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都市伝説事典  作者: ニカイドウ
動く人体模型編
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4話 キーホルダー

 トイレの中を出口へと向かって進むタケル。


「ちょっと待って!」


 花子が、再びタケルを呼び止める。


「えーっ、今度は何?」


 カッコいい出発を演出したかったタケルは、少し不満げに言った。


「…結界を解かないと外へ出れないわよ。」


 少し申し訳なさそうに花子は言った。


「……そ、そうなの?」


 俺ってカッコ悪い…。

 そんなタケルの姿を見て、花子は吹き出す。緊迫した状況だったが、少し空気が軽くなったような気がした。


「フフッ。それと、コレ。」


 そう言って、花子がタケルに手渡したのは、鏡を加工して作られたキーホルダーだった。


「これは?」


「手洗い場にある鏡、下が欠けているでしょ?その欠けた部分で作ったキーホルダーよ。これを持っていれば、どこにいても鏡を通じて話すことができるわ。」


「おう。サンキュ!」


 タケルは、そう言って、キーホルダーをポケットにしまった。


「動く人体模型がトイレに入ったら、私がすかさず結界を張るわ。タケルは、なんとかあの鏡に手をついて。そうしたら、私の能力でタケルを行きたいトイレに送る!」


 花子の言葉にタケルは頷く。


「よしっ、行くとするか。花子、結界を頼む!」


「ええ。わかったわ!」


 そして、タケルは外へ出た。



「……。」


 タケルは、廊下に出る少し手前で止まる。

 タケルには、2つの選択肢がある。

 ゆっくり顔を出して様子をうかがうか?

 それとも一気に飛び出るか?

 …考えてても仕方ない。タケルは、意を決して一気に飛び出る。


「うぉーっ!………あれ?」


 いない。

 廊下を向こうの方まで見渡すが、動く人体模型の姿はない。

 タケルはゆっくりと廊下を進む。渡り廊下が見えてきた。まさか、新校舎に戻ったのか…?


「!!」


 渡り廊下の手前にある今は使われていない教室のドアが開いている。このドアにはいつも鍵がかかっていたはず…?

 タケルは中を覗き込む。


「……いた。」


 教室の窓際。動く人体模型は、外を眺めている。


「おい。」


 タケルは、少し強めに声をかける。

 動く人体模型は、ゆっくりとこちらを振り向いた。


「バォォォォォォッ!」


 こちらに気づいた人体模型は、空気がしびれるほどの咆哮の後、机や椅子をなぎ倒しながら、タケルめがけて一直線に襲い来る。


「こっちに来いっ!人体模型っ!!」


 タケルはそう言って廊下へと飛び出す。


 ドォン!


 すかさず壁をぶち抜き、廊下へ出る動く人体模型。思ったよりスピードが速い。


「これはやべぇな…。」


 タケルのこめかみを冷や汗がつたう。

 今の衝撃で、人体模型から飛び出た内臓が、スライムのようにうごめきながら本体へと戻っていく。それを待つのも無駄だというように、2、3個のめぼしい内臓を掴むと、体に押し込み、動く人体模型は再びタケルを追い始めた。残りの内臓も後を追う。


「走る以外にねぇーっ!」


 タケルは、走った。廊下の端から端までの約50メートルほどを今までにないほど必死に…。



「花子ーっ!」


 叫び声とともに、トイレの入り口から、タケルが姿を見せる。タケルは、トイレに入ると、勢いあまって前のめりに倒れこむ。


「うぉーっ!」


 そのまま手をつき、一回転して、花子の横をすり抜け、トイレの奥の壁に激突する。


「だ、大丈夫?」


 心配する花子。


「俺より早く結界を!」


 タケルは叫ぶ。動く人体模型は、すでにトイレの中へと入って来ていた。


「わかったわ!」


 花子はそう言って、なにかを念じるように目を閉じた。そして次の瞬間。


「はぁっ!」


 目を開けると同時にそう叫ぶ。


「結界を張ったわ!次はタケルの番よ!」


 花子がそう言ったと同時に、タケルは動く人体模型の方へ走り出す。


「バォォォォ!」


「うぉーっ!」


 タケルは、人体模型の手前で姿勢を低くくし、その股の下をスライディングですり抜ける。

 そして、動く人体模型が振り向くよりも先に、手洗い場の鏡へ右手を伸ばした。

 右手が鏡に触れる。


「触れたっ!」


「いくわよ!」


 花子は能力を使う…。


 シュンッ!


 次の瞬間、タケルは別のトイレの鏡の前へと転送される。

 タケルは、鏡を見る。


 鏡には、タケルが今までいたトイレが映っている。

 花子が叫ぶ。


「ここは任せて!早く行って!」


「…わかった!」


 花子のことは心配だが、今、タケルがやるべきことは…!

 後ろ髪を引かれながらも、タケルはトイレを出る。そこは、下駄箱近くのトイレだった。

 タケルは、上履きのまま、外へ飛び出した…。


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