14話 都市伝説集合す
良い所に警察官が来てくれた!とタケルは思う。そして、タケルの母ちゃんは、警察官を見るなりすかさず状況を訴える。
「おまわりさんっ!その男、この女の子の父親を語る誘拐犯かもしれませんっ!!調べてくださいっ!!」
警察官は、顔色一つ変えず、
「わかりました……。」
と言った。しかし、男の方を見る事もせず、さらに話を続ける……。
「では、奥さん。この近所で事件があったのですが、何かお気づきになられた事などありませんか……?」
「え?」
話を無視したその言葉に、タケルの母ちゃんだけでなく、その場の全員が面食らう。タケルは、母ちゃんの顔色をうかがう。ふつふつと怒りが込み上げてきているのがわかる。
「あんた、私の話聞いてた?」
タケルの母ちゃんは、トゲトゲしく言った。
「ええ。この方が誘拐犯かも知れないと……。ですから、この周辺で不審者を見ませんでしたか?」
しかし、警察官は淡々と自分の要件だけ話す。今まで警察官に集中していて気づかなかったが、その隣の山崎悟と名乗った男も、この状況に全く動じていない。それどころかニヤついている。タケルは背筋が寒くなる。
「忘れてたか?タケル。」
肩のジンタンが言った。タケルは思う。ジンタンの言った通り忘れてた……。
都市伝説事典が示した都市伝説はもう一つあったんだ。家の外に存在した都市伝説は2つ。それは、真夜中の少女と偽の警察官……。
「やっと気づいたかタケル。」
「……ああ。」
「しかもこの2体、結託して襲ってくるぞ!」
ジンタンとタケルの会話に、モクメが割って入る。
「2体だけじゃないっ!タケル、家の中の都市伝説もこっちに来るよっ!」
すると、家の扉がバタンッと開き、その奥から右手に包丁を持った女が現れる。
「え?押入れ女?ビデオカメラを再生するまでは押入れから出てこないんじゃ?」
タケルは言った。ジンタンが答える。
「普通はな。でも、今のヤツは呪い返しによって暴走してる。強硬手段に出たみたいだ……。」
そして、タケルは気づく。女の左手には、ビデオカメラが握られていて、画面をこちら側に向けている。画面には映像が流れている。タケルも母ちゃんもミクちゃんもモクメも、その映像から目が離せない。
それは、タケルの家の押入れ。その扉がスス……と開き、押入れ女が姿を現わす。
「!!」
「これで映像を見たことになったわけか。……まぁ、見・せ・た!だがな。」
ジンタンがそう言うと、次は2階から何かが飛び降りて来る!
ズザッ!
見事着地したのは、包丁を持った男……。
「あそこは父ちゃんと母ちゃんの部屋っ!あの部屋にはベッドが!!」
タケルは、男の降りてきた窓を見上げて言った。都市伝説事典がパラパラとめくれ、あるページを開く。タケルの言葉が早いか、都市伝説事典のインストールが早いか?
タケルが叫ぶ。
「おまえは、都市伝説・ベッドの下の男っ!!」
ある日、女性の部屋に友人が泊まりに来ました。女性の部屋にはベッドが1つしかないため、自分はベッドで、友人は床に布団を敷いて寝る事になったのですが、友人が急に、
「コンビニに行きたい。」
と言い出しました。
「さっき買ってきたばかりじゃない?」
「それでも行きたいの!」
「でも、飲み物もお菓子も食べ切れないくらい買って来たはずでしょ?」
「お願い!どうしてもコンビニに行きたいのよ!」
「じゃあ、行って来たら?」
「お願い!一緒に行きたいの!今すぐ行きましょう!!」
友人は、こんなにわがままを言うような人じゃありません。それに、その表情は真剣そのものです。
「仕方ないわね……。」
結局、女性が折れて、2人はコンビニに行くために部屋を出ました。
しばらく歩いて、コンビニに着こうかという時、友人は真っ青な顔をして、道路にへたり込んでしまいました。
「どうしたの?」
女性は、心配して声をかけます。すると、友人はこう言ったのでした……。
「あなたのベッドの下でね。包丁を持った男の人が、仰向けになってあなたを刺そうと狙ってたのよ……。」
「……コイツがベッドの下にいたかどうかもわからねーってのに、なんでもありだな呪い返しは……。はは。」
とジンタンが笑う。
「これで4体……。メリーさんは、いったい何体の都市伝説と電話で繋がってたんだろう……?」
モクメは都市伝説達を警戒しながら言った。
「あ、あなた達誰よ?なんでうちから……?」
タケルの母ちゃんは、包丁を持った男女が家の中から現れた事にひどく動揺している。その時……。
ガンッ!
偽の警察官が門を蹴る。
「奥さん。不審者、見たんでしょう?ほら、さっきAマートからの帰りに……。」
「なによ、こんな時にっ!確かに見たわよっ!夏だってのに、全身黒ずくめのフードの男を。」
ウーッ!ピーポーピーポー!
突然のけたたましい複数のサイレンの音。偽の警察官が叫ぶ。
「遂に本物が嗅ぎつけて来たようですね。実は、さっき、殺人事件がありましてね。こうして警察官のフリをして、目撃者を殺しにきました。…………犯人です!」
「奇遇ですね。私もね、連続幼女誘拐殺人事件の犯人なんです。」
隣の山崎悟と名乗った男までが暴露を始める。
「……私達の耳元で、呪いの声がささやくんですよ。ミクという少女を殺せ!!とね。もちろん、周りのあなた達も全員殺しますけど。ヒャハハハハハ……!」
偽の警察官の笑い声が、辺りに響き渡った……。
夏のホラー2019に
盲腸で入院したら何やら大変な事に巻き込まれて最終的に龍馬にバラバラにされる話
ってヤツ投稿してます。
楽しい話なので読んでみて下さい。




