7話 お母さんになるの
「なぁ、メリーさん。なんでこんな事になってるんだよ?お前にとってミクちゃんは、一番の友達じゃなかったのかよ?」
タケルはメリーさんに話しかける。
「ええ。ミクちゃんは、私の一番の友達よ。」
メリーさんは答える。
「じゃあ、なんで襲ったりしたんだよ!」
「…私、ミクちゃんを襲ってなんかいないわ。私はね、ミクちゃんが大切なのよ。だからね、私がミクちゃんのお母さんになるの…。」
「…え?お母さん?」
タケルは、メリーさんの言葉に異常さを感じる。
「いやいや、ミクちゃんにはちゃんとお母さんがいるだろ?」
「いないわ…。」
「いるだろ?買い物に行ってただけだって!すぐ戻ってくるよ。」
「…戻らないわ。」
「え?」
タケルは、次の言葉にためらう…。
すると、モクメが口を開いた。
「…あなた、少女の母親に何をしたのですか…?」
メリーさんはニヤッと笑う。そして、何かを手にしてこっちに見せる。
「これ、わかる?」
それを見たタケルは、
「それって、メリーさんが使ってた携帯電話だよな?」
と言った。
「そうよ。そして、これはミクちゃんのお母さんの携帯電話…。」
「!!」
メリーさんの言葉に、タケルとモクメは驚く。不吉な何かを感じる…。
「…なるほどな。母親からの電話なら、子供が出てもおかしくないよなぁ。」
タケルの肩のジンタンは、そう言った。妙に納得している。
それが、タケルの部屋でジンタンの言った疑問の答えだったからだ。
「…この携帯電話、どうしたと思う?」
メリーさんはそう言うと、さらに口角を上げ、口を広げて笑った。口の中が血のように赤い…。
「まさか!」
タケルは最悪を考える。
「ふふふ。殺してはいないわよ。でも、時間の問題かしら…。」
殺していないという言葉に、タケルは胸を撫で下ろす。が、安心も出来ない…。
「どういうことです…?」
モクメが聞き返す。
「人形に変えてやったのよ!そして、ゴミ置き場に捨ててやったわ。今朝、あの女が私にしたようにね!そして、私はあの女の恐怖を負のエネルギーに変えて、ミクちゃんのお母さんになるの。あの女よりも優しくてステキなお母さんよ。ふふふ…。」
メリーさんは、嬉しそうに笑う。そして、社交ダンスのようなステップを踏み、踊り出す。
「ラララ ラララ〜♪」
異様に長い手足とカクカクとした操り人形のような動きが、彼女の不気味さを更に高める。
「…こいつ、狂ってやがる…。」
踊るメリーさんを見てタケルは言った。
「…ああ。面白いなぁ!」
ジンタンは楽しそうだ。
モクメが口を開く。
「タケル、人形にされた少女の母親は、すでに焼却場に着いているかもしれません。燃やされてしまっては、もう…。」
「いや、待てよ…。」
タケルは、人面犬がゴミ箱を漁っていたのを思い出す。あそこにゴミがあったって事は、あの時はまだ、ここら一帯にはゴミ収集車は来てなかった。
「…前に母ちゃんが言ってた。たまにゴミ収集車が全然来ない日があるんだって!もしかしたらそれが今日かもしれないっ!」
「もしそうなら、メリーさんが少女の母親を捨てた場所がわかれば、取り戻す事ができるかもしれませんね。」
希望が見えた。しかし…。
「でも、メリーさんをここに置いて行くわけにもいかない…。」
ここでまた、タケルのもう誰も見捨てないという気持ちがアダとなる。
ネズミのような生き物達のことを考えると、メリーさんを放っておくわけにはいかない。
「ジンタン、吉川先生の時みたいに何とかならないか?」
タケルはジンタンに助けを求める。
「ワシはやだぞ。負のエネルギーを喰らえば、また眠りに落ちるだろうが!ワシはまだ漫画を読み終えとらんのだ!それに、負のエネルギーを喰らった所で、ヤツの気持ちは変わらんだろう。これは暴走ではなく、ヤツの意思で行っている事なんだからな。ヤツが改心せん限りは、再び負のエネルギーを集めて同じことをするのがオチよ…。」
ジンタンは言った。
タケルはその言葉が真っ当すぎて何も言い返せない。
「…ま、ワシは、何故ヤツがあのような気持ちになったのかというのが気になるがな…。
あの女…か?」
「あの女?ミクちゃんの母ちゃんのことか?」
「違うわい…。お前から聞いた話の中の女よ。ヤツが焼却場で会ったというな…。」
「あっ!メリーさんに、いらないから捨てられたって言った女か!一体誰だったんだろうな…?」
「確か、吉川を狂わせたのも女だったよな?…もしかすると、今回も同じ女か…?」
ジンタンは、謎解きを楽しむように言った。
その話を聞き、モクメは口を開く。
「…吉川?もしかして、夕暮小学校ガス爆発事件は、都市伝説・吉川先生が関わっていたのですか?」
「…ああ。まあな。」
タケルは、微妙な返事になる。
都市伝説なんてとバカにされるんじゃないか?
という気持ちと、今の状況でバカにされるも何もないだろうという気持ちがせめぎ合った結果だった。
モクメは、言葉を続ける。
「それと、その女というのが、私も気になりますね…。名前のない女でなければ良いのですが…。」
「あっ!それ、吉川先生も言ってたような…。」
タケルは、吉川先生の最後の言葉を思い出す。
−名前のないあの女には気をつけろ−
まさか、メリーさんもこの女とつながっているのだろうか…?
動く人体模型編全10話サブタイトル付けて読みやすくリニューアルしました!
時間がありましたら少しでも目を通して頂きたいです!
1話5分程度あれば読んで頂ける仕様となっております。




