6話 敵…?味方…?
タケルは校門を入り、まずは新校舎の玄関を目指す。その時…。
ドォーンッ!!
辺りに爆発音が響く。
「な、なんだっ!!」
旧校舎の方だ。タケルは校舎を見上げる。旧校舎3階から煙が上がっている。
「大変だ…!」
タケルは鏡のキーホルダーをポケットから取り出し、そこに向かって叫ぶ。
「おいっ!花子っ!大丈夫か?」
返事がない…。
「おいっ!どうしたんだよ?…ま、まさかっ!?」
「…大丈夫よ…。」
キーホルダーから、か細い声が聞こえる。
「ちょっと、アイツの負のエネルギーに当てられただけ…。アイツ、実体化して私の結界も破壊したわ…。旧校舎3階のトイレごとね。私は間一髪、別のトイレに移動したから無事だったの。」
鏡に花子の姿が映る。少し疲れたような顔をしているが、どうやら怪我もないようだ。
「よかった…。」
タケルは安堵する。
「でも、アイツは既に実体化してしまった。急がないと学校の外まで被害が拡大してしまうわ!」
「花子、アイツ…動く人体模型はどこにいるかわかるか?」
「それがね、まだ旧校舎3階にいるみたいなの…。今は使われていない、渡り廊下から一番近い教室よ。」
「あの教室だ…。」
それは、タケルが、トイレから出た時に人体模型がいた教室だ。タケルは走り出す。
「タケル、大丈夫なの?アイツを止めるための何かはあったの?」
キーホルダーを介して花子が言った。花子は
タケルを心配している。
「ああ。ポケットの中にちゃんとあるぜ!」
タケルは、都市伝説事典を左脇に挟むと、左手に鏡のキーホルダーを持ち、右手でポケットを探る。そして、例のものを取り出すと、花子に見えるようにキーホルダーに向けた。
「これだ!1年前の夏休み、肝試しで人体模型から持ち帰った人体模型の胃だよ!あの人体模型には、ツクモガミって神様が付いてるって誰かに聞いた事があるんだ。きっとその神様が、この胃を盗んだ俺に怒ってんだ!これを返して誠心誠意謝れば、きっと怒りをしずめてくれるはずっ!」
これは希望的観測だ。
どうにかして許してもらいたい…。いや、許してもらえるまで謝るしかない!
「色々ありがとう花子!後は俺に任せて、体を休めてくれ。」
タケルはそう言って、旧校舎3階へと向かう…。
「…頑張れ、タケル…。」
花子はそう言うと目を閉じた…。
「ハァハァ…。」
タケルは旧校舎3階の動く人体模型のいる教室へたどり着く。壁には、あの時アイツが開けた穴があるため、中が良く見える。
アイツは、また窓の外を見ている。
タケルは教室へ足を踏み入れる。
「…あのよ。俺、肝試しの時の事は良く覚えてなくてさ、でも、俺が持ってるって事は俺が盗んだって事で…。」
動く人体模型が振り向く。
「バォォォォォォォォォォ!!」
耳をつん裂く咆哮。
そして、ゆっくりとタケルに向かって歩み寄って来る。威圧感がすごい…。
「こ、これ、返します!本当にすいませんでしたっ!!」
タケルは深々と頭を下げて、人体模型に胃を差し出す。
動く人体模型は、タケルの正面で止まる。そして、その腕が動く…。
ドォッ!
タケルは、石で殴られたくらいの衝撃を受け、廊下まで吹っ飛ばされる。
「うげっ!」
その腕はタケルから胃を取り上げるために動いたのではなく、タケルを殴りつけるために動いたのだった。
「うぅ…。 や、やっぱ許してもらえない感じ…?」
タケルは焦る。まさか、新しい胃があるから古いのはもういらない?でも、そうなら俺はどうすれば良いんだ…?どうすれば許してもらえる?
「考えろタケル…。」
タケルは自分に言い聞かせた。
「…ムダだろ?だって、アイツ、動く人体模型じゃねぇんだから。」
どこかから声が聞こえる。
「え?」
タケルは声の主を探して目をキョロキョロさせる。しかし、自分以外に人は見当たらない。
「どこ見てんだ?ワシだよワシ。」
その声は、タケルの手から聞こえる。その手に強く強く握られた人体模型の胃から…。
それが、手の中でモゾモゾとうごめいた。
「うわっ!」
タケルは慌てて手を開く。手から落ちたそれは、多少バランスを崩しながらも両足で廊下に着地する。
「おいおい!急に離すんじゃねぇ!あぶねぇじゃねーか!」
そう言ったものは、もう胃の姿ではなかった。
手もあり、足もある。それは、人間の形をしていた。
しかし、半分は内臓がむき出しになっている。
10〜15センチくらいの小さな人体模型。
しかも、2,5頭身くらいに可愛くディフォルメされたフィギュアような姿をしている。
「キ、キモかわいい。」
タケルの物欲センサーが働く。
「俺のフィギュアコレクションに加えてー。」
小さな人体模型は呆れ顔を見せる。しかし、それも一瞬の事。
「…そんな事言ってる場合じゃあねえぞ。前を見ろ人間っ!」
小さな人体模型が真剣な表情で叫ぶ。
言われるがままに前を向いたタケル。時すでに遅し…。
動く人体模型はもう、タケルの目と鼻の先まで来ていた…。