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零話 愛して――
「愛してる」
どうやらこの言葉は、今のこの世界には重すぎるらしい。
心をときめかせ、震える声で絞り出した言葉は拒絶された。思わず涙がこぼれそうだったが、それでも必死に堪えた。きっと、この思いは鬱陶しいだけだろうから。
しかしながら、生きる目的は失ってしまった。
「ほんと、嫌になっちゃうよ」
自分が綺麗な顔つきでないことは分かっていた。人によっては、醜いだとか、残念と表現するだろう。それでも、この胸に秘めた思いは本気だった。
この約二十年の生涯の中で人を愛したのは初めてだった。愛と恋の違いなど今は分からないが、それでも彼女を害するつもりなど無かった。しかし、見通しが甘かったようだ。
明日はクラスメートからの冷ややかな視線が待っていることだろう。元より無言の拒絶というやつで、居場所など無いに等しかったが、今度は明確な悪意や害意を感じることになる。分かりきった事だ。
もういっそ、異世界にでも行きたい。