16話 七不思議の7番目2
「まずは、みんな、この話は、けっしてふざけた気持ちで人に話してはいけないよ。もしそれを破ったら…、君たちの家にアイツが来るかもしれない…。」
ヤマトは話し始めた…。
「うちの人体模型は、かなり古くからあって、戦争で木造だった夕暮小学校が焼けた時も、人体模型だけは無事だった…。それ以後も、先生や児童達から大切にあつかわれてきたんだ…。ある日、そんな人体模型に、ある噂が流れた…。それは、内臓の隙間に好きな相手の髪の毛を入れると両想いになれるというものだった。その噂は瞬く間に広がって、あっという間に人体模型は髪の毛だらけになってしまった…。時期を同じくして、児童が次々と失踪するという事件が起こる…。しかも、一度に消えるのは2人づつ…。髪の毛を入れた子と、その髪の毛の持ち主だった…。なぜ知っているかって?実は、1人だけ逃げ帰って来た子がいたんだ…。その子は、人体模型に好きな相手の髪の毛を入れた日の夜、自宅の窓の外に人影を見た…。その人影を見た途端、金縛りにあったその子に近づいて来たのは、あの人体模型だったという。そこでその子は失神してしまい、次に目を覚ましたのは知らない部屋だった…。隣には、片想いの相手が横たわっていた。そして、その部屋には、他にも何人かの子供達がいたという…。その時!…君たちを望み通り同じ気持ちにしてあげるよ。という声が聞こえた。そして、2人のギャーッという叫び声…。その叫び声がモゴモゴという音に変わる…。その子は、何が起こっているのかと思い、声のするほうを見た。見ない方がいい…と、誰かの声がしたが、もう遅かった…。なんと、そこには2人の子供の口の中に、自分の内臓の隙間から取った大量の髪の毛を詰め込む人体模型の姿が…。その子は、たまらずキャーッと叫び声をあげてしまい、それに気づいた人体模型は、その子に近づいて来た…。人体模型はその子にこう言った。今ね、君たちの望み通り両想いにしてあげている最中なんだ…。ほら、あの子たちも、恐怖という気持ちで繋がった…だろ?君もすぐに両想いにしてあげるね。隣の相手が起きたらすぐに…と。そのあと、命からがら逃げ出したその子は、交番に駆け込み無事だったという…。」
「え?他の子供達はどうなったんだよ…?」
タケルは怖くなって口を挟む。
「…知らない。僕が知ってる話はそこで終わり…。あ、そうだ。最後に…、実は、うちの人体模型には、ツクモガミ?とかいう神様が宿ってるらしい…。だから、軽い気持ちでイタズラをしたら、今の話みたいに人体模型が家に来るかも知れないんだってさ…。」
ヤマトの話を聞いていたタケルの顔が、みるみる青ざめていく…。
「イタズラ…、しちまったよ…。」
タケルは、ポケットの中の人体模型の胃を握りしめながら言った。
「元の学校に戻ったら返そう。僕も一緒に付いて行くよ。」
ヤマトはタケルに優しく声をかける。
「…みんなで返しに行こう。」
タケシが言うと、みんなが頷いた。その時、モヤのようなものがみんなの足元から現れて、辺りを覆う…。
「ん?なんかの前触れってやつか?」
じゅんぺいが言った。しばらくすると、モヤの中に人影が現れる。
「…。」
何が起こっても、それを見守るしかない6人…。次第にモヤは晴れてゆき、何者かが姿を現す…。
「え?女の子…?」
カゲルが言った。その言葉に驚くヤマト。
「ま、まさか、みんなにも見えてる…?」
「ああ。見えてるぜ…。ずいぶんと物騒な女の子が…。」
タケルの言葉に、タケシたちもうなずく。6人の前に現れたのは、赤いマントに身を包み、両手に包丁を持った少女…。今まではヤマトにしか見えていなかったはずの怪人・赤マントだった…。




