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幕間

「……ふむ」


 温泉旅行の記憶を辿り終えたルーシーは目をそっと開けた。


「……しかし、あの温泉旅行は本当に色々あったな」


 ルーシーは苦笑しつつ、少し温くなった紅茶を啜った。


「川遊び、温泉、宴会、そしてバトルにレヴィアタン……三日間のうちにイベント凝縮されまくりだったな」


 そこまで言うと、ルーシーは大きな溜息をついた。


「……しかし、あの女将にも困ったものだな。流石の私でもあんなサプライズを仕掛けられるとは思ってもみなかったぞ……ショックビッグマックシェイクってやつだ」


 ルーシーはさらに大きな溜息を一つついた後、頭を抱えた。


「……でもでも、以前の私は絶対にそんな事しなかったのに、どうしてあの時私はあんなにパニクって、そしてあんな事をしてしまったんだ? 風呂での鉢合わせも前にあった事なのに、あれは一体どういう事だ……いや、別に嫌じゃないけどさ。

 しかしこれではまるで、私が彼の事を意識しているようではないか……いやいや、確かに彼は興味の尽きず、それでいて面白い人間だが……うっわー、今思い出してみてもあれは恥ずいわー! まさにエロゲーでありがちなシチュエーションじゃないか! 本当にあの時の私はどうしてあんな事してしまったんだろうか! 馬鹿か私は! 馬ッ鹿じゃないのか!? またはアホか! あーチキショー! 頭がフットーしそうだよおっっ!」


 ルーシーは一人で叫びつつ表情をコロコロ変え――まさに百面相を展開しながら、一人机に頭をバンバン激しく叩きつけていた。

 その姿は端から見るとウケる事間違いなしだったが、正直言って、流血しながらの百面相は怖い。

 しばらく机に頭を叩きつけていたルーシーだったが、やがてピタリと動きを止めた。机にひっつけたままの額からは激しく叩きつけたせいか、血がダラダラと流れ、玩具の噴水の如くピューピューと噴き出ていた。


「……あー、私は何をやっているんだ。大丈夫、大丈夫。私は冷静だ、ルーシー・ヴェルトールだ。本日も晴天だ」


 そして頭を起こした後、首を数度横へ振った。首を振る度に、額から噴き出ていた血が部屋のあちこちへと飛び散ったが、特に気にならなかった。


「……いや、逆に考えるんだ、私よ。滅多にできない、それこそエロゲーのような刺激的な体験ができたと考えるべきだな、うん。あれはあれで悪くない体験だったしな。その点では女将と統哉に感謝しなくてはならないな」


 切り替えの早さは堕天使一だと自負しているルーシー。「堕天使一の切り換えの速さ」の称号は伊達ではない(ただしその称号を思いついたのはたった今だが)。

 額からの出血が止まり、傷が治癒したのを確かめた後、ルーシーは感慨深そうに呟いた。


「……しかし、本当に変わったよな、みんなも、彼も。そして、私も。全てが変わりだしたのはやはり、彼と出会ってからだな。本当に、彼は興味の尽きない不思議な人間だ。実に面白い……さてさて、次の写真はーっと……」


 楽しそうな様子でクスリと笑い、ルーシーは再びアルバムをめくり始めた。しばらくの間は温泉旅行の最中に撮った写真が続いていたが、やがてそれは夏祭りで撮った写真へと変わっていった。

 それを見たルーシーの脳裏に、今度はその時の記憶がふわりと蘇ってきた。


「……そういえば、旅行から帰ってきた後は夏祭りに行ったんだったっけな。どれ、今度はその時の事を思い出してみるとしようか」


 そう呟き、ルーシーは再び天井を仰ぎ見て目を閉じた。そして、旅行から帰ってきた後の記憶を想起する。

 瞼の裏に夏の風物詩である、夏祭りの記憶が鮮烈に蘇ってくる。


 あれは確か、温泉ワクワク大決戦な二泊三日の旅行から帰ってきた翌日の事だ――。

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