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その111 賑やかな旅へ



 

 <土曜の日>


 町を出発してからすでに一日が経過していた。旅は順調に進み、後二日ほどでハイラル王国へ入る予定となっている。森や山と違い、きれいな街道なので馬達の足取りも軽いんだけど、ここに来て魔物に襲われることが多くなってきた。


 「ジャイアントビーは火に弱いからあたしが、と《フレアニードル》!」


 精霊魔法で炎の矢を掌から出し、数十匹はいる大きな蜂を燃やしていくルビア。今のメンバーなら誰か一人が戦えば楽勝なので馬達をしっかり守ることがでるのはありがたいね。


 「いいですねルビア。使いこなせているじゃありませんか!」


 「いやあ、楽しいわね。前は火魔法を使っても指先から煙しか出なかったから……」


 「姐さんブラボー! 楽させてもらってます!」


 「レオス、急ぐ。焼けた蜂を求めて今度はセンチピードが来そう」


 屋根の上で飛んでいるメディナが、遠くを見ながら僕へそう告げる。


 「オッケー! エリィ、蜂の掃除を頼むよ」


 「任せてください! 《ウインド》!」


 ビュオウ、という音と共に鉢の死骸は森の奥へと吹き飛ばされ、その間に馬車を走らせる。これならムカデの魔物も街道まで出てこないだろう。飛んでいたメディナとバス子がそれぞれ荷台に戻り喋り出す。僕は御者台で聞き耳を立てる形だ。



 「やー、よく考えると聖職二人に大魔王の娘。それに冥王とこのわたしがいるから何気に最強パーティじゃないですかね!」


 「まあね。ただ、私は魔法制御がまだ上手くないからみんなには及ばないわね」


 「ベルは謙虚。大魔王様の娘なら私が教える。バス子は早く帰れ」

 

 「どうしてこのナチュラルエロ娘はわたしに喧嘩を売ってきますかね!? ……まあいいです。いずれわたしの力を見て思い知るが――」


 「このレバー、なに?」


 ガコン


 「いいやぁぁぁぁぁ!?」


 「ダメだよメディナ!? それ荷台の壁を倒すレバーなんだから」


 壁に背を預けていたバス子が転がり落ちていった。そこは悪魔の序列32位。地面に接触する前に飛んで帰ってきた。


 「はあ……はあ……死ぬかと思いましたよ」


 「チッ」


 「確信犯でした!?」


 エリィが喧嘩したらダメですよと窘めていられていた。


 まあ、こんな感じで魔物は簡単に倒せているから旅自体は順調なんだよね。それにしても国境に近づくたびにどんどん増えている気がする。


 結局夜までの間、デビルヘラジカ、ポイズンラット、レッドスネークetc……街道に躍り出てくる魔物を倒しまくっていた。


 街道から少し離れて馬車を止め、焚火を囲んで僕達はご飯を食べながら今日の


 「これ、他の旅人は大丈夫なんですかね?」


 「もっしゅもっしゅ。大した魔物は出てない」


 「メディナの言う通りだけど、冒険者じゃない一団とかだと危ない気はするよね。かと言って僕達にできることは無いんだけど。バス子達悪魔が何かやってるってことは無い?」


 僕はバス子に尋ねると、うーんと首を傾げて言いにくそうに答えてくれた。


 「前に言いましたけど、穏健派と強硬派がいると。で、各国に散っている強硬派の連中の可能性は捨てきれませんね。セーレがスヴェン王国を撤退したことは知られているでしょうし」


 ハイラル王国でまた生贄探しをしている同僚がいるかもしれないとバス子は言う。


 「悪魔達にも悪い奴はいる。穏健派と過激派がどちらかを潰さないのはお互いの力が拮抗しているから」


 「そうです。だいたい元の世界に戻りたいだけなんですから、仲間同士で殺し合いをする必要はありませんからねえ。手段は違えど目的は同じなのでお互いの邪魔をしないのが暗黙のルールになっています」


 「難儀ねえ」


 まあ、もう50年経ってますし、今は楽しいからいいですけどねとルビアに笑いかけるバス子。そういえば、とバス子へもう一つ尋ねる。


 「そういえば序列一位の人ってどんな人なの?


 「興味あるわね。やっぱり32位より凄いんでしょ?」


 「お嬢様……。ま、まあ、言ってなかったですね。こほん。序列一位は『超魔王バアル』様という方で、神にも匹敵する力を持っています。こういうのもなんですけどレオスさんと同等の力はあると確信しています」


 そんなに強いのか。それは是非会ってみたい気もする。全力で戦うのも面白そ――ダメだダメだ!? 僕は商人だって!

 ……今のところ保留だけど、もしかしたら大魔王復活後、バアルさんを復活させた方がいいのかもしれないね。各国に散っている人たちを送還すればいざこざも無くなるんじゃないかな?


 「もうすぐ大魔王も復活しますし、何かわかるといいですね」


 「そうね。……お母さんのこと、聞いてみたいわ」


 「そういえば母親は居なかったわね?」


 すると冥王がぼそりとパンを口に入れたまま呟く。


 「おうひょふぁまふぁわらひ……」


 「飲み込んでくれるかい」


 「王妃は私も知らない」


 それだけかい!?


 「あんたは黙っててください。わたしがお嬢様の世話係になった時にはすでにいませんでしたね。どうなったのかは教えてくれませんでした」


 「そう……私も一度だけ聞いたことがあるけど、険しい顔をしてそれ以上は何も言ってくれなかったわね」


 王妃様、ベルゼラのお母さんにもなにかあるのだろうか? 


 ベルゼラのためにも、早く『黄泉の丘』にいかないといけないね。


 僕の作ったクリエイトアース製の家でのんびり休み、小さい空気穴しかない僕の家は何人たりとも入ることはできなかった。うん、久しぶりに誰にも抱きつかれないで眠ることができたよ……?


 そしてさらに二日かけて、僕達はハイラル王国の国境へと到着する。


 しかし、まーた面倒なことが……

お仕事が忙しくて短め……申し訳ありません……知っている方はお察しください……


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『金曜は休みなんだから馬車馬のように働くのよ』


休ませてくれよ!?


『ダメよ。あんたはさらに4月はいそがしくなるんだから今のうちにオワラセナイト……』


なんかこわいんですが!?

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