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都市伝説事典  作者: ニカイドウ
一年前の肝試し編
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14話 3年前の神隠し

「一体、何が起こってるんだ…?」

タケルが疑問を口にする。ガイコツ先生は、ここを俺たちが知っている学校じゃないと言っていた…。

「…13階段だ…。」

靴箱の影から声がする。それは、影に隠れていたツトムの声だった…。

「どういう事だ?」

タケルがツトムに聞き返すと、彼は話し始めた。

「夕暮小七不思議の1つ13階段だよ…。普段は12段しかない、新校舎2階と3階を繋ぐ階段。しかし、夜中にその階段を上がると、1段増えているという。そして、その13段目を踏んでしまうと、その人は上から降りてきたロープで首を吊って死んでしまうらしい。逆に、夜中にその階段を下りると、死んだ者たちのさまよう異世界へと繋がってしまうという…。これはきっと後者のほう…。」

「でも、旧校舎3階の渡り廊下に続く扉は鍵がかかってた。だから、僕たちは新校舎の3階には行けなかっただろ?下りるのは不可能だ…。」

ヤマトは言った。それを聞いたタケルは気づく…!

「…俺だ…。」

タケルの顔は青ざめている。

「タケル…?」

ヤマトはタケルの顔を見て、その後悔を察知する。

「俺は、確かにそこを通った…。そこが13階段だとは気づかずに。俺が行った時、旧校舎3階の渡り廊下に続く扉は開いていたんだ…。多分、いや、きっと俺が13階段を降りた事で、学校が異世界へと繋がったんだ…。ヤマトたちがそこへ着いた時には、すでにここは異世界の学校で、この世界では、渡り廊下に続く扉は閉ざされていたんだろう…。ごめん…。今の状況は俺のせいだ…。」

そう言ったタケルの目には、うっすらと涙が浮かんでいる。

「…なに悲劇のヒーローごっこしてんだよ、タケル。」

声のした方を向いたタケルの目に映ったのは、靴箱を掴み立ち上がるタケシの姿だった。

「タケシッ!」

タケルは、タケシの名を呼ぶ。そして、タケシだけじゃない。カゲルとじゅんぺいも立ち上がる。

「…そうだぜ。俺たちがこんな目にあってんのは別にお前のせいじゃない。」

とカゲル。

「ある意味、普通の人生の一生分以上の不思議を連れてきてくれたお前に、感謝してるぜ。タケル…。」

じゅんぺいもタケルに声をかける。3人とも髪の毛の3分の2くらいがすでに白く変わっている。辛いはずなのに、無理にそれを見せないようにしている。

「お前たち…。」

タケルはそう言って、涙を拭いた。

「…知ってるか?3年前の神隠し事件…。」

タケシは話し始める。

「この夕暮小学校で肝試しをしていた6人の児童が行方不明になった…。警察も出動するような騒ぎになって、学校も学校の周りもしらみつぶしに捜索された。が、6人は見つからなかった…。でも、その3日後、6人は学校の中で発見されたんだ。その3日間の記憶をほぼ失った状態でな…。もしかしたら、この6人って、ここに来てたんじゃないか?そして、今の俺たちと同じ状況にあった…。なら、俺たちが生きて元の学校に戻る方法はあるんじゃないかと思うんだ…。」

タケシは一気に話すと、ハァハァと荒い息を吐き、座り込む。ツトムが背中をさする。

カゲルとじゅんぺいも、ヤマトが楽な姿勢にさせる。

「こん中で一番頭が良いのはヤマトだろ?何とか頼むぜ…。へへ。」

少しふざけたように、じゅんぺいが言った。ヤマトは、右手でじゅんぺいを制止する。

「わかってる。少し静かに!…今は体力を温存してて。」

それは、ヤマトの優しさだった。ヤマトは、さっきのタケシの話を心で反芻する。何かヒントはないか!?

「ヤマト!」

名前を呼んだのはタケルだった。

「どうしたんだい、タケル?」

ヤマトはタケルに向き合う。

「…もしかしたら、3年前の6人は自分の意思で記憶を消したんじゃないか?」

タケルは言った。ヤマトはその言葉の真意にまだ気づいていない。タケルはさらに話を続ける。

「あの時、ヤマトたちは職員室から出て来たんだよな?なら、遭遇したのは七不思議の一つ、死に顔アルバム…だろ?で、タケシたち3人は自分の死に顔を見てしまった…。」

ヤマトはうなずく。でも、まだ話が見えない。

「もし、3年前の6人も死に顔アルバムを見てしまったんだとして、それをなかったことにしようとしたんだとしたら…。」

タケルの話をそこまで聞いてヤマトは気づく。

「……記憶だ。そうか、6人が死に顔アルバムの呪いを回避するためにしたこと。それが自分たちの記憶を消すことだったんだ!!」

「…記憶がなくなれば、死に顔も見ていないことになるってわけか…。」

カゲルが辛そうな声で言った。

「…でも、記憶を消すなんて、そんなこと出来るのか…?」

タケシも無理をして話に入ってくる。

じゅんぺいは、体力を温存するため、すのこの上に寝転んでいる…。

「多分…出来るよ。…あれだよね、タケル。」

ヤマトは言った。タケルは、

「ああ。」

と答える。そして、ヤマトは続ける。

「夕暮小七不思議の7番目…。それを知るものは誰もいないという…。でも、その7番目を呼び出す方法はあるんだ…。それっておかしいと思わない?」

「おかしい…のか?」

タケシは疑問を口にする。タケルが助け船を出す。

「じゃあタケシは、呼び出す方法があるのに、それを実行した人がいないと思うか?」

「…。」

タケシは、その通りだと思う。

「俺なら実行するわ…。」

横から、じゅんぺいが言った。ヤマトは、さらに続ける。

「なら、なぜ7番目を誰も知らないのか?僕たちは、こう考えた。知らないんじゃなくて、覚えてないんじゃないかって…。」

「要するに、7番目を見たやつらは、その7番目に、もしくは他の何かによって記憶を消されてるんじゃないかってことさ。」

タケルが補足する。

「じゃあ、その7番目を呼び出せば、俺たちの記憶を消せるかも知れないって訳か…。」

カゲルが言った。

「で、その方法は?」

とじゅんぺい。ヤマトは説明する。

「それを呼び出す方法は、夜の学校に6人が集まり、1人1つづつ七不思議を語っていくこと。最後の一つを語り終えた時、そこに7番目が現れるという…。」

「…やるしかないんだよな?」

タケシは、不安そうに言った。

「みんな待ってよ!でも、それは確実じゃあないんだよね?ヤマトくん。」

そう言ったのはツトム。ヤマトは答える。

「…うん。ツトムくんの言う通りだよ。上手くいけば、タケシくんたちは助かるかもしれない。でも、もしかしたら今まで7番目を呼び出したものは、みんな殺されてしまったのかも知れない。そして僕たちも…。でも、それは誰にもわからないんだ…。だから、無理にとは言わない。実行するかどうかは、各自で考えて欲しい…。」

ヤマトはそう言って、各自に選択を迫った…。

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