17話 あなたが選びなさい
ヤマトは、驚きが隠せない。
「赤マント…、君が7番目なのかい?」
ヤマトは聞いた。だが、赤マントは答えない。
「え?ヤマトの知り合い?」
じゅんぺいは、そう言うと赤マントへ近づく…。
「ども!オレ、ヤマトの友達の狭山じゅんぺい。よろしくぅ!!」
そう言って右手を差し出す。と、そのまま前のめりに倒れていく…。赤マントは、最小限の動きでじゅんぺいをかわし、じゅんぺいはドンッと床に倒れた…。
「じゅんぺい君っ!!」
ヤマトは驚く。
「…赤マント、じゅんぺい君に何をした?」
ヤマトは叫ぶ。赤マントが口を開く。
「安心しなさい。ほら。よく見て…。」
じゅんぺいを見る。すると、髪の色が元に戻っていく…。
「記憶を消しただけよ…。結城ヤマト、あなた以外の人間の…ね。」
ヤマトは辺りを見る。と、ヤマトの目には、自分以外の全員が床に倒れている光景が映る。そして、じゅんぺいだけではなく、タケシとカゲルの髪も元の色を取り戻していた…。
ヤマトは再び赤マントに顔を向ける。ヤマトは思う。さっきまでの赤マントとは様子が違う…。赤マントの周りに、禍々しい何かがうごめいているのを感じる…。それに、ヤマトには、もう一つ気になる事がある…。それを確かめるために、ヤマトは赤マントに声をかける。
「仲間を助けてくれた事は感謝する。ありがとう…。でも、赤マント…。君は本当にさっきまでの赤マントなのかい…?」
その時、赤マントの口角が上がる。ニヤリと邪悪な笑みを浮かべる赤マント。その両の瞳が赤黒い光を宿しているように見える…。赤マントは口を開く…。
「さぁ、どうかしら。結城ヤマト…。」
ヤマトの気になったのはその声だった。それは、先ほどまでの少女の声ではなく、年配の女性の声。聞き様によっては優しく聞こえる女性の声…それが、この状態でより不気味に聞こえる。そして、ヤマトには聞き覚えのある声…。その声の主を知っている。
「その声…、まさか、霊能師?」
ヤマトはその答えを口にする。
「ふふ…、声だけで分かるとは、嬉しいわ…。」
霊能師は悪い人ではないはず…。しかし、ヤマトには、何か引っかかる…。
「何故あなたが?あなたが、赤マントを操っているんですか?何故こんなことを?僕たちに何を?赤マントに何を…」
わからない事だらけで質問の止まらないヤマト。
ジャキンッ!
赤マントは、包丁の切っ先をヤマトに向ける。
「ちょっと質問が多いわね、結城ヤマト!」
「……。」
ヤマトは口をつぐんだ。
「そうよ、私は霊能師…。名前のない霊能師よ…。結城ヤマト、あなたに一つ言い忘れた事があって、この赤マントの口を借りて伝えに来たの…。」
「言い忘れたこと…?」
「ええ。あの日、私があなたに、槇村サトリの魂は学校にあると伝えたのは覚えているわよね?」
ヤマトはコクリとうなずく。
「あなたは覚えていないでしょうけど、あの日、学校に行く理由は肝試しなんてどうかしら?とか、人数は6人が良いわねといった言葉をあなたの心に刷り込んだ。そして、あなたは私の計画通り肝試しを行い、この異世界の学校へたどり着き、赤マントをここへ連れて来た…。」
「それが全て計画だったって…、ま、まさか死に顔アルバムもあなたの?」
「察しがいいわね。結城ヤマト…。その通りよ。そして、あなたが死を目前とした仲間を助けるため、7番目の七不思議を呼び出すことも私の計画の内…。」
「僕は…、あなたの手の内で転がされていた…!?でも、どうして?」
「…ふふ。全てはこの時のためよ、結城ヤマト…。あなたの絶望を…、あなたの不安を…、あなたの後悔を……全て私の力にするため。よく聞いてね、結城ヤマト…。この異世界の学校へ入り込んだのは6人…。そして、元の世界へ戻れるのも6人なの…。赤マント…いえ、槇村サトリの魂を連れて帰りたいのなら、仲間を1人この世界において帰らなければならないわ…。結城ヤマト、あなたが選びなさい。誰を見捨てるのかを…ね!!」