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都市伝説事典  作者: ニカイドウ
幽体離脱編
81/137

26話 再びの……

ちゃんと25話から続いてますので、安心してお読み下さい。

 闇、闇、闇……。

 目を凝らしても何も見えない真っ暗闇。そこにタケルは佇んでいた。本日2度目になる真っ暗闇……。


「……なんだよタケル。さっき送り出したばっかりなのに、また来たの?」


 変声期前の少年のような中性的な声が、少し冷ややかに言った。


『ご、ごめん……。』


 タケルは心の中で申し訳なさそうに呟いた……。

 次は上手くやろうと思っていた矢先だった。順調な滑り出しのはずだったのに……。


『いや、花子にはちゃんと聞いたんだぜ!花子の作戦って奴をさ……。』


 タケルは言い訳する。


「で?今度は何をやらかしたのさ?」


 中性的な声からの質問で、タケルの回想に入る……。



「……で、花子の作戦ってなんだよ?」


 タケルは、ホルマリン漬けの殺人鬼に聞かれないよう小声で言った。


「え?作戦?」


 いきなりの急な展開に、花子は気持ちが付いていかない。とりあえず深く深呼吸。


「ふぅ……作戦。そう。作戦ね。でも驚いたわ。タケルの事だから、私の話なんか聞かずに無理矢理にでもマトリョーシカを発動させようとするんじゃないかと思ってた。」


「は、はは……。」


 タケルは花子の言葉に愛想笑いを浮かべながら、


『実はやっちまった後なんだけどな……。』


 と心で泣いた。


「……っと、作戦だったわね。」


 そう言って花子の説明が始まる。


「実はね、タケルの持っている鏡のキーホルダーにスペアの鏡の力を移しておいたのよ。タケルが気絶していた間にね。それを持ってあなたの世界の破壊された女子トイレへ行けば、そのキーホルダーが花子の鏡を復活させてくれるはずよ。」


「で、花子の鏡を復活させてどうすんだよ?」


 タケルは感が鈍い……。


「花子の鏡が復活すれば、私は向こうの世界に戻る。こっちにの世界に移動させられた時同様に強制的に……ね。つまり、それまで耐えられれば、ホルマリン漬けの殺人鬼の手から逃れられるって訳。」


「なるほど!」


 タケルは納得する。


「遅いな!まだか?」


 ホルマリン漬けの殺人鬼の急かす声が聞こえる。


「すいませんっ!話し合いじゃ決まらないんでジャンケンにします!」


 タケルは適当に返した。そして、


「わかった!元の世界に戻って鏡のキーホルダーを、破壊された女子トイレに持ってけば良いんだよな!!」


 と花子に言うと……



『……そして、俺は飛んだんだよ。元の世界に。だってほら、俺、幽体離脱中で念じるだけでどこにでも行けるわけだし……。』


 再び闇、闇、闇……の中。タケルの心の声。


『そしたら……』


「そしたら?」


『…………消えた。指先からこうスーッと。何だろうアレ?……タイムスリップもので良くあるようなさ、過去を変えたら仲間が目の前で消えちゃいました……みたいな。正にあんな感じ……。』


 そう言ったタケルに中性的な声は、


「……正に、その通りだと思うよ。」


 と同情と呆れを込めて言った。


『え?どういう事だ?』


「……ホルマリン漬けの殺人鬼は、君に何かされたって言って無かった?」


『ん?』


 タケルは考え込む。


『確か……一年前、俺のせいで復活はお預けになったとか何とか……。』


「そう。それだよ!」


『でも、俺はあの時気絶してて……』


「……何も出来なかった。だろ?」


『あ、ああ。』


 タケルには、この声の言わんとしている事が分からない。


「……タケルは勘違いしてるんだよ。確かに一年前のタケルには何も出来なかった。気絶してたからね。でも一年前、ホルマリン漬けの殺人鬼の復活を阻止したのは紛れもなく君だよ、タケル。幽体離脱して過去に飛んだ、今ここにいる君だったんだよ!」


『ええーーっ!!』


 驚くタケル。声は更に話を続ける。


「一年前の気絶した君は、君が助けなければホルマリン漬けの殺人鬼に食われて彼の自然治癒力にされるだろうね。つまり君はその時点で死んだ事になる。そうなれば一年後の君は存在しない。消えてしまったのはそういう訳さ。」


 タケルが消えたのは、正にタイムスリップものにありがちな理由に他ならなかった。



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