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その119 アイム


 <???の日>


 トゥーンの村を出てから黄泉の丘へ向かう僕達……の、はずだったんだけど、到着してみれば村の入口だった。出発した時は入口を右に曲がって進んだのだからどうあがいてもここに辿り着くはずがない……

 仮に輪形彷徨になったとしても、それほどの距離を進んでいないし、林があるので円を描く動きにはならないのだ。


 「どうするんですか?」


 考える僕に話しかけてくるのはバス子。答えは一つしかない。


 「……ここに留まっていても仕方ないから、行こう。ちょっと回り道になるけど入口を背にして一度街道へ抜けた方がいいね」


 「それじゃ、早速行きましょう」


 ベルゼラに促され、馬達を反転し再度進む。霧に覆われた空間を進むも――


 「……レオス君……」


 不安げなエリィが僕の腕に抱きつき、呟いた。それも無理はないだろう、今度は先ほどより早い時間で、やはり村の入口が目の前にあったからだ。


 「何なんだ一体……悪魔の誰かが僕達の妨害をしているのか?」


 「こんな奇妙な能力を持ったヤツは居ませんよ。大魔王の手下が生きていたとか? メディナみたいに」


 チラリとバス子が屋根の上を見ると、村をじっと見つめているメディナが視界に入る。相変わらず何を考えているかわからない。けど、何かを知っている、そんな顔だ。


 「メディナ、何かあったのかい?」


 「ん。レオス、村に戻る。恐らく私達は囚われた」


 「囚われた……?」


 エリィが呟くとメディナが頷く。


 「村から霊的なものが感じられる。誰かはわからないけど、私達に何かをさせようとしているのかもしれない」


 「……それは冥王としての言葉、ということでいいかい?」


 「構わない」


 「じゃ、じゃあ、わたし達はそれをするまでここから出られないということですか!?」


 バス子が叫ぶと、一瞬考えてからメディナが僕を見て呟く。


 「私とえっちなことをしたら出られるかもしれない」


 「なんでナチュラルにすぐわかる嘘を言うのさ!?」


 「ばれた」


 ペロッと舌を出して目を横にするメディナの仕草が可愛い。じゃなくて、一応和ませようとしてくれたのかな? どちらにせよこのまま先へは進めないようなので、仕方なく村へ戻ることにした。


 「すみません! 先ほど出て行った者ですけど、開けてもらえませんか!」


 僕が厚い木の板を束ねて作られた門に向かって叫ぶと、覗き穴がパカっと開いて、驚いた声があがる。


 「あれ? 帰ってきたのかい!?」


 ギギギ……と、門が開き、馬車を進ませるとすぐに門が閉じられる。近くにいた人にそれらしい理由を告げた。


 「ええ、朝の連中が気になって戻ってきました。あれからは?」


 「ああ、大丈夫だ! とりあえず村長も喜ぶ! ちょっと待っててくれ!」


 門番は増員され、村の男が武器を持って警備を続けているようだ。僕達にして欲しいこと……もしかしてあのごろつきを退治してほしいというところだろうか? 


 だとしても誰が、どういう魔法を使ったのかが判明しないと何とも言えない。ポクポクと馬を歩かせていると、ゴルさんが慌てて走ってくる。


 「おお、これは皆さん! お話は聞きました。今、王都へ救援を呼びに言ってもらっています。もし、それより先にあいつらを撃退してくれたらお礼をさせていただきますぞ! さ、それまでごゆっくり村でお過ごしください。アイムも喜ぶでしょう、我が家にお越しください」


 と、無料宿泊を申し出てくれたので僕達はその言葉に甘えることにした。客間をエリィ達が使い、僕は空いていた一人部屋をあてがわれ、ことの成り行きを見守ることに決める。


 

 ――そして



 「へえ! エリィって偉い人なんだ! それに比べてレオスってばCランクだって……ププ……」


 「べ、別に偉くないですよ? レオス君、カードではCですけど本当はかなり強いんですよ!」


 「そうよ? アイムの彼氏だって牛飼いじゃない」


 「ば!? バンは、かかかかか彼氏なんかじゃないわよ!」


 「あら、私はバンさんだなんて一言も発してないけど?」


 「!? ……ううう、ベルぅ……」


 すでに村に滞在して三日が経過していた。

 

 村の中では、エリィとベルゼラがアイムの相手をし、バス子とメディナ、そして僕は、偵察の名目で交代で村の外に出て周囲の様子……というか、飛んでどこかに出られないか試してみる。だけど、お察しの通り抜け出ることはできなかった。


 そんな落胆する僕達とは裏腹に、アイムは嬉しそうに僕達について回り、会話を重ねて行った。話によると、この村は、放浪の果てに辿り着いた場所だったのだそうだ。

 

 ちなみにバン、というのは彼女と同い年の牛飼いの青年で、顔立ちはとても穏やかな優しそうな人である。アイムが狩りなんかをするのに対し、のんびりと乳を搾ったり野菜を育てたりしているので、エリィの聖職と僕のCランクの関係に似ているからか、よく僕をからかってくる。


 おや、そんなことを考えていると、バンが牛の散歩から戻るのが見えた。


 「ほら、噂をすれば」


 「もう! ……ふふ、楽しい! 悪いけど先に帰っててもらえる? バン、待ってよー」


 と、アイムは想い人であろうバンを追いかけて行ってしまい、いつものメンバーだけが残った。


 「……さて、今日も収穫はなしかな」


 「そうですね……村の人達と話していますけど、霊的なものというのがまったくわかりません……」


 エリィが俯くと、ベルゼラが腕組みをしてメディナへ尋ねる。


 「あなたにはわからないの?」


 「……髑髏の仮面が割られて力が落ちているから、そこまではわからない。一人か、二人なのか。それすらも」


 メディナがさらっと衝撃的なことを言い、バス子が驚きの声をあげ、僕もつい振り返ってしまう。


 「え!? あんた大人レオスさんとの戦いからずっとですか?」


 「ええー……何か悪いことしちゃったなあ……」


 「構わない。その内直る。もしくは大魔王様復活の時に直してもらう」


 そういう理由もあるのか、と変に納得してしまった。ともあれ、進展がないままなのはいただけない。鍵はあのごろつきたちだろうか?

 その日も、村で採れた野菜や、周辺にいる魔物の肉などをごちそうになり、一日が終わった。

 


 さらに翌日


 「とーっとっとっと」


 「コケーコッコッコ……」


 「上手いねエリィ《クリエイトアース》」


 「あっという間に耕された……!? なにその魔法……」


 僕とエリィそしてアイムで、早朝のニワトリの卵回収に小屋へ出向いていた。いつも食べさせてもらってばかりじゃ悪いからこういった作業や、畑仕事なんかを手伝っていたりする。


 「旅に出る前はこうやって畑を耕したり、家畜と一緒に暮らしていましたからね! 大魔王を倒したら静かに暮らすつもりだったんですよ?」


 「ふうん、もうウチの村で暮らしたら? レオスやベル、バス子とメディナも一緒にさ。大歓迎だよ!」


 「はは、ありがたいけど僕は実家に帰っている途中だからね。それに、王都で待っている仲間もいるんだ。嬉しいけど、今は遠慮しておくよ」


 「ええ。ご両親に挨拶をしないといけませんからね」


 アイムが嬉しいことを言ってくれるけど、僕達の旅の終わりはここじゃないことをやんわり告げる。


 「……そう、残念……」


 「アイム?」


 「あ、親父に呼ばれていたんだった! また後でねエリィ、レオス!」


 そう言って駆けていくアイム。


 「何だったんでしょう、今のは」


 「……やっぱりアイムが怪しい、かな? あの時、最初に出会ったのはアイムだったし。……ごろつき達も出てこないし、どうすればいいんだろう」


 「困りましたね……」


 これ以上はルビアを待たせることになると、僕達は本気で困っていた。強引にアイムに問いただしてみるかと思ったところで、事態が動き出した。



 「大変だ村長! 騎士団を呼びに行った奴らが――」


ループものって怖いですよね……


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『これは……』


実はごろつきが、とかいうパターンもアリかしら?


『キモイから却下』


ええー……

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