00 稀代の大魔術師
初めて魔法が出てくるものを書くことにしたので、最後まで続けられるかわかりませんが、よろしくお願いします。
赤いクロスがかかった丸テーブル。
その周りにある、4つの木の椅子。
そして、蜂蜜色の長い髪にエメラルドの瞳を持った、整った顔立ちの美女が座っている、他の椅子より少し豪華な革張りの椅子。
美女は簡素なドレスの上に羽織っていたカーディガンの胸ポケットからトランプを出した。赤と白の幾何学模様が刻まれている面を上にして、トランプをテーブルに散りばめる。
開いた左手をテーブルの上にかざす。ぼうっと、青い、淡い光が手の下に生まれた。
口紅で血のように紅く塗った唇から低く、よく通る声が漏れる。
「立塔」
その瞬間、トランプたちがひとりでに動きだし、ばたりばたりと中央によって来ると、彼女は段々左手を上にあげていく。
それに引き上げられるかのように、トランプたちは塔の形を成しながら、上に伸びていった。
精密で、複雑な塔が、トランプによって形成された。
美女は、しばらくその塔を眺めていたが、やがて右手を塔の先端のすぐ横に持ってきて、
「斬!」
そう言って左右で真っ二つに切るように手を動かした。
がしゃり、と塔が左右に分かれて倒れた。
その美女の名は、グレリジア・リノ・ヴェンドバードと言った。
このミステリア王国で、いやこの世界で知らない者はいない、稀代の大魔術師である。
奇術のような魔術から、一国家の滅亡まで、どんなことでもやり遂げてしまう、ある意味では女神の、ある意味では悪魔の魔術師である。敵に回せば最悪、味方であれば明らかに有利になる。
しかし彼女は他人に興味はないし、争い事など眼中にもない。
美しいグレリジアの気を引こうと頑張った男たちは数知れないが、そんな馬鹿みたいな『恋愛ごと』にも興味はない。
彼女の気を引くものはただ一つ。
謎である。