10話 ギャンブルの恐怖
連日投稿10日目です。
「じゃあ、2回戦いこうぜ!蛇子さんっ!!」
タケルは自信に満ちた声で言った。
「あら、さっきは怯えたネズミみたいでしたのに。」
蛇子がタケルに見せたのは可愛い笑顔。しかし糸のように細くなった目から溢れるのは赤い光……。
でも今のタケルは負けていない。
「言ってろ!行くぞっ!」
ぶっきら棒にそう言って掛け声に繋げる。
「最初はグーッ!!」
タケルのグーは、柔らかく握られた余裕のグー。そして、蛇子のグーは意思の篭った決意のグーだった。
「ジャンケンッ!ポンッ!!」
タケルの柔らかいグーは解れてチョキへと姿を変える。
対して蛇子のグーはまるでダイヤモンドの如く、その姿を変える事なく振り下ろされた!
結果、……タケルの負けだ。
「…………。」
声も無くその場に崩れるタケル。右手はチョキのまま固まってしまっている。
「ラッキー!勝ちましたわっ!これでロウソク2本追加ですわね。フフ。」
蛇子は珍さんから指型ロウソクを2本貰い、タケルには指サックが2つ……例の如く投げつけられた。
しかし、失意のタケルには蛇子の言葉も指サックもどうでもいい……。
……何故だ?何故勝てないんだ。
タケルは自問自答を繰り返す。
……今、何本狩られた?チョキが2回だから…………4本だ……。
怖い……。怖いよ母ちゃん。指、なくなっちゃうよ……。
恐怖でおかしくなりそうだ。
いけない!弱気になるなタケル!強気でいくんだよ!指はまだあるんだから!!
無理やり自分を奮い立たせる!……が。
……ダメだ。まだ6本あるなんて考えられない。
……そうだ。グーを出そう。負けても指1本だ。パーなんて5本だぞ。絶対に出せるわけがない……。
「……なんて事、考えてます?」
それは蛇子の声。今、タケルの心の声が溢れていた部分全てが蛇子の口からリピートされた。タケルの心は全て蛇子に読まれていた……。
そしてさらに蛇子の一言。
「パーを出しますわ……。」
「え?」
思いもよらない言葉にタケルは蛇子に目線を向ける。
「私はパーを出すと言ってますの、御堂タケルさん。……だからあなたはグー以外を出しなさい!」
この蛇子からの提案、タケルはどう取れば良いのかわからない。
「……今のあなたの姿勢はギャンブルに対する冒涜。そして、それは私に対する冒涜でもありますわ……。このままそのクソのような考えを続けるというのであれば、私はあなたを蔑み見下すでしょう。一生ね……。」
冷たい……。とても冷たい蛇子の声と視線だ。
しかし、その気持ちはタケルに伝わる。
……そうだ。これは蛇子さんとの勝負なんだ。逃げちゃ駄目だ!
「ごめん蛇子さん!俺、一番リスクの低い負け方ばっかり考えてた。ちゃんと……勝負!!しなきゃ、蛇子さんに失礼だよな。
」
「わかればいいんですわ。」
蛇子は本当に優しい笑顔をタケルに向ける。
「でもよ。次の手は蛇子さんでも他の誰でもなく俺が決めるぜ。もちろんグーも選択肢に入れて……な!俺は、俺の考える最善の手を出す!それでも良いか?」
タケルは蛇子の目を真っ直ぐ見て言った。蛇子はその瞳に確固たる意思を感じてうなずく。
「もちろんよ。」
蛇子はそう言うと目を閉じる。そして再び開いた瞳は真っ赤に輝いていた。唇の両端が上がり、三日月のような狂気の笑みを浮かべる。
「では、3回目の指狩りジャンケンを始めましょうか?」
タケルはゾクリと寒気を感じる。しかし、それも悪くないと思った。
「ああ!行くぜっ!最初はグーッ!!」
タケルの手は恐怖や弱さをそぎ落としスッキリとした、まさに最初のグー!
蛇子の手は全てを破壊するような狂気のグー!
「ジャンケンッ!ポンッ!!」
タケルに迷いはない。その手は形を変える事なく意思を貫くグー。
対して蛇子の手は5匹の蛇を解放し、タケルのグーを破壊せんと襲いかかる!
「んはぁっ!私のパーの勝ちですわっ!ゾクゾクが止まりませんっ!」
蛇子は頬を赤らめ、うっとりとした表情で自らのパーを見つめながら言った。
「まだだっ!俺の最善の手は終わっちゃいねーぜ!!珍さん、邪魔すんなよっ!」
タケルは珍さんを指差しながら叫び、ロウソクを持って来ようとする珍さんをけん制する。
「え?え?ななな……。」
珍さんは驚き、意味不明な事を言う。
そしてタケルは、蛇子に向かって変わった宣言を始める。
「蛇子さん、俺は断言するっ!蛇子さんの次の手はパーだっ!だから俺はパーに勝つためのチョキを出すっ!!」
蛇子は目を大きく見開き、唖然としている。
「あ、あなた何を言っているのかしら?でも……」
再び三日月のような笑み。
「滾りますわぁぁっ!!!!!!」
「4回戦行くぜっ!最初はグーッ!!」
さて、勝負の行方は……!?
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