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DH  暗闇の手 崩壊の歴史(第三部)  作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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この世界の滅亡の果てに(7)

この世界の滅亡の果てに(7)


ブラックソードのリーダである結はすべての準備を早急に整えている最中だった。


「結、一日だけ俺に時間をくれないか」


背後から唐突に透が話しかけてきた。


「世界を巻き込んだ戦争の準備をしている私には・・・・」


透の事が知りたい・・・でも、そんな時間さえ今はない・・・その返事をしようと思った瞬間。


あねさん、うちには優秀な人材が揃ってる。一日ぐらいはこちらでどうにか出来ます。各国の隊長にもすでに計画は回っていますし、姉さんのすることはほぼ片付いてます」


ブラックソードのリーダーである北ノ崎結きたのざきゆいの片腕、菊之丞秀麻呂きくのじょうひでまろ・・名前が2つではなく、本名はマイク・カーター、アメリカ生まれのアメリカ育ちの元グリーンベレー所属の強者であり、結を父親のように見守ってきた保護者がわりでもある。


「マイク、半日だけ頼めるかな?」


結は両手を合わせて、マイクを見る。


「何日でもと言いたいところですが世界大戦を起こす前ですからね。1日で勘弁してください」


マイクの流暢な日本語はもう1人の片腕、斉藤誠と結から学んだものだった。


「それから、2周り以上年が離れているのにあねさんとか姉御あねごとかそろそろやめてほしいんだけど」


マイクの返答を無視して、透が直ぐ傍にいることの意識の方が強いらしい。


「ふぅーん、結さま、結殿、結お嬢様、結殿下、結の方さま、結ジャクソン、結ゲーツ、結ジョブズ」


自分の名前がおかしな方向に行こうとしていることに結が突っ込みを入れた。


「もう姉御でいい。それよりも結ジャクソンとか結ゲーツという発想がどこから涌いて出てきたのか、この村雨丸に教えてもらおうか、マイク」


「少し時代の古い有名人の名前を合成すれば、姉さんの名前にも箔が付くと思いまして」


「わらわに峰打ちされたいと申しておるのか、菊之丞秀麻呂とやら」


「その様なことは平に平にご勘弁を」


いつのまにか時代劇の茶番のようになっている流れを透が止めた。


「結、これが伝説の村雨丸なのか」


気付けば結の持っていた刀は透の手元に移動していた。


「己、そちは敵方の間者か」


それでも茶番を続ける結。


「己、曲者か」


マイクも結の茶番に乗っかる。


「残念、これは村正だね。しかし、よく手入れがされている」


透は村正をじっくりと見ているようだ。


「これ、本物の名刀だったの?」


結が驚く。


「名刀に間違いないと思う」


そういうと透は一降りしてみた。


「綺麗な姿勢。まるで武士もののふ


結の言葉に透の腰が抜けた。


「またか」


カイルが囁いた。



「あれだけの一降りが出来るのに」


結は透の姿に疑問が涌いてきた。


「それを結さんに透は話したいんじゃないのかな」


カイルでも説明は出来る。


しかし、透が自らの過去を自分以外の誰かに話す覚悟を邪魔することになる。


カイルは、嬉しくもあり、少しの不安も感じていた。


「大人なのに子供の真相も分かるということかな?」


結は透の目を見た。


「そうだね」


透はゆっくりと立ち上がると答えた。


「カリスマボーイはサムライボーイ!」


マイクは透の一降りにかなりの興奮ぶり。


「透を助けてやってほしい」


カイルは深々と頭を下げた。


「プライドの高そうな奇術師カイルさんでも頭を下げることがあるのね。私は透の妻として認められたということでおk?」


場の空気を読んで結は明るく真面目に答えたつもりだった。


「透をよろしくお願いします」


カイルは再度、深々と頭を下げた。


「透の事は妻になる私に任せなさい。でも、透の参謀であるあなたが透の一番の理解者でもあるので私は透にとっては二番目の理解者になれるように努力します」


「俺の命は透のものだ」


真っ直ぐな目で何故か結の方を見て、カイルは言った。


「僕の命もカイルのものだ」


透も何故か結のほうを見て、言った。


「もう・・・あんたらはホモか、ゲイか!結の命は結のものだと言うしかないじゃないの」


感動的な友情の場面を結は跡形もなかったように笑いに変えた。


これには理由があった。


ブラックソード内では弱みを見せたものはそれ相応の処罰が与えられる。


ブラックソードの一員ではない2人ではあるが結としてはブラックソードとしての雰囲気を変えられたくなかったのだ。


「結、これあげる」


透が結に手渡したものは串に刺された食べ物のようだ。


「これ何?」


不思議そうに結は聞いた。


「きなこ棒。しかも蜂蜜入りで栄養満点。それから既にみなさんにはお配りしてある」


ニッコリとしながら透は答えた。


「ふむふむ。この粉はきな粉で餅の様なお菓子が中身か」


解説をしながら結はふと自分の気付いた。


何故私がこんなことを言わなければいけないのか?


しかし、時、既に遅しだった。


「姉さん、いつものマイクさんとの茶番も最高ですが旦那様とも息が合ってますね」


「きな粉棒、もう10本頂いちゃいました」


「きな粉がもったいないので俺はコーヒーにも入れてみましたが悪くはなかったですよ」


「姉さん劇場は俺たちの癒しですが透さんのきな粉棒もやみつきになりそうです」


「姉さんの形見の刀はやはり名刀だったんですね」


周りの仲間達は作業の合間にやはり聞き耳を立てていたようだ。


「透と一日過ごしてきていいか」


結は作業中の仲間に聞こえるような大きな声で聞いた。


すると、マイクが集合を掛ける。


「みんな、作業の手を止めて、整列してくれ」


横に20・正方形に近い形から縦もおそらく同じく20ぐらいであろうか、今作業をしていたブラックソードのメンバーが綺麗に整列した。


「姉さんの子作りのために俺たちが頑張るときがやってきた。姉さんには今後のブラックソードを受け継ぐ、男を産んでいただきたいと俺は思っているが、お前らはどうだ」


「俺は姉さんのように可愛い女の子で姉さんのように凶暴ではなく病弱な子」


で俺がじいいちゃんがわりに大事に育てると言いたかったがそこまで言う前に村正の峰が首に触れていた。


「斉藤誠、今日からお前は誠ちゃんとみんなに呼んでもらいたいか。それとも、まこちゃんにするか。まーちゃんでいいか。まこちゃまにするかいやいや、いっそのこと斉藤ままごとにしろ」


透の手元にあった村正を瞬時に奪い、斎藤誠の首筋に峰側を当てた結に透は固まってしまった。


「姉さん、それはないですよ。まこちゃまでお願いします」


その言葉にブラックソードのメンバー達が大爆笑している。


「帰ってきていたのだな」


結の顔が緩む。


マイクが父親がわりなら誠は兄がわり。


「今回の仕事はヘマするかもしれないと思っていましたが無事に帰ってまいりました」


「お前は失敗しそうな仕事は引き受けないので心配はしていなかった」


「さすが姉さん、しかし、今回は仕事を終えた後にまっすぐ帰ってきて良かった」


きな粉棒をもぐもぐと食べながら、誠が喋っている。


「それでブラックソードの動きに反応を見せる国はあったか?」


「ありましたが常客扱いの待遇でしたよ。やはり姉さんの読みどおりでした」


「組織が大きくなればなるほど、組織の上層部の危機感は薄れ、自分の取り分と身分の保守しか見えなくなる。この世界の実権を長期間に渡って握っているWRならば、なおさらだ」


「ご注文どおり、即納入までをこの目で確かめて来ました」


「WRの関連会社以外からも購入しているが最新兵器の準備となるとあの会社からしか購入不可能だからね」


「先にスパイを中に入れておいて在庫確認をしてからその在庫分と隠し在庫分のすべて購入する発想が姉さんらしい」


「そのアイデアもまこちゃまの商談能力があっての戦略だ。頂ける者はすべて頂く。今回はしっかりと支払いするんだ。少しでも相手の戦力も削っておきたい」


「もう一つの方も落としておきました」


「そうか、お前は顔もそこそこ良いからな」


「しかし姉さん本当に大丈夫なんですか?相手はWR幹部の娘ですよ」


「だからだ。私の家族をあんな目に合わせた張本人にも苦しみを与える。私の体中の傷痕もそれを望んでいる」


「そうでした。すいません。俺も徹底的に手なづけます」


「それでいい。エドワード佐藤、私達の平穏を壊した男に地獄を見せてやる」


「結、少しいいか」


「何、もう時間の方は大丈夫だよ」


透はまだ身体の震えが治まらない。


「結さんの剣術にビビったのか、透」


カイルが笑っている。


「えっ、いつの話?」


「僕から村正を取って、斉藤さんに峰打ちする姿を見ていたら、固まってしまった」


「なるほど」


結はニヤリとした。


「いい、みんな注目!」


メンバーの視線が結に集まる。


「良く見ておくのよ」


そういうと、結は震えている透の身体を抱きしめて、透の唇に自分の唇を重ねた。


「結、何を」


透の身体の震えは治まったが女の子のように顔が赤面している。


「これで前田透は我、夫となった。これでこの男はブラックソードのリーダーとなった。ただし、夫となったものには本人の情報の全てを吐いてもらう責務がある。早速だが、これから明日までの一日、じっくりと尋問をする。お前らはWRとの戦争準備をしていてほしい」


ブラックソードのリーダ、北ノ崎結きたのざきゆいらしい、男前な結婚宣言だったがブラックソードのメンバーを始め、カイルも開いた口を閉じることを忘れたようにただただ呆然としていた。


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