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都市伝説事典  作者: ニカイドウ
動く人体模型編
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7話 桜田先生

動く人体模型から再度繰り出される剛腕パンチ。

タケルの目にはバスケットボールほどの大きさに感じられる。


「うわーっ!!」


タケルは反射的に目を閉じた。

その時、渡り廊下の方から声がする。


「おーいっ!大丈夫か、御堂ーっ!」


「…誰か来たみたいだな。」


小さな人体模型が、無責任に言った。

カツカツと足音が近づいて来る。


「おっ!そこにいたな御堂。大丈夫か?」


この声は誰だ?それに、人体模型のパンチも、もう届いても良い頃なのに…?

タケルは目を開ける。

動く人体模型は、なぜかその拳を戻し、数歩後退りして教室内に入っていた。

声のした方に視線を向ける。そこに立っていたのは…


「さ、桜田先生っ!」


タケルは叫ぶ。それは、校門前で出会ったタケルの担任の桜田先生だった。

桜田先生は、動く人体模型に気づいていないのか、タケルに近寄って来る。


「こんな所に、死にに来たのかねぇ?あの先生…。」


小さな人体模型は笑っている。


「あぶないっ!来るなっ!!」


タケルは、先生を守るために叫ぶ。


「なに言ってんだ!心配でついてきたんだろうがっ!」


しかし、桜田先生は、さらに近寄って来る。

タケルは思う。

もしかして、先生には動く人体模型が見えてないのか…?

しかし、そうじゃなかった。桜田先生とアイツの目が合う…。


「……………えーーーーっ!!なんじゃこらぁっ!!」


桜田先生の叫び声が校舎内に響く。彼は今、ようやく動く人体模型の存在に気づいたのだった。彼の足は、恐怖で力を失い、廊下にへたり込む。が、教師という立場が彼を奮い立たせる。彼は、這いずるようにタケルと人体模型の間に入り込み、タケルを庇おうとする。


「バ、バケモノめっ!俺の生徒をど、ど、どうするつもりだ…!」


「やめろよ先生っ!」


タケルも先生を庇おうとする。


「…ググ。」


動く人体模型の口から漏れる。


「ん?」


タケルは、動く人体模型の様子がおかしいことに気づく。


「…ググ…サクラダ…?」


動く人体模型模型はそう言い残すと、窓を破って外へ飛び出した。

タケルは後を追い、窓から下を眺める。人体模型が走り去ろうとしていた。


「アイツを外に出しても大丈夫かぁ?大変な事になるぜ。」


小さな人体模型が言った。


「追おう!」


タケルはそう言って走り出す。小さな人体模型はタケルの肩に飛び乗る。


「ま、待ってくれ!御堂!」


桜田先生がタケルを呼び止める。


「なんだよ先生!急がないと町が大変なことになるんだ!!」


「…俺も連れて行ってくれ。あのバケモノは、もしかしたら、俺の知っている人かもしれないんだ。」


「えっ?」


驚くタケル。


「急げ!人間っ!!」


そう言ってタケルの耳を引っ張る小さな人体模型。


「いてて!と、とりあえず行こうっ!」


タケルたちは走り出した。



タケルたちは、動く人体模型の飛び降りた窓の下に到着する。


「クッソ!見つからねー!どこ行ったんだ、動く人体模型は…?」


辺りをキョロキョロと見渡しながらタケルは言った。


「校内に負のエネルギーが充満しすぎてアイツの位置が正確にはわからねぇ…。けど、まだ校内にいるのは確かだぜ…。」


小さな人体模型も、何か特殊な方法で動く人体模型を探しているようだ。


「…あのバケモノが俺の知っている人なら、もしかしたら体育館かもしれない!」


桜田先生が言う。


「よしっ!行ってみよう!」


タケルたちは体育館へと向かった。



ここは体育館。

動く人体模型が、一人その中央で舞台のほうを向いてたたずんでいる…。


「……。」


ダダダッ!


そこにタケルたちが駆け込んで来る。


「ここにいやがったか!動く人体模型っ!!」


タケルが叫ぶ。動く人体模型が振り向く。…が、その場からは動かない。

タケルは、動く人体模型の方に向かって一歩踏み出す。


「待ってくれ御堂。」


人体模型に近づこうとしたタケルを桜田先生が制する。


「俺に任せてくれ!」


桜田先生はそう言うと、人体模型の方に歩いて行く…。


「危ないぜ!先生っ!」


「…大丈夫。」


桜田先生はさらに歩を進め、動く人体模型の前に止まる。


「あの旧校舎3階の教室、懐かしいよなぁ。あそこは、俺たちの…、6年1組の教室だった…。」


彼は、動く人体模型を見つめてそう言った。


「…オマエ…、サ…クラダ…カ?」


動く人体模型が声を発する。


「え?ど、どういうことだ?」


タケルは小さな人体模型に問いかける。小さな人体模型はめんどくさそうに説明する。


「だぁから、さっきワシが言っただろう?あれは動く人体模型じゃあないと…。ワシは、あの人体模型の胃に宿ったツクモガミ。言わばワシこそが動く人体模型の本体よ。もしくは心と言ったほうがよいか…。お前が人体模型から、心であるワシを抜きとったことで、ワシの体は空となり、そこに入りこんだのが、吉川の霊というわけだ…。」


「その…、吉川って誰だ?」


「ああ、十数年前にこの夕暮小学校にいた先生だな。良く理科準備室に布団を持ち込んで泊まっておったから、ワシも良く覚えとるぞ。なんかのまじないでワシが髪の毛だらけになった時も、一晩かけて綺麗にしてくれたなぁ。…そうか。あの桜田とかいう先生、あの時の児童か…。」


「あの時?」


「吉川が初めて6年の担任になった時に、ヤツを慕って金魚のフンのように後ろを付いてまわってた児童がおってな。髪の毛事件の時も毛取りを手伝ってくれとった。その児童がおそらくお前の担任の桜田なんだろう。」


「へー。」


「で、あの事件が起こる…。」


小さな人体模型は、言いにくそうに言った。


「…あの事件って、まさかっ!」


タケルは思い出す。誰かがはなしていた動く人体模型の話を!


「おまじないをした子供をさらって、口に髪の毛を詰め込むってやつか!!お前、やっぱり悪い都市伝説だったんだな!」


「違う違うっ!それはただの噂だ!ワシはそんな事はしてないっ!」


「じゃあ事件って何だよ?」


「ある日、吉川は死んだのよ。ナイフを持った暴漢に襲われてな…。」


それは、桜田先生たちの卒業式の1週間前の事だったという…。

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