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DH  暗闇の手 崩壊の歴史(第三部)  作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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この世界の滅亡の果てに(11)

この世界の滅亡の果てに(11)



前田透と北ノ崎結は二人きりの部屋でお互いに沈黙した時間を過ごしていた。


透はというと、自身のノートパソコンを片手に何かを必死に調べている。


「うーん、やっぱりか。しかし、どうするかな」


その作業の様子を伺いながらどこで会話を始めればいいかタイミングを計っている結。


「そろそろこちらも動き出すしかないか」


モニターを見ながら独り言を言っている透。


「透さん、あの今いいかな?」


結が作業の合間を見計らったようだ。


「結、どうしたの?透さんって」


二人っきりになり結のほうは緊張しているようだが透は意識していないようだ。


「だって、二人きりだよ」


「二人きりでも結となら安心だし」


「私もそうだけど」


結の顔は赤面している。


「結、何か、顔が赤くない?」


「少し緊張しているんだよ、どうして透は大丈夫なの?」


「ごめん、ごめん。緊張はもう取れた」


「いつ?」


「よろしくお願いします宣言したときに」


「私はさらに緊張しているんだけど、どうしたらいい」


「君はもう僕の妻なんだよね。それなら僕の秘密を教えてあげるよ」


透は真剣な顔で結をじっくりと見た。


「僕の秘密?」


結は透に見つめられてさらに身体が硬直している。


「これは僕の作成した神の知性セブンプリズムと読んでいるIntelligence of God、通称IGだよ。セブンと読んでいる。セブン、結に挨拶して」


「北ノ崎結、初めまして。透からの申請により、これからはあなたも私の契約者と認定されました。どうぞよろしくお願いします」


すると画面上に綺麗な虹の景色が浮かび上がり、結に挨拶をした。


「セブンちゃん、よろしく・・でいいのかな?それよりも契約って何?」


「あなたは透とともに人類の消滅を防ぐことを約束してくれる人間であるということです」


「人類の消滅?この世界は滅亡しそうなの?」


結にはセブンプリズムの言っていることを理解出来なかった。


「遠く近い未来、細かな日時まではまだ分からない。でも、人類の消滅は近づいている。それは確実なんだ」


「透、あなたは一体何者なの?」


「俺はこの世界ではghostと呼ばれているらしいけど、生身のただの人間で今は結の夫」


「それは私でも知っている情報だよ」


「そのghostの由来だけど、その仕事をすべて行ってくれているのがセブンなんだよ」


「でも、そのセブンちゃんは透が作ったんだよね?」


「それはそうなんだけど、ちょっと待ってね」


そういうと透はノートパソコンの裏側を開けた。


「これは一体どういうこと?」


結はそのパソコンの裏側を見て、その内部構造に驚いているようだ。


「これは亡くなった両親が残してくれたものなんだ」


「パソコンは詳しくはないけど、メモリー交換はしたことあるけど、これどこにメモリーを乗せるの?」


「メモリを乗せるところはない。基盤のこの部分に2T(2000GB)のメモリーが乗っている。熱量もほぼない近未来のメモリというよりもこのマザーボード本体がこの世界に1つだけしか存在しないだろうと思う」


「メモリーがこの大きさで基盤に抵抗のように乗ってるって信じられない」


「このセブンを稼動させるために命を懸けて作り、命を懸けて守った形見の品だからね」


「でも、この表面というか見た目は何世代か前のノートパソコンだよね?」


「うん、セブンを守る為、当時仕様のままにしてある」


「ああ、なるほど。でも、本当にこの時代にこんなものが存在するなんて」


「僕も初めは夢の中にでもいるのかと思ったよ。このセブンが自己紹介を始めるまでは」


「それに人工知能ではなくて神の知性だっけ、IGって何なの?」


「その前に自分の両親のことも含めて結に話しておかなくてはならないことがある」


「それは私も関係していることかな?」


「多分、そうなのかもしれないし、違うのかもしれない」


「透でも確実ではないことを話したいときがあるんだね」


「とても大切なことなんだ」


「うん、分かった」


「セブン、僕の両親と結の家族について話をしてくれ。そして、共通することがあれば、それも付け加えてくれ」


「分かりました」


「どういうこと?」


結は不思議そうな顔をしている。


「それでは始めます。前田透也まえだゆきや前田文香まえだふみか、この二人が前田透の両親です。この二人は今から10年前WRという組織の手によって暗殺されています。暗殺理由は分かっておりませんがIGである私が関係していると推測されます。そして北ノ崎浩きたのざきひろしと北ノ崎春子きたのざきはるこ、この二人が北ノ崎結の両親です。この二人はWRの人体実験により亡くなっています。なお、補足しますと結を除く

北ノ崎一族はすべて人体実験により亡くなっています」


「やっぱりそうだったんだ。それで親戚関係に辿り着いても誰もいないし、建物すらなかったのか。しかし、セブンさんはどうしてそこまで分かるの?」


「それは私がIGであるからです」


「良く分からないけど凄い人なんだね」


「人ではありませんし、命も持っておりません。私が保持しているものは神の知性のみです」


「神の知性か。言葉どおりなら世界も支配できそうな感じだね」


「神は世界を支配しません。あくまでも見守る、時には手を差し伸べる役目をします」


「本当に神様みたいだね」


「結、そろそろ話の続きをしても宜しいでしょうか?」


「うん」


「私の基礎プログラムは前田夫妻作成のWR出身なのです。正確にはニューロンバイオテクニクス研究所になります」


「透のお父さんとお母さんはWRの研究者だったの?」


「うん、そうだったみたい」


「北ノ崎家は優秀な遺伝子の家系であると当時の最新人工知能が分析判断したようです」


「WRだけに当時っていっても賢いんだろうな」


「私の侵入を拒んでいるレジスタンスの劣化版と呼んでもいいかもしれません」


「なるほど、それでどうして結の一族は選ばれた?」


「それをこれから説明するところですが透が問いかけてきたのでお答えしました」


「いや、ごめんごめん。続けてくれ」


「それでは。神に選ばれた人種ではないかという結論に達したようです。そしてその選ばれた人種を研究し、自分達もその人種になろうという試みがされていたようです」


「それで結以外は全員実験の末、殺されてしまったと」


「自分達が神になろうとしたの?その為に私の家族や親戚は殺されてしまったの?」


「そのようです。しかし、時を同じく、私を作成している人間達がいました」


「それが俺の両親か。神の知性」


「はい。私は基礎プログラムは同時期に既に完成しておりましたが前田夫妻は隠し通してきました」


「それは何故なの?」


「北ノ崎一族の末路を私から知ってしまったからです。私は息子の誕生日プレゼントにと当時の最新ノートパソコンとして透に送られました」


「そうだったな。自動認識機能、自動解析機能、自動電源機能、本物の僕と確認するまで電源さえ入らなかったね、セブンは。電源ボタンを押しても動作しなくて故障しているのかと思ったよ」


「私を手にするものは透でない場合は故障品としてゴミに出され分解されていたかもしれません」


「セブンが僕と認識しても当時は僕の方がゴミに出している可能性もあったぞ。子供にとって会話するパソコンって気味が悪いし」


「そうでしたね。前田夫妻の最後のメッセージ動画を見ていただけなければ私はゴミに出されていましたね」


「間違いなく。それかリサイクルショップに持っていって現金化して駄菓子に化けていたな」


「未成年ではリサイクルショップでの買取を行ってくれません」


「残念」


「透、私と駄菓子とどっちが大事ですか?」


「もちろん駄菓子」


「まあいいでしょう。契約者が二人になりましたので私は結に大事にしていただきます」


「セブン、僕の冗談をそのまま受け取るような知性がないわけないよな」


「ばれましたか。しかし、前田夫妻のように二人の契約者に恵まれる時が来るとは思いませんでした」


「勢いというか運命というか必然だったというかこんな偶然があるんだな」


「色々な言葉で表現されていますが端的にいえば結に出会えて良かったということですね、透」


「セブン、お前が端的に言うな!」


「良かった。透はさっきから作業に打ち込んでいて言葉も掛けてくれないし、こっちも見てくれないから私のことは10人や100人いる透の女の1人でしかないのかと思ってた」


「待て待て、僕をカイルのように言うな。というかカイルの女性関係については僕も知らないけど、モテそうだからなあ」


「カイルさんはBLでしょ?」


「BL?]


「カイルさんは透のことを命を懸けて守るんだから」


「いやいや、昔好きな人は居たんだけど病気でなくなって以来そういう話をしなくなっただけで女好きであることに変わりはないと思うよ」


「私も冗談で言ってみたけど、透は真面目に答えてくれるから安心する」


「結に自分を隠そうとは思ってないからなあ」


「カイルさんもそういうタイプだよね?」


「僕もカイルも人は選んでる。選んだ人は信じてる。裏切られてもそれは変わらない。でも、学習はする。そして、成長する。何だか人工知能みたいな行動だな」


「人工知能って、コンピュータ上で人の知性を形にするものなんでしょう?透が人工知能になってどうするの、可笑しい」


「結が言われることは正論ですね。透、あなたはそういうところは両親の賢さを受け継いでいないようです」


「セブンまでそういうことを言うなよ」


「でも、私はそんな透をカイルさんに任されたからね。セブンちゃんにも任されたのかな?」


「前田透をよろしくお願いします、契約者結」


「了解しました、セブンちゃん」


「セブンの紹介も済んで依頼された仕事もあとはセブンはやってくれるとして、時間は出来たんだけどこれからどうする?」


「とりあえず眠りたい」


「寝る?」


「うん、透、一緒に寝よう」


「一緒にって、Hな方の意味、普通の寝る?」


「普通の方だけど、透はHな方を先に提案してくるということはそっちの意味で考えていたの?」


「まあもう夫だし、そっちもあるのかなと」


「最低・・・・最悪・・・・変態・・・・・高額な慰謝料を貰って離婚に突き進もうかな」


「すいません、すいません、もうHな方は提案しません。普通に寝るのでお許しを」


「やっぱり、冗談が分からないんだね。夫婦なんだからその提案もありなんだけど、ここ最近の忙しさでブラックソードのメンバーが見えていないところで戦いの前にしっかりと休息を取りたかったの」


「そうだったんだ。結、気が付かなくて、ごめん」


「いや、私が勝手に動いているだけでメンバーのみんなはいつでも休んでくださいよって言ってはくれるんだけど相手がWRだから、心配なんだ」


「大丈夫、セブンがいるからその辺りの分析判断は心配することは無い。ただ、さっきもWRから刺客が送られて来ていたみたいだからここもそろそろ移動するしかない」


「怪しまれたの?各支部へ連絡しないといけない」


「刺客はただ1人を暗殺する為に送られたみたいなので大丈夫」


「ああ、なるほど、そっちの方か。それなら本人で何とかすると思う」


「僕もそう思う」


「でも、そういうことが分かっていたんだったらこれからはその時に話してね」


「そうだった・・・ごめん。これからは直ぐに結にも話す」


「よろしい。それで刺客の名前は?」


「その方面は僕には分からないけどカイルが何とかしてくれたらしい」


「カイルさん、只者じゃないよね」


「名前を持たないもしくは多くの名前を持っている家系らしいけど詳しくは聞いてない」


「ああ、なるほど、忍びならどんなに親しい人にも言えないかもね」


「結は忍びに詳しいの?」


「まあそれなりには。メンバーの中にはいないけどカイルさんが入ってくれればいいな」


「今回の事件でメンバーに認められたらしい。全滅も間逃れたということで」


「透、全然安心じゃない・・・・・全滅って」


結が透を睨んでいる。


「いや、カイルがいるからどうにかしてくれると思っていたし」


「どうにかって・・・・」


「カイルはどんな時も1人で二人を守ってきたからね」


「カイルさんと透のこと?」


「うん。表側の暗殺者くらいではピンチとは言わない」


「表側って・・・・」


「仕事依頼の検索できる人たちの事だよ。今回は最上位ランクの人だったみたいだけどね」


「あれだけの人数がいて誰も対処できなかったのか、ブラックソードは」


「誰もが自分を強いと思っている。そしてその強者が集まっている。その安心感や無敵感みたいなものがブラックソードの強みでも弱みでもあるみたいだね。攻めてこられると思っていれば守備や防御も徹底しているだろうしどこかで刺客の気配も引っかかる可能性も上がる。完璧ではないかもしれないけど、カイルが入ったからその弱い部分も修正されるだろうし、考えなくていい部分になるし、元から考えていない集団だし、この事件からメンバー本人達がそれぞれに考えるから結は何も言わなくていいと思うよ」


「分かった」


「それに結の夫になったということはブラックソードのリーダーが僕とか言っていたけど、結がリーダーのままでよろしく。セブンも見せたけど僕には僕の役割があるから陰でブラックソードを支えたいと思ってる」


「うん、ありがとう。まあ、そのうち、跡継ぎも作ろうね」


「そうだね・・って今ありがとうの後・・・」


「生きて帰れたらの話になるけど」


「そうだね。それじゃ、寝ようか」


「夫は腕枕をしなければならない」


「はい?」


「夫は妻を泣かせてはいけない」


「分かりました、結様」


「様はいらない」


「分かったよ、結」


「それでいい」


「どっちが夫なんだか」


「透の腕、意外と太いね」


「プログラムの打ち込みとカイルの稽古相手してるからいつの間にかこんな腕に」


「それで私に気配を悟られなかったのか」


「あれは自然と」


「やっぱりすぐに宣言して良かった。私の目に狂いはない」


「結、そろそろ寝よう」


「初夜なのにもう寝るの?もう少し会話してから」


「いや、寝ようと提案したの結だから」


「しょうがないので寝る」


「おやすみ」


「おやすみなさい」


結と透はWRとの戦いの前にゆっくりと平穏に満ちた最後の休息を取った。


しかし、二人が目が覚ましたとき、事態は予想外の展開を見せることになる。


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