はじまり
「ねえ、あのうわさってホントかなぁ?」
「え、もしかして……」
「イリュージョンランドのあのうわさのこと?」
「そうそう! イリュージョンランド!」
「はあ~、イリュージョンランド遊びに行きたい~!」
「行きたい! あそこ行くと、ホント古い映画の中に迷いこんだような気分になっちゃうも~ん!」
「木でできた観覧車やメリーゴーランドとか~」
「路面電車みたいなジェットコースターとか~、ロマンチックな大きなお城、幻影城……とかぁ――……、ほうっ」
「本当に存在する国みたいだよねぇ」
「って、こら。うわさの話!」
「ごめんごめ」
「ランドの話になると、つい、いろいろ話しちゃうよね。てへっ」
「で、うわさの話だけど……」
「ん……でも、あながちズレちゃいないって」
「え?」
「だって、そのうわさって、こうでしょ」
『幻影城の中には本物のお姫様が住んでいる』
「ま、そうなんだよね……」
「ホントかなあ……」
「ホントだったとして、どこのお姫様?」
「どこか小国のお姫様とかじゃない?」
「でもなんでわざわざ日本に?」
「本物のお姫様の住んでるお城かあ……」
「イリュージョンランド側が、テーマパークの楽しさを増やすために作り出した嘘かもしれないけどね」
「あん、そんなの夢がない!」
「だからー、夢がある話だからあやしいのよ!」
「でもー」
「あ、先生来た!」
「えーっ、やば、ランドセル! ちょっと通して」「あいたっ」「ごめん!」「いいよ、通って」「うん」
「はい、みなさん席について! 帰りの会を始めます」
「もう、みんなー、席に着いて! なにそっちで集まって話してるのー」
「あわわ、学級委員おこってる、おこってる」
「せっかく学年で一番優秀なクラスって言われてるのに……」
「はいはい、学級委員のキサちゃんが優秀なおかげだよ」
「……」
「あ、ちょっと、もう、照れなくていいから~。早く、きさちゃんも座って座って」
「あっ……ご、ごめんなさい」