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リオ ー屋上のラストボスー  作者: 三河 悟
闇黒の夏休み編
31/47

海境の来訪者

 閻魔県坂巻市(さかまきし)濱無町(はまなしちょう)

 名前のせいか砂浜が殆ど無く、代わりに岩礁入り組むリアス式海岸が広がる海境が特徴の、漁業が盛んな町。


「偶には夜釣りも良いよな~」

「そうね~。何か良いの釣れるかしら?」


 当然、デートスポットにはまるで向いていないのだが、物好きにも夜遊びをしようとする男女が二人。釣りが趣味で、そのまま付き合う事になったフィッシングカップルだ。もちろん、獲物は魚ではあるものの、本当の釣果は別である。きっと、夜釣りの次は夜遊びなのであろう。何て厭らしい。男女の仲なんて、大概はS○Xに帰結するのだろうけれど。


「……よしっ、良い引き!」

「こっちもよ!」


 しかし、かなり波が立っている為、あまり釣れないだろうという二人の予想に反して、滅茶苦茶に入れ食い状態だった。糸を垂らせば直ぐに浮きが沈み、引けば引くだけ魚が釣れる。それも結構な大物ばかりだ。


「「最高の夜だ!」」


 むろん、思わぬ釣果に二人共もウハウハであった。色々な意味で、今日は最高の夜になりそうである。

 と、その時。


「……何だ? 急に波が止んだぞ?」

「霧も出てきたわね……」


 突然、結構荒れていた波がピタリと止み、それと入れ替わるように濃い霧が立ち込め始める。海面を這うように広がる白い靄は、二人が次の行動を起こす暇を与えずに包み込み、外界から完全に孤立させた。


『ウフフフフ……』

「「えっ……!?」」


 さらに、白んだ水面を波立たせながら、艶やかな女が頭角を、肩を、胸を、胴を、腰を、脚を見せ、遂には海境を跨いで、二人の前に現れた。蝋のように滑らか肌と波々とした緑髪を持ち、女優も思わず嫉妬してしまう豊かな肉体を見せびらかす彼女は一体何者なのか?

 だが、彼女が何を目的に現れたのかは分かる。その艶めかしい美脚を交差させ、西瓜よりも大きく美味しそうな二玉を揺らしつつ歩み寄って来る様は、完全に男を誘っている。

 ただ、こんな見え透いた、美人局よりも怪しい女を前に欲情する男など、


「……んんんっ……雌メスめすMESUUUUUU!」

「ええっ!?」


 隣に居た。ここまでふしだらな男だとは思いもしなかったが、何処か様子がおかしい。目が血走り、口端から泡を吐き、涎をぶっ垂らしながら、自営のテントをビンビンに張っている姿は、どう見ても薬を決めたヤバい奴だ。


「ちょっと待っ――――――痛っ!?」


 もちろん、女は男を止めようとしたのだが、怪女が口から棘のような物を吹き矢の如く発射し、女の腹に突き刺して動きを止める。その痛みは凄まじく、女は苦痛に藻掻きのた打ち回った。


『アハハハハ♪』

「おおぉぉん、おおおおおぉぉぉ……おぎゃあああんっ!?」


 その隙に怪女が男と交わり、瞬く間に精気を搾り取った上で、性器も鮑で食い千切り、文字通り昇天させてしまった。


「うぐぅぅぅ……痛い……痛いぃぃ……!」


 一方、腹に一発食らった女は、気が付けば見るも無残な風船腹となった。

 しかし、耐え難い陣痛に悩まされながらも、何故か足だけは機敏に動く。


「あぐががが……ひぎぃいいいいいいい!?」

『ピキィイイッ!』


 そして、元居た海岸から大分離れた所で突如として腹が爆散。無数の蟲ケラを生み出し、死体は海の藻屑と消えた。その際、謎の人影が死体から種らしき物体を盗み取ったが、気にしても仕方なかろう。

 こうして、最高の夜は更けていき、やがて最悪の朝を迎えるのであった……。


 ◆◆◆◆◆◆


 ここは閻魔県要衣市古角町、峠高校の屋上。そこには豊かさと不気味さが同居する鬱蒼とした森が広がり、様々な怪奇生物が棲息している。


『ええ天気や~』


 そんな森の一画にある、大きな大きな湖の真ん中に、一人の少女が浮かんでいた。深い深い水底を背に、薄桃色のピチピチお肌を惜し気もなく広げ空を仰ぐこの女の子は、「祢々子(ねねこ)河童」。かつて関東平野を支配していた女河童、「禰々子(ねねこ)河童」の一人娘であり、色々あって里桜の屋上庭園で気儘に暮らしている。当然ながら頭頂部に皿があるし、背中には甲羅を背負っている。


『良いご身分だな』


 そんな祢々子に、声を掛ける少年が一人。水面に立つという人知を超えた偉業を事も無げに成し遂げている彼は、「竜宮童子(りゅうぐうどうじ)」。海の一大勢力「竜宮」の王子で、かつ乙姫様の一人息子である。その為、リュウグウノツカイを思わせる髪(というか頭の一部)に、肌を自在に浮き沈みする鱗など、人外としての特徴もしっかりとある。恰好は昔ながらの漁師袴だけれど。


『ああ、童子くん久し振り~』

『三日前に会ったばっかりだろ』

『それはそうやけど……今日はどうしたん?』

『いや、ちょっと海釣りでも行かないかと思ってな』

『行く行く~♪』


 竜宮童子と祢々子は紆余曲折を経て、恋人をすっ飛ばして結婚していて、こうして偶に落ち合いつつ、デートを重ねている。場所はその時々だが、今回は海へ行くつもりのようだ。海辺でデートだなんて、実に初々しい。


『そうと決まれば』

『行くで~♪ れっつらご~♪』


 だが、そこは妖怪同士のカップル。祢々子は甲羅から空気をジェット噴射する事で空を飛び、竜宮童子は竜宮童子で持ち前の巨大な槍をサーフボー代わりに天を翔る。県の端っこなんて一っ飛びである。それはつまり、県を跨いだ程度ならコンビニ感覚で追い掛けて来るという事でもある。こいつらに喧嘩を売るのは止めよう。


『よし、到着だ』

『逆巻市や~♪』


 という事で、逆巻市濱無町の海岸に到着。岩礁地帯であるここは、昼も夜も釣りには最適の場所だ。


『え~い』『そ~い』


 とりあえず、針に餌を付けて投げ込み、当たりを待つ。そんなに遠くまで投げずとも、ここなら釣れるだろう。


『……、来た来たっ!』

『こっちも当たったで~♪』


 先ずは「ネンブツダイ」。小さい身体に対して口が大きく開く為、何にでも食い付く阿保な魚である。鯛の仲間なので味はそこそこだが、一定数釣ったらフィッシュイーターの活餌に使うのも良い。


『おっ、今度は「スズキ」か。ちっちゃいけどな』

『こっちは「キス」やな~。後で天ぷらにしよ~』


 お次は「スズキ(通称:シーバス)」と「キス」。前者は刺し身や焼き、後者は天ぷらにすると美味い魚だ。


『もっと大きいのが欲しいなぁ~』

『……あっ、「クサフグ」や。邪魔やから、こっちに居てな~』


 しかし、何時もヒットするとは限らない。竜宮童子には当たりが無く、祢々子の方は「クサフグ」が掛かってしまった。クサフグは調理が面倒な上に餌取りでもある為、釣り人からは外道として嫌われ、その辺にポイ捨てされてしまう。祢々子は優しいので、近くの潮溜まりに隔離しておくのだが。


『――――――うぉっ、こりゃ大きいぞ!』


 今度は竜宮童子の竿に当たりが。動きも激しく、引きも強い。絶対に大物である。


『頑張れ頑張れ~♪』

『てぇええええい!』


 祢々子の応援で奮起した竜宮童子が、遂に釣り上げたそれは、馬鹿デカい「キジハタ」。刺し身や塩焼きもイケるが、煮込んでも美味い高級魚だ。何だかんだで日が暮れ始めていたらしい。


『いや~、童子くんと釣るの楽しいなぁ~♪』

『………………』


 祢々子の素直な気持ちに、竜宮童子は思わずそっぽを向いた。


 ◆◆◆◆◆◆


『ウフフフフ……アハハハハ……』


 深い深い海の底。ナニカが海境を目指し、浮上する。己が繁栄の為に。


 ◆◆◆◆◆◆


『もう日が沈みそうだな』

『そろそろ帰ろか……ん~?』


 日も水平線に沈み始め、良い子の二人が帰路に着こうとした時、急に霧が立ち込めた。その勢いは留まる事無く、瞬く間に世界を真っ白に塗り替え、視界を奪う。


『弱いけど、毒ガスだな、こりゃあ。それも幻覚作用がある。あんまり吸うなよ』

『了解や~』


 だが、竜宮童子と祢々子は水辺の妖怪。湿度を媒介にする毒ガス程度、まるで通じていなかった。


『………………?』


 そんな事など露知らず、霧の放ち手たる怪女は、首を傾げながらも律儀に姿を出す。


『プッ!』

『フンッ!』『あ、どうもな~』


 それから、祢々子の方を見遣ると、口から鋭い棘を矢の如く発射したが、当たり前のように竜宮童子に弾き飛ばされてしまった。


『グヴォッ! クォッ! クォアアアアッ!』

『な、何だぁ!?』『滅茶苦茶怒っとるで~!?』


 すると、突然に怪女が憤怒の表情を浮かべたかと思うと、下腹部と脚が紐解けて八本の節足となり、次いで顔面を刺々しい角錐状の仮面で覆い隠して、あっと言う間に正体を表した。まるで上半身が女で下半身が蜘蛛の怪物「アラクネ」を彷彿とさせる姿をしている。

 しかし、知っての通り美女は海原に落っこちてないし、完全水棲の蜘蛛も存在しない。それっぽい物を無理矢理くっ付けた合成生物(キメラ)と表現するのが一番しっくりくるだろう。こいつは一体、何だ?


『「栄螺鬼」だ!』


 本性を表した怪女を見て、竜宮童子が叫ぶ。

 「栄螺鬼」とは、文字通り栄螺が化けた鬼の妖怪である。栄螺が長い年月を生きると変異し、人に化ける事で地上に這い上がって来ると言われている。その際、必ずと言って良い程に美女へ変身するのだが、これは男を誑かして食ってしまう為だ。


『「栄螺鬼」? あれの何処が栄螺!?』

『頭のアレが貝殻で、他は全部胴体だ』

『なら、下半身のアレは?』

『「牛鬼」だよ。ウミグモの化け物だ。栄螺鬼と共生してるのさ』


 そう、冗談でも何でもなく、本当に別の生き物同士が合体していたのである。“イソギンチャクがくっ付いた貝殻を背負うヤドカリ”を想像してみると分り易い。

 ちなみに、「牛鬼」とは川や海に棲む、牛のような頭部に蜘蛛の身体を持つ奇妙な妖怪で、人間が大好物であり、単独で狩りをする事もあるが、多くの場合は別種の妖怪と協力する形で襲う。狩りは連携した方が成功するのを、本能的に知っているのだ。

 一方のウミグモは、異様に長くてデカい八本脚にゴミみたいな本体がくっ付いている、奇妙奇天烈な生物である。小さ過ぎる胴体には、僅かばかりの脳味噌とショボい心臓しか無く、他の重要器官は全て脚に詰まっている為、“脚が本体”と言い切って良いだろう。当然ながら蜘蛛とは別の生物なのだが、一応は狭角類の一種ではある。


『やっぱり詳しいな、童子くん』

『まぁな』

『なら、あいつは何であないに怒ってるん?』

『知らん』

『おい、海の王子』

『知るかよ! アイツら会話が成り立たないんだから!』


 結局、降り掛かる火の粉は払い除けるしかないらしい。だって妖怪だもの。

 逆に言えば、そんな会話もロクに成り立たない化け物すら従わせていた、先代の支配者たる豊玉姫(オトヒメ)の強さが際立つ。小賢しい理性ではなく、本能的に震え上がっているからこそ、下に甘んじていたのである。


『だが、慌てる必要はねぇ! 話が通じないって事は、理解するお頭が足りてないって事だ! 分からせて(・・・・・)やれば良い!』

『ただの暴力やん』

『それが真理だよ』


 暴力は全てを解決する。言っても分からないなら、物理的に黙らせれば良い。死人に口は無いのだから。


『カァアアアァァヴォッ!』

『うわっと!?』『危なっ!』


 と、栄螺鬼が足をカチカチと鳴らしながら、物凄い勢いで襲い掛かって来た。脚が多過ぎると身体の発条を利用出来なくなるものの、単純に歩数を稼げる為、四足動物以上の素早さを生み出せる。バランスの面でも多脚の方が優れているので、正面から戦う時も有利だ。

 むろん、一本一本の力は弱いが、それを補うのが人型の上半身。直立二足歩行は弱点が前面に向く上にバラスも悪い為、基本的に戦闘向きではないものの、踏ん張りの利く多脚構造の下半身があれば、幾らでも強靭に出来る。

 だから、栄螺鬼の上半身は表面上華奢に見えるだけで、実態はゴリラMAXなのだろう。事実、拳一発で埠頭に地割れを起こしている。しかも、三角頭から無数の棘を飛ばす遠距離攻撃まで兼ね備えているので、厄介この上ない。

 余談だが、栄螺鬼が口や殻から飛ばしている棘の正体は、猛毒を閉じ込めた歯舌の矢である。当然、刺されば命は無かろう。


『クァアアヴォッ!』

『何やこいつ、腕を鞭みたいにブン回しよるで~!?』

『元が貝だからな! 珪素の骨を持っているようだが、軟体動物である事に変わりない!』


 さらに、貝故に上半身の関節は自由自在であるらしく、普通に殴ってくる事もあれば、鞭や発条の如く振るう場合もあり、見極めるのが難しい。

 だが、それがどうした(・・・・・・・)


『……祢々子、下をやれ(・・・・)!』

『了解や~! てぇーいっ!』

『カァアアッ!?』


 竜宮童子が往なす内に、祢々子が(・・・・)拳を伸ばした(・・・・・・)。流石に栄螺鬼程では無いにしろ、河童も手足を変形させる事が可能だ。特に伸縮力が強く、その気になれば音を置き去りにするスピードと鋼鉄に風穴を開けるパワーを生み出せる。

 そして、幾ら多脚のバランスが良いと言っても限度はある。何本か折ってしまえば、数の多さが災いして転んでしまう。もちろん、蟲や甲殻類と違って腕を使えば起き上れるが、それは致命的な隙に他ならない。


『ていやあああっ!』

『ドラァアアアッ!』

『ギャアアアアッ!?』


 先ずは祢々子が右第一脚と第二脚、左第四脚を破砕し、竜宮童子が右第二脚を切り飛ばしてから、肘を着いた栄螺鬼の胸部から頭部を纏めて串刺しにして、止めを刺した。


『ふぅ~、終わっ――――――』

『馬鹿、油断するな!』

『コァアアアアアッ!』


 しかし、油断は禁物。生物は最後の最期まで生きる事を諦めない。致命傷を負った栄螺鬼は、残心のなっていない祢々子を毒針で撃ち抜き、息絶えた。


『クソッタレが!』

『うぅぅ……っ!』


 竜宮童子は直ぐ様介抱するが、祢々子は急速に弱っていく。見てみれば、刺さった毒針が鼓動し、今にも体内で弾けそうになっていた。

 つまり(・・・)この毒針は(・・・・・)単なる武器(・・・・・)ではない(・・・・)


他人(ひと)を生かしておいて、勝手に死ぬんじゃねぇっ!』

『うっ!』


 そこで、竜宮童子は祢々子の腹に手刀を入れ、己の血を流し込む。挿入された血は一瞬にして一塊となって変形し、赤い糸で本体と繋がった小さな竜宮童子となって、祢々子の血中を泳ぎ出す。これは所謂「分身」で、今から歯舌に仕込まれた“ナニカ”を根本から絶つのだ。この手の物は安易に引き抜こうとすると、確実に厄介な事になる。


『――――――見えた!』


 辿り着いた先に待っていたのは、


『アァヴォ! オギャァアアアッ!』

『クソがっ、やっぱり“卵”かよ!』


 歯舌の中から(・・・・・・)孵化しようと藻掻く(・・・・・・・・・)牛鬼の幼生だった(・・・・・・・・)。歯舌を避けられた栄螺鬼が怒っていた理由がここにある。

 傍目には、まだ栄螺鬼を背負っていないようが、そっちは歯舌の中で待機しているのだろう。目敏い敵を排除する為に。



◆『分類及び種族名称:刄脚(ばきゃく)超獣=牛鬼』

◆『弱点:頭胸部』



『コァアアアアッ!』

『この野郎……っ!』


 誕生と同時に恐ろしい速さで泳ぎ寄ってきた牛鬼が、竜宮童子に襲い掛かる。八本の脚をフルに活かし、竜宮童子の手足や武器を押さえ付け、首筋に鋏角を突き刺した。このまま消化液を流し込んで、内部から溶かしてしまうつもりであろう。


『オレはあくまで血液なんだよ! 食らいやがれぇっ!』

『クォアッ!?』


 だが、そう簡単に殺られる竜宮童子ではない。本体から猛烈な勢いで流し込まれた血液を、高温高圧の状態で両目の瞳から発射。即席の水圧カッターとして、牛鬼の頭胸部を穿つ。


『はぁあああああっ!』

『ガァキィアア……!』


 さらに、出来た傷口に銛を突き刺し、切っ先から血液の瀑流を撃ち、完全に粉砕した。脚が本体のウミグモとは言え、脳や心臓は胴体にあるので、ここをバラバラにされては一溜りもない。


『ズワォッ!』

『キィアッ!?』


 ついでに歯舌ごと栄螺鬼の幼生を爆砕して、彼らの繁殖活動を完全に停止させた。


『――――――ふぅ、後は祢々子次第か』


 しかし、まだ終わりではない。このまま解毒を手伝いはするが、持ち直せるかは祢々子の免疫力次第である。


『う……ぐ……はふぅ~』


 幸い大妖怪の血族は生命力も高いらしく、祢々子は体内の毒素を分解し、程無くして目を覚ました。

 そして、お互いに見つめ合い、安堵の微笑みを交わす。


『ありがとな、童子くん』

『……こっちの台詞だよ』

◆栄螺鬼


 文字通り栄螺が化けた妖怪。長い年月を生きた栄螺は鬼と化し、月明りの下で美女に化けて踊り狂い、男を惑わし精気を吸い尽くして殺してしまうと言われている。特に一物が好みのようで、栄螺の癖に鮑で襲った男の息子を食い千切るのだという。

 正体はもちろん栄螺……ではなく、イモガイの一種。特に「タガヤサンミナシ」に近い種族で、猛毒の歯舌を矢のように発射する。これは卵の役割もあり、人間の男から奪い取った遺伝子で多様性を生みつつ、他の生物に撃ち込む事で寄生させる。人間の女を求めるのは共生している「牛鬼」の方であり、女性ホルモンによって孵化して、宿主を体内から食い尽くす。

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