~ 生きる為に 喰う ~
部屋に戻っても 胸の中の モヤモヤは 消えなかった
その後は …
気分転換に 音楽を聴いたり
パソコンで お気に入りのサイトを覗いたり
何時も通り 気儘に過ごしていた
時計が 深夜を回り
そろそろ 寝ようか と ベッドに潜り込んだ
けれど 何故か 嫌な感じがして 眠るのが 怖いような …
それでも 時が過ぎて 何時の間にか ウトウトと眠り 始めていた
夢の中 で
僕 は 森の木より 背が高くなり
同じ 背丈の仲間5~6人と 何かを 追いかけていた
仲間が 何かを捕まえて
僕の手の中にも 何かがいて
手の中で その 何かが 暴れていると 感じた
それから 嬉しそうな 僕と 仲間達は
その場所を離れ 何処かへ向かった …
切り立った岩肌の 洞窟に仲間達と進み
仲間達 は 各々 手にした 何かを 見せ合った
解らない …
僕の 手の中にもある 何かは
真っ黒な影のような塊で ハッキリは 見えなかった
仲間達も 僕も ニヤニヤしながら …
その真っ黒な塊を バリッバリッ!と裂いた
ゴギッ ! メリッ ! ビチャッ!
音だけは 聞こえるけれど …
その後は 真っ黒になって
何をしているのか 解らなかった
「 えっ … 悲 鳴 …?」
微かに 女の人の 悲鳴のような 声が聴こえた 気がした
「嘘 だ … 人間 ? 女の人の悲鳴 ? 」
僕の心臓が ドクドクと大きく波を打つ
「 その 黒い塊の正体は 何なんだよ !」
僕は 叫んだけれど …
夢の中の 僕 と 仲間達の 笑い声が 頭の中にガンガンと 響くだけ…
怖くなって 慌てて 飛び起きて
カラカラの喉の渇きに 飲み物を飲もうと リビング へと向かった
冷蔵庫を開けて ガバガバと 冷えた麦茶をグラスに注ぎ 三杯飲み干したら
少し 気持ちが 落ちついた
部屋に戻ろうと 歩き出す僕の耳に 微かに誰かの囁きが 聴こえた
「黒い塊 … 何ナノカ 教エテヤロウカ ? クククッ!」
心臓が ドクンッと鳴り 慌てて 振り返った けれど
そこには 誰も居ない …
「気のせいかな 変な夢を見たから … 」
自分の部屋に戻り 「眠ろう」と思うけれど
あの 夢の続きを見そうで 怖い
その夜から 僕は眠れなくなった…
うっかり 眠りに落ちると 決まって あの夢を見るから
自分の部屋に 隠りっきりになり
少しずつ 微かだった 誰かの声が ハッキリと聴こえるようになった
「アノ黒イ塊ハ 動物サ … 」
眠れなくなってから 4日目の夜 …
突然 部屋に隠る 僕の目の前に 子豚が 現れた
子豚は ブヒブヒと 怒って 何か言っているように見えたけれど
僕には 何を言っているのか解らない…
丸々とした 子豚が 美味しそうで
捕まえようと 手を伸ばしたら 子豚は素早く逃げたので 追いかけたんだ
リビングを逃げ回る 美味しそうな子豚を 僕は 夢中で 捕まえた
子豚が 暴れて 僕に噛みついたから 子豚の鼻や顔を 何度も何度も 殴った …
子豚が グッタリとしたから あの夢みたいに引き裂こうとしたけれど
僕の力じゃ 無理だったから …
キッチンから包丁を持ってきて
あの夢みたいに 切り裂いた
バリッ ! ブシュッ !
真っ赤な 子豚の血が吹き出して
僕は 生唾をゴクンッと飲んだ
吹き上がる子豚の血は とても綺麗で
僕は 堪らず 子豚の血を啜った …
「美 味 し い … 何て 美味しいんだ!」
喉の渇きが スゥーっと消えて …
「モット ! モットダ !!」
何かの声に従うように 僕は 興奮しながら 子豚の肉に 噛みついた
「なんて 美味しい肉なんだ ! 」
子豚の生肉を 食べたけれど
今まで 食べた 何の肉よりも 柔らかくて …
僕 は 嬉しくなって 子豚を 綺麗に食べたんだ
流石に骨は食べられないから ゴミ袋に入れた
子豚を一匹 ペロリと 食べきり 満足している 僕 の 耳に 誰かが 囁いた
「旨 カ ッ タ カ ?」
気分の良い 僕 は 誰かに応えた
「うん! とても美味しかったよ 今まで食べた豚肉と全然違ったけれど 美味しかった ~ !」
誰かは 僕の声に応えた
「クックック ! ソリャァ良カッタ … 明日ハ雌鹿ガ現レル … ソイツハ モット 旨イゾ … コレデ … 眠レルナ … クククッ!」
誰かの 言葉 が 僕の躰に溶けて行くように 心地良く響いて
僕は カーペットや床に染み込んだ 子豚の血を綺麗に拭き取り
骨の入った ゴミ袋は 一旦 外の物置に入れた
誰かが 教えてくれたんだ …
「骨ハ 土ニ返スノダ … 次ノ 命ニ繋ゲルタメニ … クククッ!」
僕には 何かの言っている意味が 良く解ったよ
骨は土に返るから
土から生まれる 昆虫や 草花や樹木を育てるんだって言っているんだ
何かは 良い奴だ !
僕は 何かを不気味に感じていた 自分を恥ずかしく思った
でも 少し 躰が変だ
寒 い … 寒気ではなくて 躰の中が 氷みたいに 冷たくなっていると感じるんだ
子豚を追い駆けたから疲れたかな …
でも やっと 眠れる …
ベッドに潜り込むと 吸い込まれるように眠った
夢の中の 僕は
大きくて 逞しくて 今の僕とは 大違いだ
目に映る景色も 全然違って遠く迄 見渡せる
今日も 僕と仲間達は 何かを探している
仲間達の会話が 聞こえる
「アッチノ方ノ集落ハ ダメダナ … 毒ヲ塗ッタ囲イヲ作ッテタゼ! 」
「チビドモ ガ 生意気ニ !」
「ジャァ アノ集落ハ ドウダッタ?」
「ソウダナ ! アノ集落ハ マダ 行ッテナイヨナ!」
集落 ? チビドモ ? 何の事を言っているのか解らないけれど
夢の中の 僕は 解っているようで 微笑んで頷いていた …
仲間達と 暫く歩くと 小さな集落が見えて来た
仲間達と 一緒に 集落を襲う 僕は 笑っていた
逃げ惑う 小さな 動物達を 捕まえる
雄では無くて 雌 か 子を狙う
雄は筋張っていて 肉も固いから 雌か子が喰いやすい
「キャー! イヤァ―!! 離シテェ !!」
悲鳴 泣き声 小さな雄戦士達の応戦 …
全て 狩りには 付き物なんだ
狩りを終え 洞窟に戻って 獲物を喰う
何の不思議も無く 自然の摂理のままに …
そこに 躊躇もない
「あたり前の事なんだ ! そう あたり前の事」
目覚めると そこに …
旨そうな 雌鹿が立っていた