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その108 神の存在



 <闇曜の日>


 バス子や冥王メディナのことはとりあえず大魔王復活まで保留となり、その場は解散。だけど、話題には出なかったのか出さなかったのか、僕の丸出し……もとい、悪神覚醒の件はまだ考える余地がある。引き金はエリィで、とてもどす黒い気持ちになったのは認めるけど、体まで前世になってしまうことなんてあるのだろうか?


 日付が変わってもそのことが気がかりで中々眠れず、こうしてベッドの上でごろごろと寝がえりをうっていた。


 「確かに僕なんだけど、なんていうのか、こう、自分の意思が塗り替えられるような感じがしたんだよね。もしあのままバス子を殺していたらどうなっていただろう……あふ……」


 ようやく眠気が訪れたみたいだと、あくびをした直後に僕は意識を手放す。


 

 「うふふ」


 「……」



 ◆ ◇ ◆



 どれくらい眠っていただろうか? 頭が覚醒し、僕は目を開けた。そこで気づくのは、


 「腕にいつもの重みが無い……?」


 ということはエリィが僕を抱き枕にしていないということで、珍しいなと、もはや通常の感覚がマヒしているのも気にせず上半身を起こす。


 「なんだかまだ疲れが取れていない……って、あれ? 宿屋の部屋ってこんなに白かったっけ!?」


 『大丈夫、ここは宿屋じゃありませんよ』


 「宿屋で寝ていたのが最後の記憶なんだからむしろそれはヤバイんじゃないかな……。ん? その声は――」


 聞き覚えのある声だと気づき、声がかかった方を見ると白い椅子に座ってこっちに手を振っているソレイユの姿が目に入った。


 「ソレイユじゃないか!? ということはここは夢の中?」


 『はい!』


 元気よく返事をしたソレイユがこちらへ向かい、僕は上半身を起こしたまま声をかける。

 

 「一体どうして……」


 と、口にしようとしたところで僕は悪神覚醒の件だろうと推測ができた。記憶が戻るだけでもおおごとだったのに、人間を亡ぼそうとした存在に覚醒するのは流石に見過ごせないのだろう。


 『全部見ていましたよレオスさん』


 「やっぱりその件だね。不可抗力、とは言っても起きてしまったことだからね」


 『その、あんなに大きいだなんて……わたし驚いちゃいました……』


 「それはどこのことを言っているんだろうね!? 身長だって思いたいから本題に入るけど、思い当たる原因ってある? 元の姿に戻ったのも不思議なんだよね」


 そう尋ねると、顔を赤くしていたソレイユは真顔になり口を開く。


 『前提条件から言うと、前世の体になること自体あり得ません。億が一、変化したとしても元の姿に戻ることも考えられないんです。だから見ていた時かなり驚きました』


 「……ピンポイントでよく見ていたね……暇なの?」


 『そうじゃありませんよ! 異常事態を示すコールがあったから見たんです。他の世界でもやっていることですよ? でないと神託もできませんし』


 ソレイユが言うには、例えば魔王が生まれたから勇者に光の剣を授ける神託をすることがあるそうだけど、常に世界を監視しているわけではないから、そういった異常事態が発生したら知らせるようになっているらしい。まあ確かに神が寝過ごして世界が滅びたらたまったもんじゃないけどさ。


 『そういう事例は無いわけでもありませんしね』


 「あ、そう……。ま、まあ、それはいいとしてそのあり得ないことが僕の身に起こった原因はわかるのかい?」


 『まだ、調査中です。前世の記憶が戻るというのはテンプ……失礼、よくあることなんですけどね。ただ、レオスさんのことを踏まえ、お姉ちゃんがこの件に乗り出してくれたのでスピード解決が期待できます!』


 「お姉ちゃん……ルアかあ。大丈夫?」


 ガゴン!


 「痛っ!?」


 急に大きな金だらいが落ちてきて僕の頭に直撃し、ふらふらになる。ソレイユは困った顔をしながら話を続けた。


 『お姉ちゃん、近くにいるから不用意な発言は止めた方がいいですよ。とりあえずレオスさんには調査が始まったということを伝えにきたんです。今いる世界は神がいないんです。もちろんわたしは女神ですが、送る選定先というだけなんですよね。妨害が無いので夢の中とカバンに仕込むことができるのは幸いですけど』

 

 そういえばそんな話も聞いた気がする。それに加えておかしいと思うのがもう一つ。


 「それとバス子達悪魔なんだけど、そっちについてはどう?」


 『別世界から来た、ですね? それについては無きしもあらず……というより『あの世界の中の別世界』という認識でいいのかもしれません。ほら、レオスさんが昔配下として使っていた悪魔族。あれもムール界っていう裏世界みたいな感じだったじゃないですか』


 「そう言われると……」


 そんな気がする。


 でも、何故か僕はそのことについては胸がもやる。イチゴ大福のせいだろうか? ともあれ、ルアが調査をするというのであれば解決はできそうだ。


 「とりあえず事情はわかったよ。続報を待つってことでいいかな」


 『そうですね。そこでレオスさんへお願いなのですが、この先あまり感情を昂らせないよう注意をお願いします。もし元に戻れなくなったらその世界でレオスさんを倒せる人はいませんので……』


 「そ、そうだね。前世の世界はルアが管理していたから僕を倒せたわけだし、この世界に干渉できる神がいないならそれも難しいのか……」


 『そういうことですね。あ、そろそろ目が覚めそうです』


 見れば確かに風景やソレイユがぼんやりしてきた気がする。


 『では、レオスさんにプレゼントです!』


 「え? また? この前貰ったダブルビームライフルだっけ? 使い道がまったくないから返したいんだけど……」


 『一方通行ですから返却はできません! カバンに――』


 「え? 何? 何を入れたの?」


 声が遠くなり、ソレイユの姿も不鮮明になっていく。ご都合主義的になにを入れたのかは全く聞き取れずに。まあいいや、どうせロクなものじゃないだろうしカバンから出さないのが一番いい。


 「う……?」


 だんだんまどろんできたと思った瞬間、息が苦しくなってきた。う、苦しい……た、助け……


 意識が朦朧とし、白い世界は視界から消えた――





 ◆ ◇ ◆





 「むふー! むふー!」


 なんか真っ暗だ!?


 目を開けると視界に何も入らず真っ暗なため焦る僕。息苦しいのでもがくと手は動かせることに気付き顔を触ると、どうやら布みたいなものがかぶせられているらしい。布を掴んで顔から引き剥がすとようやく視界が開けた。


 「ぷはー!? なんなんだ!」


 体を動かそうとすると重さを感じたので、そっと周囲を見渡すと、


 胴体:エリィ

 

 左足:ベルゼラ


 いつもより一人多かった。でもこの二人は胴体と左足……では顔はと思い上を向くと……


 「すぴー」


 まさか……そんな……


 僕が枕だと思っていたのは冥王のふとももで、覆いかぶさっていたのは……彼女のスカートだった。体勢的に僕に膝枕をしようとしてそのまま眠ってしまったのだと推測される。そういえば冥王ってアンデッドなのかな? 肌はひんやりしているけど……


 コンコン――


 「レオス、三人こっちにきてな……あ」


 「あ」


 ふとももをさすっている僕と目が合い固まるルビア。


 「すぐに新しい女に手を出す……姐さん、あれは悪ですぜ」


 このあと僕がどうなったかは想像にお任せします……

明日は遅く更新になるか休むかも……


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『ソレイユばかりずるい!』


いや、お前はメインじゃないし……


『じゃあメインにしなさいよ!』


無茶言うな!?

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