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都市伝説事典  作者: ニカイドウ
幽体離脱編
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19話 マトリョーシカのよう

 タケル達はヤマトを追って、さらに闇の深い女子トイレの中へと入っていく……。


 中に入るとそこはタケルの世界の女子トイレと何ら変わりはない。

 ま、向こうでは既に動く人体模型の暴走に巻き込まれ、そこは瓦礫と化しているのだが……。

 まず入り口近くには手洗い場。それより奥には個室が6つ……あるはずだ。

 しかし明かりもなく闇が深過ぎて、タケルの目には良く見えない。


「目が慣れるまで見えねーな。でも覚えてるぜ。確かこの奥には個室が6つ。その6つの扉のうち5つは開いていて、左から3番目の扉だけが閉まってんだよな。俺はその扉の前で花子さんを呼び出す儀式をしたんだ……。」


 タケルは花子さんを呼び出した時を思い起こしていた。

 タケルが物思いにふける時、キーホルダーの中の花子はヤマトの様子がおかしい事に気付いた。

 ヤマトの目は見開かれているが、焦点があっていない。


「まさか、また無意識のテレパシー?」


 花子は不安を覚え、タケルを止めようと声をかける。


「タケルっ!その力を止めてっ!!」


「え?」


 キョトンとして花子を見るタケル。


「だから、またヤマトに力を使ってるんだって!」


 花子が叫ぶ。


「待ってくれよ。俺、何もしてねーって。それよりさ……」


 タケルは花子の言葉に耳を貸す事なく、自分の話を始めてしまう。


「逆なんだよな……。」


「え?逆?」


 闇に目が慣れて来たタケルは、その先にある6つの扉を見つめていた。

 タケルの言葉通り。実際の扉は、タケルの記憶と真逆だった。

 6つある扉のうち、左から3番目の扉だけ…………、開いていた。後の5つは閉まっている。


「俺の時と違う……?まさか、出て来るのって、花……」


 タケルの言葉に被さるように、ヤマトが口を開く。


「花子さん……、じゃないのか…………?」


「!!!!」


 花子は驚く。


「こ、これは、タケルとヤマトがシンクロしてる!?一体全体何なのよ、タケルのこの力はっ!もうテレパシーなんて生易しい能力じゃないわっ!!」


 そう言った直後、花子の意識にノイズが走る。


「今のは……、タケルの意識?」


 花子の脳裏に送られて来たのはイメージ。タケルから溢れ出した何かが一回り大きなタケルの輪郭を形作っていく。更にその輪郭が、二回り三回りと次々と連なっていく。例えるならマトリョーシカのよう。今までのタケルの魂が一番小さなマトリョーシカだとすると、それに次々と透明で大きなマトリョーシカが被さっていくような感じ。そして、マトリョーシカは既に普通の大きさではない。この旧校舎全体を飲み込み、さらに巨大になりつつあった。

 花子はそれを見て理解する。


「……タケルはヤマトにテレパシーを送っていたんじゃなかったんだわ。タケルは何もしていなかった。これは能力であって能力とは呼べないような力。タケルは幽体離脱をした事で肉体から解放され、魂が肉体を超えた形で成長し始めている。今、私達は巨大に成長したタケルの魂の中にいる。タケルの意識が流れ込んできたとしても、何らおかしくない状況だわ。私はあまり影響を受けていないけど、きっとヤマトはタケルの魂とシンクロし易い魂を持っているのね。ヤマトは今、タケルの意識に飲み込まれつつある!急がないと危ないわ!ヤマトも……タケルもね!」


 花子はタケルに話しかける。


「タケル!落ち着いて聞いて!このままではヤマトの意識が消えてしまうっ!それに、あなただって危ないのよ!これ以上魂が肉体の形を超えて成長してしまえば、あなたの頭頂にある肉体と魂を繋ぐ糸が切れて二度と肉体には戻れなくなるわっ!!」


 しかし、そこにいるタケルは反応がない。外側のマトリョーシカのほうに意識が移ってしまっているのかもしれない。それならば、花子の存在なんてアリのようなものだ。


「とにかく、タケルの意識をこっちに向けないと!」


 しかし、花子の声はタケルには届かない。

 唯一、タケルの魂の中心となるマトリョーシカが花子と繋がる鏡のキーホルダーを握っている事が救いとなるか?


「……ここには、この鏡のキーホルダーの元となった鏡と対になる鏡が残ってる。何とか合わせ鏡にする事が出来れば、鏡同士が力を増幅し合って私をそっちに導く力になるかもしれない!」


 花子は鏡の位置を確認する。対になる鏡は手洗い場の鏡だ。ここから合わせ鏡にするには距離もそうだが、角度が悪い。

 しかし、ヤマトもタケルも限界は近いだろう。一刻を争う事態だ。


「……やるしかないわね!」


 花子は念じる。


「少しで良い!動け!!」


 すると、鏡のキーホルダーはタケルの手の中で少し角度を変える。


「よし!鏡が見えたわっ!!後は一か八かよっ!!」


 鏡のキーホルダーから発された光のようなものが真っ直ぐ走り、手洗い場の鏡に当たる。光は鏡に反射してキーホルダーへと戻っていく。それが光の速度で何度も何度も繰り返された。

 繰り返される度に手洗い場の鏡の輝きがどんどん増していき、遂に……!!



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