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読みにくいかもしれません。
その時はごめんなさい。
山中町駅前から出発して1時間程の時間が経とうとしていた。
窓の外に立ち込める霧はより一層濃くなり、視界はほぼ無いに等しく、運転席の田口はしっかりとハンドルを握り、前に目を凝らし慣れた手つきで車を運転している。
霧島がその横の助手席で窓の外を見ながら、半分独り言のつもりで、
「外、凄い霧ですね」
と言うと、田口は前を向いたまま、
「そうでしょう」
とこたえた。
「この辺りは特に酷く、霧が晴れてる事の方が珍しい位いつも霧が出てるんです。最近は更にその濃さが増した様で、道に迷ってしまう人が増えてしまったり、この山での車の運転が私にしか出来なくなってしまったりと、とても不便な事になってしまっているんです」
「そうなんですか、大変なんですね。……あ、済みません。運転中なのに」
「いえ、お気になさらないで下さい。この道の運転は慣れてますし、お客様の話し相手をするのも私の仕事ですから。それに、そろそろ到着する頃ですよ」
そう言われ、霧島は車の進む先に目を凝らせた。
しかし、濃い霧で視界が遮られており、霧島にはどれ程旅館に近付いてるのか皆目見当がつかない。
これも、長年この道を運転し続けている田口だからこそ分かるのだと考えた。
「もう見えますよ」
田口がそう言い数秒経った瞬間、それまで視界を遮っていた分厚い霧が一瞬にして目の前から消え去り、そこに古い木造の旅館が姿を現し、霧島は少し驚き思わず小さく口笛を吹いた。
が、目の前に現れた旅館はまるでホラー映画に出てきそうな外観で、そう考えた途端小さく身震いした。
車は旅館のすぐ前までゆっくり進むと、そこにある駐車スペースにピタリと収まる様に停り、車から降りた霧島は改めて旅館を正面から見た。
そして、その周りをぐるりと見回して、とても不思議な事に気が付いた。
旅館を囲む数十メートル以内の空間には全く霧は無く、その外から急に濃い霧の壁が聳え立つようにして先の景色を隠し、ここだけが別空間のようになっている。
そんな光景を見た霧島は、何かあるなと直感し、それと同時に嫌な予感を感じた。
きっとここで何か良くない事が起こる。
そう考え再び小さく身震いし、左手を色が変わる位力を込めて握り、その肘の上を右手で掴んで力を込め、小さく溜め息を漏らすと、
「最悪だ」
と、青くなり始めた顔で呟いた。
小さな震えが全身に回り、チッと舌打ちしていると、
「霧島様、外は寒いですから、中へどうぞ」
と、霧島の荷物を持ち先に旅館の前まで行っていた田口に呼ばれ、
「今行きます」
と少し力無く返事をし、霧島は直前に感じた嫌な予感を頭の中から振り払い、左腕から手を離し田口の所へ向かった。
はじめましての方もそうでない方も読んで下さりありがとうございます。
私ならこの旅館には泊まりたくないですね(笑)
では、次の作品でお会い?しましょう。
ここまで読んで下さりありがとうございました。