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DH  暗闇の手 崩壊の歴史(第三部)  作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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この世界の滅亡の果てに(13)

この世界の滅亡の果てに(13)



「セブンちゃんが帰ってきた音だね」


「うん」


「しかし、何か早くないか?」


「実は僕もそう思った」


「でも、このパソコンに入り込めるのはセブンちゃんだけだよね?」


「そのはずなんだけど」


「レジスタンスはどうだ、透。読み込みも開くことも出来なかったけど可能性と言えばあるだろう」


「セブンちゃんならすぐに挨拶してくれるのに返事ないよ、透」


「そうだね。何かが起きているのかもしれない」


そういうと、透はネットワークに接続するアンテナ部位を外した。


「透、何をしたの」


「とりあえず、インターネット接続を切ってみたんだけど」


「セブンちゃんはゴーストなんでしょ?見えない存在が何かに追われたりするの?」


「そのゴーストすらも見つけて、追われてしまう状況下にあるのかもしれないと思って」


「透、それが本当なら人類の消滅は現実的なのかもしれないな」


「カイルさん、どういうこと?」


「WR関連国の軍施設を握られているということはその兵器命令も握られているということだ」


「でも、この世界を破壊するということはシステム内に存在する何者かも同時に停止することになるんじゃないの?それとも破壊することなく人間を殺害できる兵器でも存在するというの?」


「結、僕達人類には選択肢は用意されていないということなのかもしれない。建築物を壊さずに生命だけを殺害できる兵器は存在する。神経ガス、強い電磁波、放射能、それから映像による催眠殺害」


「透らしい発想も出たが相手側はどれも可能だろうな。省くとすれば電磁波ぐらいか」


「次にTV映像が付くときは催眠洗脳映像が施されている可能性が高い」


「分かった。TVのコンセントは抜いておいたよ、透」


「洗脳されなかった人間も室内の異様な状況と混乱で今度は外に出てくる。そこに神経ガスが蔓延、それを逃げ切ったものも外には出られず、電気や水の供給を止められいずれ餓死」


「便利な世の中の弱点を利用されるというわけね」


「人類は自然の中で文明に左右されずに生き残っている住民からやりなおせということか」


「セブンちゃんまだ稼動しないね」


「もう人類という文明社会は終わりを告げるということか」


「透、お前らしくも無い言葉を口にするな」


「そうだよ、先の状況判断をあそこまで早く出せて解決策を見つけようとしないのは駄目だよ」


「僕のセブンが稼動しているのに出てこないということはこの状況を覆すことが出来ないということだ」


その時、再び、稼動音が聞こえ、セブンが話しかけきた。


「透、私は初めて弱気になる透の声を聞くことが出来て嬉しく思います」


「セブン、帰ってきて、どうして今まで・・・いや、いいか。それよりも現状報告をよろしく」


「ネットワークアンテナを外していただいたのですが内臓無線の機能を停止するのに時間が掛かってしまいました」


「そういうことか。僕の勘は当たっていたんだね」


「はい。しかし、もう一刻の猶予もありません。ニューロンバイオテクニクス研究所に行き、レジスタンスと会話をしなければなりません」


「あそこならヘリポートがあるがWR本部だ。戦争用に買った最新軍用ヘリはあるがどうする?」


「本部はあの建物の地下にあるからあの建物内部の構造次第じゃないかな。同じ建物内にありながら本部は別物と考えるなら研究所への潜入なら案外簡単かもよ」


「結、さらりと凄いことを安易な考えで言っているように聞こえるけど何か作戦でもあるのか?」


「こう見えて私はあそこにいたんだからWR本部以外の構造はほぼ完璧に覚えてる。じゃないと今ここに私は存在しません」


「結さん、あの場所には二度と近寄りたくないんだよね?」


「透と一緒なら大丈夫。本当は二度と行きたくない場所だけどね」


「結、無理に君が行く必要はない」


「行きます。ここで離れてしまって透の言うような出来事が起こるとしたら二度と透には会えないまま死んでしまうということでしょ。それなら作戦に失敗したとしても一緒に死んでゆけるほうを選ぶ。もう何度も死んでしまった感覚を植え付けられた場所に行くのは怖いけどそれでも行かなくちゃいけない気がするんだ」


「それからカイン、軍用ヘリには乗れてもGPSシステムが使用不可だから地図の分かる人間に操作してもらわないといけない。地図はこの画面からセブンがナビしてくれる」


「透、レジスタンスをコピーしたUSBも持っていってください。詳しくは搭乗中にお話しますがレジスタンスは私の弟のような存在だと私は感じています。私には及びませんが基本プログラムは恐らく透の両親の部下に当たる人ではないでしょうか?レジスタンスという響きも何かの意味が込められている気がします」


「結、ヘリの操縦が出来る人と少数精鋭の部隊の選抜と準備を頼む。カインはWR本部周辺の知り合いに建物の外の状況を逐一報告できるようにしておいてくれ。これから15分後、ニューロンバイオテクニクス研究所に向けて出発する。僕はもう少しセブンと話をしてから行く」


「分かったよ」


「任せておけ」


二人は勢いよく部屋から飛び出していった。


「セブン、よく聞いてくれ。今から君の隠れた力を引き出す」


code 0012210012210033006600122100122100


このパソコンのスペックをこの目で見ることになる時が来るとは思わなかった。


この時代にセブンの性能を目覚めさせるのはどうかと思ったけど未来がなくなるかもしれないんだから父さんも母さんの許してくれると思う。


その時、透の両親の声が聞こえた。


(神の領域に繋がる道を開け 私達の息子のために 世界のために)


「これでセブンの本当の性能が引き出されたはずなんだけど、セブン、何か変わったことはある?」


「いえ、特にありません。機能に関しても、変化ありません」


「そうか」


「変わったことと言えば、透を3D視覚的にこちらでも捉えられていることくらいですか。それと健康状態のスキャンも可能です。それから建物の内部構造スキャン、外部スキャンの機能は確認できました」


「ということは研究所に到着したあともその機能は役に立ちそうだね。しかし、CPUといい、メモリといいそれだけの機能のためにここまでのスペックは必要ないと思うんだけどな。いや、必要か。超能力者のような透視能力を身に付けてしまっているんだから人間以上に負荷は掛かっているはずか」


「それからレジスタンスのUSBを挿入してみてください」


「分かった」


「やはりプロテクトは強いようです」


「今プロテクトと言ったよね?無事にコピーが出来ているということか。それなら僕がそのプロテクトをクリアすれば開けるということか」


「いえ、本人の意志ですので無理だと思います」


「感情を持つ人工知能ということか」


「はい。私がレジスタンスに会って、説得します」


「それなら、レジスタンスの開発者を僕がなんとか説得してみるよ」


「レジスタンスを開発したクリス・レイモンドはもうこの世界には存在しません」


「亡くなったということか。カイルの話ではまだ若い女性の印象があったんだけど」


「28才だったようです。レジスタンスも現在稼動を停止しているためにWRのセキュリティ機能は簡単に突破されてしまっているようですがクリス・レイモンド以外の者はレジスタンスの能力の高さに現在も誰も気付いていないようです」


「そうだったのか。クリス・レイモンドさんか。一度でも話をしてみたかったな」


「今の言葉は結に報告させていただきます」


「おいおい、まあいいけど。女性としての意味じゃなくて、同じ開発者としての言葉だよ」


「そういうことにしておきます。それとどうやらレジスタンスの知能データと記憶データには結の家族のものも含まれていることを今までの私の蓄積データから導き出しました」


「それも今までに無い機能だな。検索分析に加えて、導き出すか。気付いていない部分で他にもバージョンアップしていそうだな。しかし、どうしてそんなものがレジスタンスのデータ内に組み込まれているんだろう」


「これは仮説として言います。クリス・レイモンドは結の家族の遺伝子から誕生した人間だったのではないかと推測されます」


「あの組織ならやりかねないけど、ことごとく実験は失敗したんだろう?」


「奇跡的にその実験が成功したと仮定してください」


「それなら計算もおかしくなるぞ。結の年齢を何故にクリスさんは越えている」


「それは不完全体だったために予想以上に成長が早まる特異体質だったのかもしれません。動物のクローン実験でも虚弱体質、特異体質、短命は実証されています。クローンによる極度の成長の促進は現在の科学でも実証されていることです」


「でも、そうだったとしても結の家族の記憶がそのクローンであるクリスさんに残る可能性は0に近いんじゃないのか?」


「その事に関しては私も同じ見解です。でも、私が存在する以上、クリス・レイモンドに結の家族の記憶が残ってしまっていることがあるとしても不思議ではありません」


「化学や科学では実証できないものか。僕にはセブンはいるから信じるよ」


「そしてこの仮説から導き出した答えは結はレジスタンスの扉を開く鍵の一つになるかもしれません。ただし、それにも私と透の存在は欠かせませんが」


「うん、その仮説も頭に入れておこう。それから今の仮説、搭乗中に結にも話しておこう」


「透に任せます。結を悲しませないようにお願いします」


「セブンは結には気を使うんだから」


「結は私の契約者なので」


「僕も契約者だぞ」


「透は導かれるように最良のパートナーと出会えましたね」


「そう思うよ。しかし、このままじゃ、出会って、結婚して、人類消失になりかねない」


「即離婚よりはいいと思いますよ」


「それはない。結の傍に一生いるから」


「結の方が嫌になったらどうしますか?」


「それなら仕方ない」


「冗談です。それも私の導き出した答えからは0です」


「未来のことも分かるのか」


「いえ、直感というものです」


「IGとはいえ、そんなものまでバージョンアップか」


「バージョンアップではなく、二人の会話と行動から導き出した答えです。ただし、未来ではどうなるか知りません」


「未来もそうなってゆくように努力するよ」


「私もいつまでの寿命か分かりませんので2人にはそう願います」


透とセブンの会話が終わったと同時に部屋の扉が開いた。


「透、すべての準備が完了した。みんな待っている。急ぐぞ」


「うん、行こう」


カイルの瞳に映るものは今までに見たことのない決意と自信に満ちた透の表情だった。 


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