本当か!?」


 フェネクが驚いた声をあげ、動じずにメディナが頷く。顔には出さないけど、あたしも結構びっくりしていた。だけど、まだそれは序の口だった。


 「昔、アスル公国にも旅の男が現れたと聞いた。アスル公国は旅の男のせいで滅びた」


 「アスル公国だって!? 五十年も前に滅びたが、そのころから居たというのか?」


 「バスや大魔――」


 「ストップ!? とりあえず、キーワードは旅の男が呪いをかけたってことでいいのね?」


 余計な情報を与えると面倒になると、あたしが目くばせをしてメディナへ言うと、


 「それでいい。私達も旅の男を探している。アスル公国に、ここ。旅の男は国を滅ぼしたいのかもしれない」 


 と、簡潔にまとめてくれた。本当ならもっとややこしいことがあるみたいだけど、それはレオスと合流してから聞けばいいと思う。


 「では、各国に旅の男に注意するよう通達をした方が良いでしょうか?」


 「それがいい。呪いを解けるのは術者だけ。みんなで見つけた方が早い」


 王妃様の問いに即座に頷いたメディナの言葉を聞き、王妃様は宰相へ書状の準備をさせはじめ、もう一度あたし達を見て声をかけてきた。


 「拳聖のルビア様。それとお仲間のみなさん、ありがとうございました。ギルドマスターたちだけでは魔聖を倒すのは難しかったでしょう。改めてお礼をさせていただきますね」


 「あー、ギルドから謝礼を貰うから大丈夫です。成り行きだったのでお気にならさらず」


 「でも――」


 と、王妃様が口を開きかけたところで、メディナが袖を引っ張る。


 「ルビア、行こう」


 「ええ、そうね。ではあたし達はこれで。……ネックスさん? 謝礼は後からたっぷり貰うわね? あたしを騙し討ちした罪は……重いわよ?」


 あたしがにやりと笑うと、


 「……肝に銘じておこう。俺達はもう少し話がある。明日にでもギルドを尋ねてくれ」


 「オッケー、期待しているわ」


 ネックスは冷や汗をかきながらあたし達を見送ってくれた。


 そして城から出て、開口一番に後ろを歩くクロウとアニスへ振り向いて手を合わせる。


 「ごめんね! とんでもないことになって! メディナがなんとかしてくれたから良かったけど、ヘタしたらエクスプロージョンで死んでいたかもしれないもの!」


 ルキルは腐っても魔聖であるため、火傷じゃ済まない魔力で撃ちだしていた。正直、肝が冷えた。


 「大丈夫! 私達がついてくるって無理を言ったんだし、おねえちゃんも守ってくれたから! ね、クロウ君」


 「う、うん。でも、ちょっと怖かったよ。アニスに何かあったら僕どうしようかって思った……」


 レオスに似ているから、アニスに何かあったらクロウも良からぬ方向にいってしまいそうなことを考えるとメディナ召喚は本当にナイスだったと自分で自分を褒めたい。


 「埋め合わせは必ずするわ。それより、今は――」


 「うん。黄泉の丘でのことを話す。やや、ちょうどそこに個室がある喫茶店が」


 無表情かつ棒読みでメディナがあたしを見ながら喫茶店を指さして言う。


 「あんたさっき何か食べてたじゃない……」


 「あはは! メディナさんは食いしん坊さんなのね!」


 そう言ってアニスが笑いながらメディナの腕に絡みつく。


 それにしても、ちゃんと個室がある場所を選ぶあたりしっかりしているわね。


 あたし達は喫茶店でメディナの話を聞くのだった。





 え? アースドラゴンの卵? ずっと背負ってるわよ?

ルビアにダイジェストでお伝え中!


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『あ、そうつながるのか』


わかった?


『次回かその次で王妃に――』


まだ早い!?



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