表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
都市伝説事典  作者: ニカイドウ
幽体離脱編
98/137

43話 誰が6人目だ?

 どうも読者のみなさん。俺は御堂タケル。

 理科準備室での戦いの後、理科室に人体模型を戻してから廊下に出た俺は、廊下の向こうにアイツら5人を発見した。

 アイツらってのは、この“一年前の肝試し”のメンバー。

 まずは、肝試し当時の5年の時も、そして6年になってからも、リーダー的存在のタケシ。

 一年後の現在では、幽体離脱道場にて俺の体を見守ってくれているであろう、じゅんぺい。

 これから13階段の都市伝説を語る予定のツトム。

 タケシが紫鏡に襲われた時、なぜか現れ、タケシを助けたカゲル。

 ……ん?紫鏡……?

 この記憶は誰の記憶だ?

 カゲルが付いて来ていたのを俺が知ったのは、確かこの時が初めてのはず。俺の記憶じゃないのは確かだ。

 あの能力が発動した時、ロシアの民芸品(マトリョーシカの事)は学校全体を飲み込むほどに巨大になっていた。

 多分、コイツらの中の誰かの記憶が流れ込んだんだろうな……。

 そして、赤マントを連れた、結城ヤマト。

 俺は、このヤマトが赤坊主と名乗った少年と同一人物だと確信している。姿がぼやけてるんで確認は出来ないけど……。

 ま、確認出来ない事が2人の共通点で、同一人物説を確信へと導いているんだけどな。

 ……とりあえず、俺はまず初めに、赤マントが見えないフリをした……。



「タケルッ!大丈夫だったかい?」


 職員室側からこちらに向かって歩きながら、ヤマトが声をかけて来る。

 俺はボロを出さないようとりあえず、


「おう。」


 とだけ答えた。

 これから俺たちは階段を降りて下駄箱へ向かう。この先、俺たちが元の学校に戻るまでの筋道は、思い出した記憶を繋ぎ合わせて何となくだがわかる。

 まず、タケシ・じゅんぺい・カゲルが、死に顔アルバムの呪いを発症。

 そして、下駄箱でのガイコツ先生とのやり取り。

 からの、夕暮小学校七不思議の7番目を呼び出す儀式。

 最後は名前のない霊能師との戦い。

 俺たちは、結城ヤマトの犠牲のおかげで元の学校に戻ることが出来る……といった感じだ。

 ……でも、大まかなあらすじがわかったとしても、コイツらとどんな会話をしただとかの細かい部分が、全くと言って良いほど思い出せない……。

 やっぱり、6人目から記憶を取り戻さなきゃ完全には思い出せないんだろう。

 俺は、5年の俺ならこうするだろうという考えの下、言葉を選ばなければいけない。

 ま、この体の中には、気絶してるとはいえ、5年の俺も存在するんだ。きっと何とかなるだろう!

 そして、俺達は、渡り廊下前の廊下で合流する。後ろには階段がある。

 上れば13階段がいるなぁ……。

 ……で、こうしてみんなが集まった時、5年の俺ならどう声をかける?

 とりあえず……


「……おい、じゅんぺい!どうよ。取ってきたぜ。人体模型の内臓!」


 こういう時はとりあえずじゅんぺいだ。俺は、ジンタンに変身する人体模型の胃を見せびらかす様に掲げ、じゅんぺいに話を振った。

 この時の俺は、『まぁ、なんとかなるだろう』と高を括っていたんだ……。


 そして、なんとかならない事態に陥ってしまうまで、高は括られる事になる……。





 しばらく歩いてタケル達は、夕暮小学校正面玄関の下駄箱に到着した。

 タケルはその間も何となく場をやり過ごしていた。もちろん五年のタケルとして。

 到着して早々にタケシ、じゅんぺい、カゲルの3人が、死に顔アルバムの呪いで次々と倒れる。

 放っておけば彼らに待つのは死の運命。

 しかしタケルは、彼らが助かる事を知っている。変に動くほうが未来を捻じ曲げかねない。


『心苦しいけど、今は見守るしかないな……。』


 タケルは心で呟いた。

 この過去をタケルの知る未来に繋げるためには、夜の学校で起こった出来事をなるべく変える事なく、一年前のタケルを元の世界に戻さなければならないのだ。

 そして、それと並行してもう一つ、タケルには、やらなければいけない事があった。

 タケル達から結城ヤマトの記憶を奪った、6人目という都市伝説を見つけ、記憶を取り戻す事。


『そして、そいつはこの5人の中にいるんだ……!』


 タケルは、5人の顔を順番に確認する。


 ……一番怪しいのは、途中から現れたカゲル。カゲルが来た事でタケル達は6人になった。つまり、6人目というわけだ。

 しかし、カゲルが現れたのは、タケルと合流する前。その考えで言うとタケルが6人目になるのかも知れないという事は気にしないでおこう……。

 ただ、カゲルは死に顔アルバムの呪いを受けている。6人目だということを隠すためだったとしても、死ぬ可能性もある呪いをわざわざ受けるだろうか……?

 タケルは、カゲル、タケシ、じゅんぺいの苦しそうな顔を見つめる。


「コイツらは無いか……。」


 なら、呪いを受けていないツトムかヤマトが怪しいのだろうか?

 しかし、ヤマトはこの後、自らを犠牲にタケル達を助けてくれる。そんな奴が6人目とは考えにくい。

 という事は……。


 そうこう考えているうちにも、事態は動いている。

 ツトムが玄関のガラス戸を開けに行ったようだ。しかし、6つあるガラス戸は1つとしてピクリとも動かず……。


 ハハハハハ……


 不気味な笑い声。そして、玄関の全てのガラス戸が1つの液晶画面のようになって、大きな骸骨の顔を映し出す。

 どことなく桜田先生を思わせる骨格。それは、死に顔アルバムが職員室でヤマト達に見せた幻。通称ガイコツ先生の顔だった。


「う、うわぁっ!」


 驚いて尻もちをつくツトム。


「ガイコツ先生……。」


 タケルは、無意識にそう呟いていた。


「そうだよ。私だよ。」


 ガイコツ先生はそう言ってニヤリと笑う。

 ツトムは、尻もちのままの体勢で器用に手足を動かして後退し、下駄箱のタケル達の所に帰って来る。


「び、ビックリして死ぬ所だった……。」


 そう言うツトムを見て、タケルは違和感を覚える。


『……ツトムって率先して何かをやる奴じゃないよな。ビビりだし……。いつもと違う事をするって事はやっぱりツトムが……?』


 タケルはツトムを怪しむ。そしてその後、急に何かに気づいたように声を上げる。


「……え!?」


 混乱したように頭を抱えるタケル。


「あれ?ガラス戸を開けに行ったのって、俺……じゃなかったっけ!?」


 それは、急に起こった記憶の回帰だった。しかも、そのタケルの姿は見られている。

 その場にいる全員……呪いを受けた3人も、ガイコツ先生も含めた全員が、タケルを怪訝そうな目で見つめている。


「あ、いや……ごめん。何でもない……。」


 それに気付いたタケルは、恥ずかしそうに下を向いた。が、下を向いたその表情は真剣そのものだった。


『……俺の一年前の記憶は曖昧で、それが本当に正しい記憶なのかはわからない。けど、今戻った記憶の中でガラス戸に向かったのは俺だった……。何の目的でツトムが俺の代わりをしたのかはわからねー。けど、これが何かの計画だったとしたら……?もしそうなら、ツトムが6人目の可能は高くなるよな……。』


 怪しめば怪しむ程、ツトムが6人目のような気がしてくる……。


「な、何なのこれ……?」


 ツトムがガイコツ先生にビビって、か細い声を出す。タケルには、それもわざとらしく感じる。


「大丈夫。これは幻だよ。」


 ヤマトは、傍に浮かぶ赤マントの助言を受けて、ツトムに、そして皆に聞こえるように言った。

 タケルは思う。


『ここからガイコツ先生の語りが始まる……。』


 タケルは、ガイコツ先生がただ恐怖をあおるために現れた事を知っている。もちろんヤツがこれから話す内容も。

 その内容とは、ここが夜の学校という異世界だと言う事。そして、学校を出れば呪いは解けるが、この世界には学校の外は存在しないため、外に出るのは不可能だという事。


『落ち着け俺。ガイコツ先生の話は聞かなくても知ってる。だから、今のうちにツトムが6人目かどうか判断するんだ。ガイコツ先生の話が終わる前に……。』


 タケルは思考を巡らす。そしてガイコツ先生は、タケルの記憶に大体沿った内容を語っていく……。


『はっ!そうだ!ツトムは出席番号6番だ!!それに……確か、夕暮霊園で6枚目の帽子を持って帰って来たのもツトムだ!』


 タケルは確信し、それを言葉にする。


「ツトムが、6人目だ……!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ