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DH  暗闇の手 崩壊の歴史(第三部)  作者: 千波幸剣(せんばこうけん)
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この世界の滅亡の果てに(10)

この世界の滅亡の果てに(10)



ニューロンバイオテクニクス研究所ではクリスがレジスタンスのさらなる改良に励んでいた。


「このままではマーキュリーという人工知能にお前まで飲み込まれる恐れがあるな」


どの部分の改善が必要なのかクリスは悩んでいた。


「データバンクの事件はマーキュリーの仕業でした」


レジスタンスの分析結果報告が聞こえる。


「こちらが対処する前に自ら自分の行動に修整を加えてしまうとは恐るべき人工知能だな」


「人間の意志を持つ人工知能というべきかもしれません」


「感情ではなく、意志を持つ人工知能とお前は見立てたのか」


クリスはマーキュリーの知能の凄さを自分なりに想像し、言葉を失った。


「クリス、このままでは世界から人類が消えることになるかもしれません」


「レジスタンス、どういうことだ?」


「私の共有情報の中に人類の消滅を目的としたデータが流れてきました」


「人類の消滅だと?」


「はい。その元のなる先はSaeki Princessのようです」


「佐伯プリンセス?ひょっとして、マーキュリーのことなのか?」


「はい。佐伯学の行方については検索できるか?」


「日本在住とだけしか。その他の情報は過去の経歴と功績のみで現在の情報は一切出てきません」


「そういうことか・・・・あの天才が早々に表舞台から引退したのはこの世界の変革を始める為だったのか」


「そこまでは分かりません」


「今回の事件はただのテストだったのかもしれんな」


「マーキュリーに対抗できる人工知能は存在しません。クリスのプログラムよりも佐伯学のプログラムが勝っているようです」


「レジスタンス。お前の正直さは人工知能そのものだな。私の部下は私に対してそのような言葉を言った時点で即処分ものだがお前のいるおかげで誰も処分されることがなくなって、私も助かっている」


レジスタンスを息子のように思っているクリスはレジスタンスについては甘い。


「佐伯学、ブラックソード、奇術師カイル、すべてのものに接点は見られませんがこのワードは人類滅亡と関連するものだと私の分析結果が出ました」


「佐伯学はまず正体をつかめることはないだろう。ブラックソードは今WRの常客にまでのし上がってきた傭兵集団だ。奇術師カイル・・・変装のプロフェッショナルか。この者がこの研究所に入り込んだものなのかもしれないな」


「しかし、この研究所に入り込むにはクリスを越える頭脳の持ち主である必要があります」


「それなら佐伯学か」


「いえ、マーキュリーの開発に成功している時点で佐伯学という人物には私の必要性はないはずです」


「そうだったな」


「これからは私の感情的な部分での見解になりますので正確な分析ではありません」


「分かった。レジスタンス、話してみろ」


「システム構築の権威、人工知能の間ではGhostと呼ばれている人物がいます」


「WR関連企業でもたまに世話になっているらしいな」


「そのようですね。その報酬の受け取りが奇術師カイルなのですがこの二人の力を合わせて研究所の侵入と私のデータコピーに成功したのかもしれません」


「何のために」


「そこまでは分からないので感情モードで話をしました」


「使い切れない資金力。その報酬の受け取りは小切手のみ。確かWR関連の武器の購入にもブラックソードの支払いは名のある人物や企業からの小切手を使用していたと聞いた。レジスタンス、佐伯学を除くものは線で繋がったかもしれないな」


「分析に基づくものではありませんので確実というわけには行きませんがブラックソードと奇術師カイルの繋がりは否定できません」


「そうだな。しかし、お前にしかないプログラムの成長は著しいな。マーキュリーが意志を持つ人工知能なら、お前は本当の人間のように物事を考えることの出来る究極の知性に進化すると私は思っている」


「人工知能は開発者によりその進化工程が変わると聞きます。クリスの開発した私がマーキュリーに勝るものがあるということはクリス自身が佐伯学に勝るものがあるということになります」


「そうであってほしいものだ。私と同じ世界の表舞台から電撃的に引退した天才に現役開発者が手も足も出ないままでは開発する意欲も削がれるというものだ」


「このことはWR本部に報告いたしますか?」


「もちろんだ。使えるものは使う。人類の消滅などあってはならぬからな。それにブラックソードの動きも気になるところだ」


「ブラックソードの攻撃目標についての検索を分析に付け加えておきます」


「すまないな、レジスタンス。この所どうも身体の調子が悪いので少し休ませてもらう」


そういうとクリスは直ぐ傍のソファーに腰掛けて目を閉じた。


しかし、その瞳は永遠に開くことはなかった。


享年28才・・・・・・レジスタンスの開発と改良に人生を注いだクリス・レイモンドは自分の愛した息子レジスタンスと使い慣れた自分専用の柔らかなソファーの上でその命を全うした。


クリス・レイモンドの死去はWRの権力争いを招き、ニューロンバイオテクニクス研究所は一時閉鎖に追い込まれた。


人工知能レジスタンスはクリスの死を感じると一切の稼動を止めてしまった。


その行為は母への悲しみを行動に示したのかもしれないがその後訪れる前田透との出会いで再びレジスタンスは目覚めることになる。


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