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起号作戦  作者: 俺氏
第二章 航空戦
7/18

第七話 迎撃

基本全てそうですが、空戦を書いたことは無いので変なことになってるかもしれません。

 〇六一〇 陸軍第一飛行場

 飛行場防衛の為に残った戦闘機の空中勤務者に集合が掛かったのは攻撃隊の出撃から三十分後のことであった。攻撃隊が帰還途中の海軍攻撃隊を追う敵編隊をはっけんしたとの事だった

 「敵機は四十機ほどであるという。島に接近されると厄介だ。因って、我々は洋上で敵機を迎え撃つ。」航空隊長が説明する。

 「尚、海軍航空隊からも迎撃機が出る。くれぐれも、誤射には注意せよ。以上、質問は。」一人として手を挙げる者はいなかった。

 「よし、各員、出撃!」全員が敬礼をし、それぞれの愛機へ走っていった。そして、発動機を回し暖機運転を始めた。


 十分後 茂尻沖上空

 大山一飛曹は第四小隊を率いて高高度を飛行していた。隷下には深谷二飛曹と原田二飛曹の零戦五二乙型がいた。

 不図左に目を向けると少し向こうに陸軍の戦闘機隊がいた。ついさっき合流したばかりだ。陸軍も単座機で洋上飛行が出来るようになったか、そう考えながら、大山は下前方を覗いた。攻撃隊が出撃した時よりは雲が出てきたが視界は十分で、寧ろいざという時逃げ込める場所が生まれたぐらいだ。

 敵機は今のところ見つからない。位置的に普通第四小隊長が一番先に敵機を見つけるということは無い筈だが、戦争において常識はあってない様なもの、いつ何時覆されるか分かったものではない。しかし、今回そういったことは無かったらしい。

 「海軍第一小隊長、島崎。敵機確認。全機、我に続け。」そう無線機が告げると、編隊長機が二、三度翼を振った後、急降下を始めた。大山小隊や他の機が続く。敵も気付いたのか慌てて散開した。

 大山は爆弾を搭載しているせいか動きが鈍い一気に狙いを定めた。その姿を照準器に入れ、少しずらし敵機の未来位置へと向ける。使用火器が七粍七固定機銃と二〇粍機銃になっていることを手で触って確認した後、引金を引いた。ダダダダという軽快な発射音とドドドドという重厚な発射音が混じる。敵機はその火線に突っ込む形になり、多数の弾を受け機首から火を吹き墜ちていった。列機もまた敵機を落としたようだ。

 小隊はそのまま下方へ抜け、反転、上昇を始めた。直ぐに直援の戦闘機が降下してくる。銃撃を旋回してかわすと原田機が後ろを取りすぐさま撃墜した。再び上昇し、後ろを見せた敵艦攻を追う。敵は旋回銃を乱射し弾幕を張ろうとする。が、所詮は単機、難無く接近し一連射で撃墜する。高度を下げていく敵機を尻目に次の獲物を探す。敵の直援機は陸軍が圧倒し、なお陸軍には余力があり、爆撃機撃墜に参加する機もあった。

 大山は一時方向に編隊で飛行している爆撃機を見つけた。直ぐにそちらへ機を向ける、矢張その身を護る為敵は旋回銃で反撃してくる。しかし今回は、密集しているため、それはかなりの密度であった。大山は一旦旋回し別方向から再度攻撃をしようとした。旋回途中、敵機が上から突っ込んでくるのを視界の一端に捉えた。そして、大山はそれを見逃さなかった。大山は旋回しつつ高度を下げ、円柱の周を回るかのように機を操った。そして敵機を照準器に収めようとする。が、敵もさるもの、大山が狙う機と組になっている気が大山を狙う。米軍ではサッチウィーブと呼ばれるこの戦法で多くの機が堕とされたしかし、大山小隊は編隊を維持したまま戦闘を行っていたため深谷機が更にその機を狙うことが出来た。米軍の操縦者が冷静に考える余裕があったなら、零戦の不得意とする急降下で逃げるという選択を採っただろう。しかし、新米だった彼は一気に逆転されたことで冷静さを失い咄嗟に左旋回で逃げようとした。だが、この選択をした時点で彼の命運は決まった。左旋回は零戦が最も得意とする機動である。そもそも、零戦と格闘戦紛いのことをした時点で死は決したようなものだが。当然、あっという間に追いつかれ、深谷に撃墜された。大山が追っていた機も間もなく撃墜された。

 大山は高度が下がったことを利用し旋回銃の死角である下方からの攻撃を考えた。適当な一機にあたりをつけ機銃を発射、撃墜した。列機もまた同じ様に敵機を撃墜した。

 上方に抜け敵編隊を見ると、彼らが今どのような状況に置かれているのかよく分かった。多数の陸海軍機に囲まれ、反撃も空しく次々と敵機は墜ちていった。密集して密度を上げようとしているが、機の絶対数が見る間に減っていき、最早風前の灯火であった。大山は上昇を止め反転、急降下し、更に敵機を撃墜した。

 敵の直援機は一機たりとも姿が見えず、爆撃隊は次々と墜ちていった。せめて命だけはと逃げようとした機も多くは戦闘空域から逃げ出せず撃墜された。運よく逃げおおせた機もそこで運が尽きたのか攻撃を終え帰還途中の陸軍攻撃隊と遭遇してしまった機は艦隊に辿り着くことはなかった。何とか艦隊まで帰投できた機もそこに降りるべき母艦の姿は無く、着水し生き残った艦に救助されるのを待つ以外術は無かった。結局、出撃した四十二機中帰還できたのは艦戦二機、艦攻五機だけであった。当然、全機着水を選ぶことになり米軍の航空兵力は少数のB-29と護衛機のみになってしまった。更に、B-29は茂尻にいるわけではないので、要請後直ぐに来れるというわけではなく近接航空支援としては使えない。実質戦術航空隊は壊滅したようなものだ。

 後に第一次茂尻沖航空戦と呼ばれたこの戦いで、米軍は護衛空母二隻と直衛の重巡、軽巡、駆逐艦を多数失った。生き残ったのは駆逐艦数隻と弾薬補給の為後方へ下がっていた護衛空母一隻と少数の軽巡、駆逐艦だけであった。又、海軍航空隊により揚陸途中の物資、兵器が多数失われた。更には上陸用の艦艇にも損害が出てしまった。日本軍が受けた損害も決して小さいものではなかったが、その対価として一時的にとはいえ手に入れた制空権は十分見合うものであった。米軍は生き残った護衛空母艦隊を大慌てで呼び戻すと共に損失の補充分として二隻の護衛空母と直衛の艦隊を急派した。


第一次、ということは第二次もある筈です。が、いつ、どのようなものなのか?それはこの先を読んでのお楽しみです。

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