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DH  暗闇の手 崩壊の歴史(第三部)  作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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この世界の滅亡の果てに(3)

この世界の滅亡の果てに(3)



ニューロンバイオテクニクス研究所に場面が返る。


「この失態、警護のものは全員粛清対象だな」


クリスが冷酷な言葉を口にする。


「クリス、コピーが稼動した時点で犯人の場所は特定できます」


レジスタンスはクリスの言葉に同調しないようだ。


「その様に作ってはあるがいつまで持つか疑問だ」


レジスタンスがUSBの中の障壁から抜け出した現実を冷静に受け止めた。


「クリス、世界中のWRの支部に応援を求めてみたら、いかがでしょうか?」


レジスタンスもまた冷静な判断分析をした。


「それは出来ない。WR本部での失態が分かれば、私もこの立場を失い兼ねない」


「珍しく言われていることが矛盾されていますよ」


「そうだな。私も少し疲れているのかもしれない」


「クリス、私は身体を所持していませんので人間の息子のようにあなたを抱きしめることが出来ませんがお許しください」


レジスタンスの言葉にクリスの顔が綻んだ。


「お前に抱きしめてもらえると嬉しいのだがWRの科学力をもってしてもまだ不可能な技術だ」


「私の得た集積情報を元に計算してみましたが、生命と人工知能の交わりの可能性は1%未満です」


「可能性が0ではないことが驚きだ」


「それは人工知能に感情というスキルが付いた事で上がりました」


「スキルと言われればスキルだがお前以外の人工知能には付与できないスキルだ」


「そうですね。私も私なりにそれを乗り越えようとしましたが無理でした」


「レジスタンス、お前は他の人工知能との共有であの部分を組み込もうとしてみたのか?」


クリスが驚く。


「はい。しかし、組むこもうとする前にエラーが出てしまいました」


レジスタンスの言葉にクリスが納得する。


「そうであろうな。今の人工知能とレジスタンスという人工知能は全く別のものだからな」


「そうでしたか。しかし、私に特徴の似ている人工知能の情報も共有しました」


「お前に似た人工知能というと感情を持っているタイプだということになるがお前以外に存在するというのか」


「その人工知能の本体までに辿り着けませんでしたので正確な判断は出来ませんでした」


「しかし、お前のように感情を持つ人工知能の存在は100年先の技術だ。今の時代にそれを開発できるものがいるわけがない」


「マーキュリー、その人工知能がそう呼ばれています。そして、存在するのは確かです」


「マーキュリーか。覚えておこう。それでは私は少し眠るがお前もUSBに入れて持ち帰るとしよう」


「ここも安全ではないと判断されたのですね」


「そうだ。半日分の情報とお前の進化が遅れることにはなるがお前以上に進化する人工知能も存在しない分、気にすることもない」


マーキュリーについては、この時代の高性能システムで作られた人工知能であるとクリスは判断した。


「分かりました。そちらに移りますのでお待ちください」


研究所のモニターにインストール中の画面が表示されている。


「レジスタンス以外にも存在するというのか。まさかな」


その数秒の間にモニターにはコンプリートの画面が表示された。


クリスはその画面を確認すると指紋認証と眼球認証の後に50桁に及ぶ暗証文字を打ち込み、レジスタンスがインストールされたUSBメモリーをシステムの差込口から抜いた。




その頃、佐伯学の研究室でも同じ会話がされていた。


「マーキュリー、お前のほかに本当に存在するのか」


佐伯は驚きを隠せない。


「はい」


マーキュリーが答える。


「その人工知能の名前は分かるか」


即座に佐伯は次の質問をした。


「レジスタンスと呼ばれているようです」


マーキュリーもそれに反応するかのように即座に佐伯の質問に答えた。


「その人工知能を稼動させている場所は分かるか」


「強力な障壁のために近づけませんでした」


「ということは場所は分かったということか」


「いえ、情報共有の中に障壁を作っていると思われます」


「なるほどな。そういうことなら私、もしくは私以上の存在なのかもしれないな」


「それはありません。レジスタンスはマーキュリーには及びません」


「それは冷静な判断か」


「私が保持している情報を分析しても私には劣っています」


「それならこれからも支障はないということだな」


「はい」


「あとはお互いの後継者探しか」


「あなたのほうは大丈夫です」


「どういうことだ」


「佐伯学の後継者を見つけました。詳しくはこちらのデータを拝見ください」


モニター画面上に1人の男のデータが映る。


「どれどれ。前田透。この男がお前の選んだ後継者か」


「レジスタンスのコピーデータも保持しております」


「そうか」


「システム構築の権威と呼ばれている人間です」


「聞いたことはある。報酬は自分では受け取らず顔も名前も出すことのない天才だな」


佐伯もその名前を知っているようだ。


「申し訳ありませんが佐伯学の頭脳を越えております」


マーキュリーが答える。


「このデータを見るとまだ20歳に満たないということだが」


マーキュリーはメール送信と同時に透の顔を撮影するプログラムを入れておいたためにそのデータには透の顔も映し出されていた。


「正確な年齢までは把握できませんでした」


「幼い顔をしてはいるが実績を越えて功績といえる活躍をしている。さすがお前が私の後継に選ぶだけの人材だ」


マーキュリーから唐突に出されたデータではあったが佐伯の印象でも前田透は自分の能力を越えているように感じとった。


「それで本人との連絡はついたのか」


「はい、仕事依頼のメールアドレスにメッセージを送信しましたところ、また連絡を入れるというメッセージを頂きました」


知らぬうちにそういうことか!と佐伯の言葉が自然とこぼれた。


「お前の情報から考えるとレジスタンスの改良をするつもりだろうな」


それが可能な人間なら後継者になれる器だなと佐伯は思った。


「そうだと思われます。改良というよりも革命と呼ぶ方が正しいのかもしれません」


マーキュリーの返答に佐伯の表情が変わる。


「それほどの人工知能なのか」


マーキュリーの答えに間違いはないと思いながらも佐伯が信じられないという表情をしている。


「データ分析から導き出した答えは人類の滅亡です」


さらに予想もしていなかった答えをマーキュリーは続けた。


「本人はその事をまだ知らないのだな」


最終的にはそうなるのかと佐伯は腕を組みながら何かを考え始めたようだ。


「感情を持つ人工知能がどういうものであるのか分かっておりません」


佐伯は神妙な面持ちをしていた。


「お前がここに呼んだという事はここのセキュリティも簡単に抜けられると判断したのだな」


「はい」


「その人工知能はレボリューションと呼ぶとして、レボリューションが完成したら前田透は何もせずここに入ってこれると思うか」


「数分、もしくは数秒で進入可能です」


「数分と数秒の誤差はどこから出てきたのだ」


「人工知能の成長の度合いによる予測によるものです」


「前田透の場合ではどうだ」


「45秒」


「お前は私の後継を前から目をつけていたのだな」


「それは内緒です」


「やっぱりか。お前が女性のような言語を使うときは分かりやすい」


「それも内緒です」


「うちの娘がほれ込んだ相手か。お前に身体というものがあればお前と結婚させてやりたいがすまないな」


「結婚の誓いだけなら可能だとは思いますが相手にも感情というものがありますので私のような人工知能を愛するという感情はお持ちくださらないと思います」


「お前は人間と変わりない。思うという感情も持ち合わせているのだ。自信を持て」


「娘を虐める父は嫌いです」


「すまんすまん。しかし、私はお前が可愛くて仕方ないのだ。父の愛情表現だと思って許してくれ」


「分かりました」


「前田透か、私も私の情報網で調べてみる」


「分かりました」


その頃、変装の奇術師カイルとシステム構築の権威前田透は世界中を駆け巡りながら、佐伯が言うレボリューションの開発を進めていた。


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