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読みにくいかもしれません。
その時はごめんなさい。
午後6時33分。
霧島はパソコンを使った作業が一段落すると、ゆっくりとした足取りで食堂へ向かった。
着いてみると食堂は思っていた以上に広く、大勢の人が1度に食事が出来る位の数のテーブルやイスが並べられている。
そこには夫婦と思われる男女2人に学生と思われる若い男女の5人組、刑事の様な雰囲気の大柄な男が1人、それぞれ好きな所に座り楽しく会話したり騒いだりしながら食事をしていた。
霧島は料理の載ったトレイを受け取ると、比較的静かな場所へ行き、他の客に背を向けるように席についた。
その途端それまで他の友人と思われる少年達と談笑していた少女が声を潜めるようにして、「あの人怪しくない?」と少年達に向かって言い出した。
それを聞いていた少年達も霧島の事をヤクザだとかヤクの売人だとか聞こえよがしに次々と言い合い始めた。
他の客はそれ程霧島の事を気にする事はなく、夫婦と思われる男女は寄り添いながら互いに愛を囁き合っている。
それは遠く離れ、その間に少年達の声の壁があるにも拘らず、霧島の耳には一言一句漏らさず聞こえ、耳が良すぎるのも考えものだなと溜め息を漏らした。
更に、その妻と思われる女性の香水は香りがとてもきつく、鼻が良すぎるのも考えものだなと再び溜め息を漏らし、花粉の時期だったら良かったのになと苦笑した。
そんな中、1人の人間が霧島の方を見ながら何かを考え、誰にも気付かれないようにひっそりと不敵な笑みを浮かべていた。
霧島は今までにも幾度となく胡散臭い目で見られたり怪しい奴だと言われていたのでそういうのには慣れていたが、その中に混じって全く異質で異様な冷たく突き刺さる視線を感じ、背中に言いようのない悪寒がはしり慌てて振り返ると、それは既に消え去っていて、霧島は今のは何だったんだ?と小首をかしげ前へ向き直り、左の二の腕を軽く擦り自分を落ち着かせ食事を始めた。
するとそこへ、音も無くゆっくりと大柄な男が近付いてきて、
「少し宜しいでしょうか?」
と霧島の横の席へと腰を下ろした。
「何でしょう?」
食事の手を止め霧島が顔だけ向けて訊くと、男は愛想の良い笑顔で、
「あの暗号文どう思われました?」
と訊き返してきた。
「暗号文?……あぁ、部屋に置かれていたあれ……ですか?少し見ただけですが、それが何か?」
霧島がワインを1口飲み訊き返すと、男は何やら言いにくそうに頭を掻き、
「もし、興味がおありなら解読の協力をして頂こうかと思いまして。気になるじゃないですか、全ての暗号を解いた者に大いなる富と素晴らしき宝を……なんて書かれているんですから。かといって、自分こういった類の頭を妙に使う物は苦手でして。どうでしょう?頼めませんかね?」
と小声で言った。
ワイングラスをクルクルとくゆらせ聞いていた霧島が、
「私はあまり興味がありません。済みませんが他を当たって下さい」
と言い、ワインを飲んでいると、男は少し残念そうな顔をして、
「そうですか……あ!それから……」
と言い、突然真面目な顔になり、
「誰かが何やら企んでいるようですから気を付けた方が宜しいですよ」
と耳打ちしてきた。
男は素早く姿勢を戻すと、その顔は愛想の良い顔に戻っていて、霧島は少しの違和感を感じつつ、
「ご忠告どうも」
と言い、食事も早々に止め、紙ナプキンで口元を拭いその場を後にした。
残された男は腕組みをして何か考え、
「残念やな……ま、ええわ、何とかなるやろ」
と呟き諦めた様子で後ろにある自分の席へと戻った。
はじめましての方もそうでない方も読んで下さりありがとうございます。
大いなる富と素晴らしき宝!やはり気になります!(笑)
どんな物でしょうね?(笑)
では、次の作品でお会い?しましょう。
ここまで読んで下さりありがとうございました。