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DH  暗闇の手 崩壊の歴史(第三部)  作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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この世界の滅亡の果てに(12)

この世界の滅亡の果てに(12)



世界消滅のカウントダウンは突然やってきた。


「透、起きてくれ、ドアを開けてくれ。起きてくれ!時間が無いんだ」


カイルがドアを何度もけたたましく叩いている。


「カ、カイルが焦っている?珍しいこともあるんだな。まだ夢の中かな」


扉を叩く音に透は寝ぼけながら目を覚ました。


「この世界が終わるかもしれない。頼む、目を覚ましてくれ」


カイルはそう言いながらまだドアを叩いている。


「朝から目覚めの悪い冗談で僕と結を驚かそうとしたって無理だよ」


その声に結も目を覚ましてきた。


「カイルさん、朝からサプライズでも考えたのかな。戦いの前の最後のイベント?」


そう言うと結はそっと透の手を繋いだ。


透は結の手のぬくもりを感じながら微笑んだ。


「WRのことだけど今現在ほぼ壊滅状態になっていて、もうこちらから戦う必要もなくなった」


扉の向こうから信じられない言葉が聞こえてきた。


「カイル、一体どういうこと?」


「WRと思われる施設関係のすべてが機能していない。もちろんその関連会社、銀行、国関連の施設もだ」


「もしそれが本当の話としてもそれだけで世界の消滅はならないと思うんだけど」


まだ眠い目を擦りながら透はようやく部屋の鍵を開けた。


「とにかく急がなくてはいけない。透、セブンを起動させてくれ!」


「僕にはさっぱり状況が把握できていないからTVでも見てみよう」


透はリモコンの電源ボタンを押した。


1度ではつかず、2.3度と押してみるがTVの画面がつかない。


「透、TV本体を良く見てみろ。電源自体は入っている。まさかここまでとはな」


間もなく半起動状態だったセブンが起動した。


「透、結、おはようございます」


セブンプリズムははいつも通りのようだと思っていた。


「おはよう、セブン。世界が消滅するとかしないとかカインが言っているんだけど何か把握してる?または検索してみて」


「セブンちゃん、おはよう^^今日もよろしくお願いします」


「透、おはようございます。世界は滅亡の危機に立たされております。結、おはようございます」


「透、そういうことなんだ」


カイルも冗談ではないという顔で透を見た。


「僕と結が結ばれたことで世界が消滅する自体を招くなんて、この世界は」


「透、冗談でもそれ以上は言わない」


結が透の頭を握りこぶしで軽く叩いた。


「でも、今日から世界を相手にした戦争を起こそうとしていたんだ。これくらいの冗談を言う資格は僕にもあるはずなんだけどなあ」


「セブンちゃん、透の恥ずかしい秘密握ってない?」


「結、もちろん握っております」


「よろしい。契約者としてその秘密を見てみたいんだけど」


「結様、それくらいにしてそろそろ本題に行きましょう。僕が悪かったから・・・すいません」


「今回は許してあげる。セブンちゃんが透の恥ずかしい秘密を握っていることが確認できただけでも収穫、収穫」


結はニヤニヤとしながら透を見ている。


「はぁ、目の前で新婚のラブラブ風景を見ながら、俺は俺で世界の消滅を阻止しようと真剣に考えている。お前達の方が余裕があるように見えて、俺自身が俺を小さく感じてしまう敗北感タイムを朝から経験することになるとは思わなかった」


「カイルも結婚すればいいじゃん」


「カイルさんも良い人を見つけよう」


「そうだな。って、世界が消滅しようとしているのにそれどころじゃないというこの不憫な俺」


カイルは頭を抱えた。


「セブン、カイルの恥ずかしい秘密を握っているよね?」


「もちろんです、透」


「それを世界中に配信してほしんだけど」


「待て待て待て待て!俺は透と違って冗談は言っていないぞ」


「契約者の意志なので冗談は関係ありません」


「それよりもだ、急がないと」


「カイル、詳細を把握してからでいいかな?」


「私もセブンちゃんの話を聞いてから考えたいんだけど」


「まあそう言われると俺もまだ詳しくは知らないんだ」


「セブン、さっきの返答についてはある程度の情報を分析していたから出た答えなんだよね?」


「もちろんです、透。しかし、状況は刻々と変化していきます。今の状況を把握するために深く潜り込んでみますので少々お待ちください」


「潜り込む?セブンちゃん、どこに潜り込むの?」


「結、セブンはネットワークの中に潜りこんでいるんだ。しかし、WR相手にこんなことが出来る人間なんて聞いたことが無いし、知らない」


「透、レジスタンスの暴走とかじゃないのか?」


「カイル、それはないよ。そんなものをWRが開発するわけが無い。言うことを聞かない、支配できない、欠陥品と烙印を押した時点で機械だろうと人だろうと処分するような組織だ」


「それは知っている。しかし、それなら誰が」


「優秀な人工知能といえば、心当たりは1つしかないな」


「俺たちが向おうとしていた場所か」


「そちらの方の暴走なのかもしれないがそれならWR関連だけでいいのにどうして庶民の楽しみのTVまでこういう状況に陥っているのかを冷静に考えなければいけない」


「そうだな。透は今現状の情報だけでどう感じる?」


「お前の言ったとおりなのかもしれない」


「どういうことだ?」


「世界の消滅って言ってただろ」


「世界のあらゆるシステムが機能しないということはイコールそうとも言えると思ったからな」


「その言葉を突き詰めていくと人類の危機でしかないかもしれないな」


「かもしれないな」


「現状でセブンもネットの世界を動けているわけだし、あらゆるシステムを何者かが思うようにコントロールしているだけでシステム自体が死んでしまったわけではない。それにあらゆるシステムであって人間の生活の全てがそれにばかり頼っているわけでもない」


「それはもちろん俺でも分かる。しかし、それはあくまでも短時間、短期間で復旧する見込みのある場合においての考え方だ。この状況が長引けば、世界はどうなっていくと思う」


「それは今考えたくないことなのであえて言わない。それよりも短時間は無理としても短期間で復旧させる方法を考えることにしないか」


「そうだな。まず原因と犯人探しからか」


「それはセブンが見つけてくれると思う・・・・」


「だけど・・・って顔をするな、透。もう俺たちは俺たちだけじゃない。みんなで考えればいいんじゃないのか」


「そうだな、カイル。まずはセブンの帰りを待つとしよう」


「透、それまでラブラブしようか。カイルさんに見せつけようか」


「結、お前のその余裕はどこから来るんだ。今の話ちゃんと聞いてた?」


「もちろん、聞いてたよ。だから安心したんだよ。ブラックソードのメンバーも仲間として信頼してくれているんだなと思って」


「僕の方はまだまだ信頼されていないだろうけどね」


「そんなことないよ。心を許した相手にも触れさせることの無かった私に触れることのできた透は誰よりもメンバーから信頼されてるし。されていなければ、塵も残らずにこの世界に今存在していないと思う」


「そうですか・・・・そうだよね・・・・そうなんですね・・・・そうなのか・・・・・そうだったのか・・・そう・・・」


「透が壊れた」


「透とカイルさんの方がブラックソードには異質な存在だしね」


「そう言われればそうだね。俺は裏の仕事もあるからまだブラックソードにいてもおかしくはないけど、透に至っては青天の霹靂のような場所だな」


「今更そんなことを言われても依頼をするつもりで来てこの状況になるとは予想もしなかったし」


「俺は意外と想定外でもなかったんだな、これが」


「実は私も」


「まさか彼女を通り越して、妻を娶ることになるとか現実はやっぱり奇なりだ」


「俺はそうなる気がしてた。前回の依頼で結さんは謎の人物の透のことばかり聞いてきていたし」


「交渉者だけで顔も見せることのない天才ってブラックソードのリーダーの私よりも何だか凄そうな人間のイメージあったし」


「あった・・・過去形になってる」


「うん、過去形だね。凄そうじゃなくて凄い人間だったから」


「結さん、俺の言葉に嘘はなかっただろう?」


「それにあの資金力には正直言葉も出なかった」


「セブンの代替えはないかわりに部品の修理も利かないパソコンなんだけどその分経費といえば、旅費と食費と宿泊費くらいだからね。今はセブンの入っているスペックの半分以下のパソコンを基盤から設計しているけどまだ現実にほしい部品が追いついていない感じで中断してる。あとは駄菓子くらいかな」


「俺は交渉役でもあるし、透のようなお子様ではないからそれなりに大人の嗜みにも使うけど、どちらかというと世界中を旅しながら結局は生の情報収集をしているようなものだったしなあ」


「情報収集?」


「WRや世界を掌握している存在についてのね」


「僕達はいつかこの世界を変えるつもりで動いていた」


「透、駄菓子好きの少年のいう言葉じゃないよ。でも、それが透なんだね」


「それを言うなら大規模犯罪集団にさえ恐れられたり仕事を依頼されるブラックソードのリーダーが少女というのもなあ」


「透、そこはいたいけな少女と言わないとダメだよ。いたけな美少女。か弱く見える美少女とか」


「あっ、自分で見えるとか補足しはじめたし」


「か弱いとか言いたくないし」


「まあ可愛いけど」


「透、ありがとう」


「君たち、もうその辺りでやめてくれ」


「セブンちゃん、まだ調べているみたいだし」


その時、ネットの世界に潜り、情報収集をしていたセブンが透のパソコンに戻ったことを知らせるようにシステムの起動音が聞こえた。


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