15話 七不思議の7番目
「俺はやるぜ。俺が招いたことだしな。」
タケルは言う。
「もちろん僕もやる。」
ヤマトもそれに乗る。
「…俺たちは、生きられる可能性があるならやるしかない…だろ?」
と、タケシ。
「…だな。」
と、カゲル。
「…おう。」
と、じゅんぺいがそれぞれ言った。
そして、みんなはツトムを見る。ヤマトは、ツトムにこう言った。
「ツトムくん、タケシくんたちを置いて行くという選択もある…。元の学校に帰るだけなら、他にも方法があるかもしれない。無理に付き合う必要はないんだ…。君の意思で決めて欲しい…。」
ツトムは少し迷い、その後、意を決したように口を開く。
「ヤマトくん、いや、ヤマト!僕もこの仲間の1人だ。怖いけど、仲間を捨ててなんて行けないよ!それに、7番目を呼び出すには6人必要なんでしょ?なら、僕がいなきゃダメじゃないか。僕もやるよ。一緒に7番目を呼び出そう!!」
こうして夕暮小七不思議の7番目を呼び出す儀式は始まった…。
まずトップバッターは、カゲル。体力のない3人を先に話させる作戦だった。
「じゃあ行かせてもらうぜ…。俺が語るのは、夕暮小学校七不思議の1番目。はずむバスケットボールだ…。ある冬の日の夕方6時頃…、外はもう真っ暗だった。忘れ物を取りに来たある児童が、体育館からダムダムというバスケットボールがはずむ音を聞いたんだ…。こんな時間におかしいな…?と思ってその児童は体育館をのぞいた…。すると、首のない子供がバスケットの練習をしてたんだって…。首のない子供がシュートをして、ボールはゴールを外れてその児童の所まで転がって来た…。
児童は首のない子供に見つからないように息を殺して隠れたんだけど…、「ねぇ、取ってよ。」って、変な所から声がするんだ。それは、転がって来たボールから聞こえてた…。児童からは、月明かりに照らされてボールがよく見えた…。その直後、児童の悲鳴が校内に響きわたったんだ…。児童の見たもの、それはボールじゃなく、子供の首だったんだ…。」
「こえぇ…。」
タケルはそう言ってブルッと体を震わせた。
「カゲルくん、上手いね…。」
ヤマトも少しビビったようだ…。
「次は、タケシくんかじゅんぺいくんだけど…?」
ヤマトがそう言うが早いか、タケシが手を挙げる。
「お、俺がやるよ…。でも、俺はカゲルみたいに上手くしゃべれないぜ…?」
タケシはカゲルの話の上手さに少し萎縮してしまったようだ。
「なら、俺がやろうか?」
じゅんぺいが横槍を入れる。が、さらに話しにくい状況になることを恐れて、
「いいよ。俺が話す…。」
と言った。そんなタケシにヤマトは声をかける。
「まぁ、話し方については、噂では明言されていないようだし、大丈夫だよタケシくん。」
「…んじゃ、まぁ…。」
そう言ってタケシは話し始める…。
「2番目は、七不思議の中で一番有名な、あのトイレの花子さんの話を…。旧校舎の3階奥の女子トイレ、左から3番目の個室はいつも閉まってる。その扉を3回ノックして、花子さん遊びましょって言うと、中からハーイって声が聞こえるんだってよ…。」
「…。」
誰も口を開かない。
「だから、下手だって言ったんだ…。」
タケシは自虐的に言った。
「そ、そんなことなかったよ。…じゃ、次行こうか…。」
ヤマトはそう言うと、じゅんぺいに話を促した…。
「よしっ!俺だな…。えー、夕暮小学校という小学校がありまして…。ま、当たり前なんだけども昼間は子供達でにぎわってるんだけども…、小学校っていうのはね、やっぱり霊の集まりやすい場所になって……………帰れ!お前っ!!」
じゅんぺいは、いきなり大声を出す。タケシとツトムがびっくりする。しかし、他の3人はわかっていた。これ、間違いなく稲川淳二の真似だ…。じゅんぺいは話を止めて、ドヤ顔でタケルを見つめる。
「…良いから続けろよ、稲川じゅんぺー。」
タケルは言った。稲川じゅんぺーは、ほんでもってねと効果音を駆使して、3番目の紫鏡を語った。が、要約すると、旧校舎の1階と2階の間の踊り場にある大鏡は、夜中、その中に紫のもやがかかったとき、鏡の中から無数の白い手が現れて、そこにいるものを鏡の中に引きずり込むという内容だった。
続いてはツトム。
「あの、僕は13階段を話そうと思うんだけど、さっきと同じでいいのかな?」
「うん。さっきので大丈夫だよ。」
ヤマトがそう言うと、ツトムは4番目の13階段話し始めた…。が、本当に一字一句変わらず先ほどと同じ内容だった…。
「ま、いいか…。で、次はオレでいいか、ヤマト?」
タケルが話し始める…。
「5番目は、死に顔アルバムだ。これは、友達の友達に聞いた話なんだけどな…、そいつはいじめられっ子で、放課後は、毎日いじめっ子が帰るまでずーっと掃除用具入れに隠れてたらしいんだ。でも、その日はいじめっ子が全然帰らなくて…。そいつは掃除用具入れの中でついウトウトしてしまったらしい…。ハッと気づいて掃除用具入れから飛び出すと、外はもう真っ暗…。もちろん校舎の中も真っ暗で、その暗闇の中を1人で靴箱まで行かなきゃいけなかった…。1人心細い中歩いていると、その途中にある職員室に明かりが灯っている。まだ先生がいたんだと思って安心したそいつは、職員室をのぞきこんだ…。すると、見たことのない先生が何か作業をしている。その時、扉に手が触れてしまい、カタッと音が鳴った。それに気づいた先生が、誰だ?こんな時間まで残ってるのは?と言い、そいつは職員室の中に入った。先生は、まぁいい。後で私の車で送ってあげよう。もう少しで卒業アルバムが出来上がるから待っていなさいと…。そいつは、卒業アルバムが気になって机をのぞきこんだ。すると、先生はこう言ったんだ…。見たね。これは君の死に顔だよ…。そこにあったのは、死に顔の載った人生の卒業アルバムだったんだ…。そいつは、翌日死体で発見された…。そして、その髪の毛は真っ白に変わっていたという…。」
タケル以外の5人は思った。怖いんだけど、それ、体験したから…。
「じゃあ、僕が最後だね…。6番目は、動く人体模型だ…。」
ヤマトの話が始まる…。




