13話 全ては計画だった
連日投稿13日目です。
「えっ?なんだコレ?」
まさにミステリーだ。今、タケルは天井付近に浮かんでいる。なのに、タケルの眼下には床に寝そべるタケルの姿。そしてその両脇には、彼を揺さぶる珍さんと界二郎の姿が……。
「御堂タケル!大丈夫アル?」
「おいっ!しっかりしろ御堂タケルっ!
そしてじゅんぺいも台の上から叫ぶ。
「タケルーーーーっ!!」
タケルは何だか他人事のような感覚で見下ろしている。
「あの台、上から見るとかなりデカイな。なんかマジックの大掛かりな仕掛けみたいだぜ……。」
タケルは呟く。珍さんの耳がピクリと動いた。
「なぁ、誰かっ!早く!早くここから出してくれよっ!!」
じゅんぺいがわめき散らしている。
「ん?ここから出す……?」
タケルは疑問を口にする。が、その言葉は誰にも聞こえていないらしい。事態は天井付近のタケルを置きざりにして進んでいく……。
「待って下さい!今出しますわっ!」
蛇子はそう言って、じゅんぺいの乗る台に駆け寄る。台に近づいた蛇子は何かをパチンパチンと外していく……。
「タケルっ!」
台から抜け出したじゅんぺいは名前を叫び、倒れているほうのタケルに駆け寄った。それも自分の足で。彼には、両手両足ともに1つとて欠ける事なく揃っていた。
奇しくもタケルの先程の見解は正しかったようだ。
「え?じゅんぺい、ちゃんと手足あんじゃん!良かったー。」
上のほうのタケルは嬉しそうに言った。すると珍さんの耳が再び動いた。
「……でも、この状況ってまさか!俺、死んだのか?」
急に不安になるタケル。すると、珍さんが慌てたように叫ぶ。
「た、たたた大変アルッ!御堂タケルが息、してナいネ!誰か急いデ人工呼吸ヨ!!」
すると、素早く立候補したのは蛇子だった。
「私がしますわっ!みなさんどいて下さい!」
「良かったー。蛇子さんならキスされても万々歳だ!」
少し浮かれるタケル。自分の危機的状況にも関わらず、まだどこか他人事のタケル。
しかし、珍さんは蛇子を制する。
「駄目ネ。こノ場合、女性ノ人工呼吸ハ御堂タケルの命ニ関わルヨ!彼に触レて良いのハ男性のみネ!!」
どういう理由でそうなるのかはわからない。しかし、珍さんは真顔だ。嘘をついているようには見えない。
「じゃあ俺がやるよ!俺の友達だからっ!!」
じゅんぺいが言う。
「俺は先日、救急の講習を受けたばかりなんだ。俺がやるよ!原因は俺が脅かし過ぎたからかも知れないしな。」
界二郎はじゅんぺいを止め、自分が前に出る。
「それを言うなら、タケルは俺の達磨を見てこうなったんだ!やっぱり俺がやるよっ!」
次はじゅんぺいが前に出る。
「俺がっ!」「俺がっ!」
「俺がっ!」「俺がっ!」
じゅんぺいと界か二郎の「俺が!」の大合唱が始まる。
空中のタケルは眉をひそめる。
「えーっ!蛇子さんじゃ駄目なのかよ?死んでも良いから蛇子さんに人工呼吸してもらいてーっ!!じゅんぺいも界二郎もどっちも嫌だよ……。」
タケルが不満を漏らしたまさにその直後。
「やめるネっ!!!!」
珍さんの怒声が部屋に響き渡る。そして、静かになった所を見計らって珍さんは再び口を開いた。
「御堂タケルがこンな状況ノ時ニ何言イ合ってルヨ!……ここハ私ガ人工呼吸すルアルっ!」
「えーーーーーーーーーーーーっ!」
タケルは叫んだ。それは並大抵ではない嫌さを含んでいた。……すると。
「えーーーーーーーーーーーーっ!じゃナイアルゥ!!」
タケルと同じ尺で語尾を伸ばし即座にツッコむ珍さん。
「え?まさか、今のって俺へのツッコみ?……珍さん、俺の声が聞こえてる?」
タケルは珍さんの顔色を伺う。珍さんは、しまったという顔で固まっている。
「…………。」
暫しの沈黙。そして。
「ゲヘゲヘゲヘへ……。」
突然奇妙な笑い声を発する珍さん。
そして、何かを探すようにキョロキョロと辺りを見回しながら話す。
「うン。御堂タケル、君の声ハ聞こえテたアルよー。私は幽体離脱ノ第一人者アルからネ。幽体離脱中の魂ノ声ヲ聞く事出来るノヨロシ。でモ姿は見えナイノ……。」
珍さんは悲しげな表情で目の下に手を当て、子供の泣き真似のようなポーズを取る。
珍さんのその一連の会話と動作を見た界二郎、ウワバミ蛇子、狭山じゅんぺいの3人は驚きの表情を浮かべる。じゅんぺいが口を開く。
「え?珍さん、もしかしてタケルと話してる?」
「それじゃあ!」「成功したのですわねっ!!」
と界 二郎と蛇子が続ける。
「成功……した?」
タケルは不思議そうに言った。
「そウ!成功したアル!」
珍さんはタケルのいる方向とは全く違うほうを向いてタケルに言った。それは、タケル以外への解答にもなっていた。
「こノ地下カジノも指狩リジャンケンも火事モ全テが幽体離脱道場ノ特別レッスンだっタネ。
もちロン、もウわかっテルだろウけド、狭山じゅんぺいノ達磨姿も嘘!あレハ大掛かりナ道具使っタマジックネ!!どれもこれも御堂タケルヲ幽体離脱させルたメに私が考えタ計画アルヨ。そしテ、君ハ見事幽体離脱に成功したアル!」
珍さんは右手の親指を立ててグッドスマイルを見せる。金歯がキラリと輝いた。が、そっちにはタケルはいない。気にせずタケルは疑問を投げかける。
「え!じゃあ界二郎さんの左手は?」
「……界二郎さン、左手の包帯取っテみテくれル?」
「あ、ああ。」
珍さんに言われて、界二郎は左手の包帯を右手でクルクルと巻き取っていく。包帯の下からは、無傷の左手が現れた。
「ね?」
と珍さんは自信満々に言った。
「……じゃあ、あの封筒に入った札束も嘘だったって事だよな。」
タケルはとても落ち込んだ顔をしている。
「そウね。あレは札束の大きサに切っタ漫画雑誌ね。でモ界二郎とウワバミ蛇子ノギャンブルの実力ハ本物ヨ。当初の予定ハ負けタショックデ君ニハ幽体離脱しテモラウハズだっタノコトだかラ。御堂タケル、自信持テ良いアルヨ。彼らニ勝っタ君も狭山じゅんぺいも、かな〜リのギャンブルの腕ナの確かネ。」
「お、おう。」
小学生のギャンブルの腕を褒める大人って…。と思ったが、それは置いといて、タケルにはもう一つ気になる事があった。伝衛門の事だ……。
伝衛門は都市伝説事典にも記入されたはず。
「珍さん、伝衛門はどうなったんだ?確か珍さんにも憑依して……?」
「アア。あれハ嘘ネ。伝衛門ガ嘘といウ訳じゃなイよ。伝衛門は漫画にもナッタ本当二いルこわ〜イ都市伝説ネ。嘘だっタのハ火事。さっきモ言っタでしょ?理性を失ウお香ハ本物だけド用法用量を守っテ使えバ幽体離脱しやすくなルだけネ。伝衛門に体を乗っ取られル心配はナイアルヨ。」
珍さんはそう言っているが、タケルはやっぱり心配になる。
「今の幽体離脱した状態でも大丈夫なのか?俺の体、無防備状態だけど……?」
「大丈夫ヨ。安心しテ。今、御堂タケルの頭の上ニ細い糸ノヨウナもの出てルでショ?それで今も君ノ肉体ト魂ハ繋がってルね。それが切レなイ限りは大丈夫アル。理性を失うお香使い過ぎルとその糸プッツリ切れちゃうネ。そうなルとモウ魂、肉体にハ戻れな〜イのコト。怖いネ……。ま、私ニハ御堂タケルの姿もそノ頭の糸モ見えてナいアルけどネ。」
珍さんは冗談めかしながら言った。タケルにはその話が嘘か本当かわからない。……どっちかと言えば嘘っぽい。が、信じといた方が心の安定は保たれそうだ。とタケルは思った。
「タケルっ!俺の声が聞こえるか?」
耳がつん裂くほどの大声。叫んだのはじゅんぺいだった。
「うっせーな。そんな大声出さなくても聞こえてるよ。普通の音量で話せよな!」
タケルはいつものようにじゅんぺいに言った。が、いつもと違うのはタケルの声がじゅんぺいには届かないということ。
唯一タケルの声が聞こえる珍さんも、何故かボーッと突っ立っている。
「珍さんっ!じゅんぺいに伝えてくれよっ!」
タケルはイライラしながら言った。今、絶対休憩してただろ!と思った。
「あ、あア。わかっタアル!」
珍さんは慌ててじゅんぺいにタケルの言葉を伝える。
「狭山じゅんぺい、御堂タケルがうるサイってイライラしてルアルよ!」
タケルは、イライラしてるのは珍さんにだよ!と思ったが、口には出さなかった。
「イライラって……。ま、聞こえてんなら良いか……。なぁタケル。これは、俺がタケルを幽体離脱させるために、この町の幽体離脱研究の第一人者、珍法蓮さんに頼んで計画してもらったことなんだ。全てはタケルに一年前の出来事を見て来てもらうために。そして、取り戻してもらうために。君に結城ヤマトの思い出をね。」
「結城ヤマト……?」
タケルには誰だかわからない。きっと忘れている一年前の記憶に関係する人物なんだろう。でも、一年前の事を考えても、魂の状態のタケルは頭が痛くなる事はなかった。
しかし目頭が熱い……。
「うわっ!御堂タケルの体が泣いてるぞっ!」
タケルの体に付き添っていた界二郎は驚きながら言った。
タケルは自分を見る。確かに涙を流している。
「何故だ?」
それは親友のために流れる涙。だが、今のタケルには理由はわからない。
「わからナい事考えテも時間ノ無駄ネ!さァ、今の君ハ念じれバ何処にでモ行けルネ。例エどんナに遠くテも、過去でモ未来でモ何処でモアル!」
急に珍さんは妙にハイテンションな声で言った。じゅんぺいが続く。
「タケル!行くんだ!過去へ!一年前の夕暮小学校へ!そして見て来い!!おまえの忘れてしまった記憶を!」
「あ、ああ!」
なんだかわかんねーが、一年前の記憶を取り戻せば、あの名前のない霊能師に対抗する方法が見つかるかも知れない!
そう考えタケルは念じる。
「俺は過去へ行きたい!一年前の夕暮小学校に……!!」
その瞬間、タケルの魂は時空を超えた……。
この後も幽体離脱編は続きますが、区切りがいいので連日投稿は一旦終了させて頂きます。
次回の投稿も是非見てやって下さい。
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