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その104 ひたすら圧倒的な力



 「”鋼牙”!」


 パキィン!


 「くっ……あの防御魔法……!」


 ルビアが渾身の力で技を放つが、レオスの張ったフルシールドのせいで近づくことができなかった。諦めずに次々と技を繰り出していくが、レオスは涼しい顔をしてアスモデウスの首を締め上げ続ける。


 「あ、ねさ、ん……は、や、く……」


 「ごめんバス子、どうにもならないかも。でも大丈夫、骨は拾ってあげるわ」


 「ぞんなぁ……!?」


 「結構しぶといね。じわじわ苦しむ様に殺そうと思っていたけど魔法の方が早いかな」


 そういってスッと空いていた左手をアスモデウスの顔に近づける。泡を吹きながらアスモデウスはこの後起こるであろうことを予感し青ざめた。


 「エリィ! エリィ起きて! このままじゃレオスさんがバス子を殺してしまうわ!」


 「う、ううん……」


 ベルゼラも焦ってエリィを目覚めさせようと奮闘。レオスの魔法が放たれるかと思われたその時だった。


 <でぇい!>


 ガツン!


 「う!」


 炎の精霊チェイシャが巨大化し、レオスのフルシールドへ思い切り体当たりを仕掛けた。フルシールドごとぐらついたレオスはアスモデウスを取り落とした。


 <今じゃ! ”フレイムウィップ” ルビア確保ぉぉ!>


 「分かったわ! ええい!」


 チェイシャは尻尾を燃え上がらせてレオスを巻き、ルビアはレオスの足を引っ張って転ばせた。一瞬怯むレオスだったがすぐに態勢を立て直すべくルビアを振り払うため足を動かす。


 「放してよルビア、バス子が悪いんだ。僕はルビアまで殺したくないよ?」


 「あんた本気でバス子を殺す気!」


 「もちろんだよ。悪魔だかなんだかわからないけど、いいかげんにして欲しい。僕は実家へ帰りたいだけなのに。まあいいや、ちょっと痛い目を見てもらうけどちゃんと治してあげるから、《ファイヤーボール》」


 「え?」


 足を押さえていたルビアの眼前にファイヤーボールが現れきょとんとなるルビア。


 <馬鹿者! 避けぬか!>


 「いやあ! ルビアさん!」


 チェイシャが叫ぶがすでに遅し……ルビアの頭が吹き飛ぶとベルゼラが顔を手で覆い、間に合わないとルビアは目を瞑る。だが、ルビアにファイヤーボールが届くことは無かった。


 「……?」


 恐る恐るルビアが目を開けると――


 「あんた、冥王!?」


 「あれ、目が覚めたのかい。はっ!」


 <くっ……>


 「きゃあ!?」


 ルビアをファイアーボールから助けたのは冥王だった! 魔法を吸収する能力で打ち消したのだ。レオスはその隙にチェイシャのフレイムウィップを外し、ズボンの土を払いながらルビア達と対峙をする。


 「ふう。こんなに邪魔されるとは思わなかったね。仕方ない、君達を大人しくさせてからゆっくり殺してあげるよ」


 ニタリと笑うレオスにルビアはぞっとする。


 「どうしたのよ、よくわからないけどバス子がいたずらをしたんでしょ? 殺すだなんてレオスらしくないわ」


 「僕はもとからこういう存在だよ?」


 <いかんな、正気を失っておる……前世の記憶の悪いところが出てきたといったところか>


 「殴って正気に戻せればいいけど拳が届かないんじゃね……冥王、あんたも手伝ってくれるってことでいいの?」


 「ああ。あの防御壁は魔力でできている。私が触れれば霧散する」


 「なるほど。いい案ね。なんで手伝ってくれるのかわからないけど、行くわよ……!」


 脇を固めて前かがみで駆けだすルビア。空中から冥王とチェイシャが前進。さらに、


 「だぁぁぁ! なんかよくわからねぇがあいつを倒せばいいんだな!」


 「止めといた方がいいんじゃないサブナック……ま、何とかしないとここで終わりだし、やるしかないか」


 サブナックとオリアスも別の方向からレオスへと進軍していた。先制は冥王。虚ろな目をレオスに向けたままフルシールドへ触れる。


 「さっきと違う。お前はなんだ」


 パァァァァン!


 「シールドを……。それでも僕に勝てる要素はないけど。<インフェルノブラスト>」


 「無駄。拳聖、やる」


 「承知! ”炎熱双撃破”」


 <わらわもいくぞい>


 インフェルノブラストを吸収し、冥王がレオスに覆いかぶさって視界を塞ぐと、ルビアがチェイシャの力を借りた必殺技を繰り出した。左の脇腹へ赤く燃え盛る拳がヒットしレオスが大きくのけぞる。


 「やるね。邪魔だよ」


 「……!」


 「冥王! でも顔面がガラ空きよ! 吹っ飛びなさい!」


 「やられる!? ……なあんてね」


 レオスの顔面に撃ち込まれるはずだった右拳はレオスに防がれてしまう。


 「受け止めた!? 自信失くすわね!」


 「僕じゃなければ余裕だったろうね。大魔王エスカラーチもこれなら多分倒せたと思うよ」


 「そりゃどうも……! 今よ!」


 レオスが手を放そうとしたが、ルビアは逆にレオスの手を掴み逃がさず、レオスがチラリとルビアの目線を追うと、サブナックとオリアスが斬りかかってくるところだった。

 

 「剛剣乱舞だ!」


 「手加減なしだ、食らいなよ!」


 「フフ……」


 サブナックの大剣がレオスの肩へ食い込みコートが引き裂かれ剣にぬるりと血がつき、オリアスの高速突きで腕と太ももに赤い筋を残していた。


 「よし、防御魔法が無ければ攻撃は通る! 拳聖の女、畳み掛けるぞ」


 「やあああ!」


 ルビアは血を流しながら不敵に笑うレオスに殴りかかる。


 「《ブラックチェイン》」


 「”フレイムウィップ”」


 冥王も黒い鎖でレオスの動きを封じるなどで応戦。チェイシャと共に手足の拘束を成功させていた。


 「ほら、アスモデウスさん、サブナック達が頑張っている間に逃げますよぅ!」

 

 「こ、腰が抜けまして……」


 「世話が焼けるわぁ!?」


 今のうちに、とヴィネがアスモデウスを背負って走り出す。直後、レオスが一息吐く。


 「まあ、こんなものだろうね。気が済んだ? それじゃ、ちょっと大人しくしててね」


 「なに? 冷気が……」


 周囲が冷え込んできたとルビアが感じた瞬間、レオスに攻撃していた者は全員腰まで凍り付いた。


 <わらわが一瞬で……!?>


 「うわあ、俺冷え性なんだけど……!?」


 「動けない」



 「<ダークヒール><アイスコフィン>」


 叫ぶルビア達には構わず回復魔法を使い、アスモデウスたちも凍り付かせるとゆっくり歩き出すレオス。


 「さ、それじゃ覚悟しようかバス子?」


 「いやああああ!? 助けてください、何でもします! あ、さっき拾ったマツタケあげますからどうか!」


 「さよなら、<インフェルノブラスト>」


 アスモデウスの願いもむなしく、レオスが魔法を放つ。カクンと気絶したヴィネに、首を振るアスモデウス。しかし、


 「ダメです!」


 「やあああ!」


 復活したエリィとベルゼラがタックルし、またもアスモデウスは生き延びることができた!


 「殺すのはダメですよレオス君……! ほら、私は無事でしたし、これでおしまいにしましょう?」


 ね? とエリィが地面に倒れたレオスに笑いかけると、レオスの顔が歪み急に激高する。


 「ダメだ……ダメだ! そうやって甘いことをして逃がすから取り返しのつかないことになるんだ……! 徹底的に潰さないと……放してくれ!」


 ビリビリィ!


 「レオス君!」


 「今度は僕を利用するため本当にエリィを殺すかもしれない……! 今、ここで始末を……」


 「レオスさん!」


 「ベルゼラも分かってくれ……ん? なんか下がスースーするね……?」


 立ち上がったレオスがエリィとベルゼラに喋りかけていたが、見れば二人とも顔を手で覆っていた。さらに随分下半身が涼しいと目線を動かすと――


 「うわああああ!? なんてことするのさエリィ、ベルゼラ!?」


 ズボンと下着がレオスの下半身とお別れしていた。正確には二人が引っ張り、そのまま無理やり立ち上がったせいである。旅の間に買い替えていないので老朽化もあったのだろう。


 「でかい」


 「や、やめなさい!」


 キラリと目が光る冥王にルビアが叱り飛ばし、


 「やっぱりサイズは神……」


 と、アスモデウスが呟くとレオスの顔が真っ赤になり……


 「みんなあっち向い……う!?」


 レオスは膝から崩れ落ちシュウシュウと体から煙を出して地面に突っ伏し、意識を失う。やがて煙が収まるとレオスは元の16歳の姿へ戻っていた。

レオス、完全敗北……!


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『丸出し主人公はあんたの別作品から見ても恐らく初』


だなあ……前世の姿……成人しての丸出しはきつい……


『もうなんかプレイよね』


やめてさしあげろ

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