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雷オヤジ

 さやかの家は厳しいというわけではなかったが、警察署長の娘としてのプライドを養うため、合気道、剣道、柔道からはじまって、ピアノ、ヴァイオリン、フルート、コーラス、進学校。

 スケジュールどおりにこなすことが日課だった。

 そんな時、さやかは『車輪の下』の主人公ハンスに同情するのだった。

「車輪の下? ヘッセじゃないか。俺も好きだよ」

 恋の始まりもヘッセだっけ、とさやかは回想する。

 ヨハンとの出会いは図書館だった。

 彼と会う回数を重ねるうち、彼に惹かれていく自分に気づいた。

 そしてヨハンが家賃滞納でアパートを追い出され、困っていると聞き、さやかは父を拝み倒してようやく、同居させてもらったが、ここで間違いが生じてしまった。

 ヨハンはうっかり、さやかと一晩過ごしたのである。

「パパとのお約束、第一条! 男を部屋に入れないと誓ったではないか!」

 おとうさま、雷を落とし、真っ黒焦げにされたヨハンは無理やり、さやかの婚約者にされ、就職先も自分の仕事場にと決めてしまったのだった。

「まったく、ふるくせえオヤジだぜ」

 とさやか。

 普段学校ではスケ番だったので、タバコは吸うし、酒もがぶ飲みした。

「おい、またきてるぜ、あのイケメン。さやかのこと狙ってるんだ」

 さやかはそのイケメン男を見つけてビールを吹き出した。

「なにやってんだ、ヨハンのやつ!」

「ああ、なんだ。彼氏かヨ。隅におけねーな」

「ま、まってて」

 さやかはよろよろと立ち上がり、ヨハンにつっかかった。

「どういうつもり? 学校には来ないでよ」

「すまん、すまん。だってさぁ、早めに言っておこうと思って。あのブルーダイヤなんだけど」

「・・・・・・うん」

 ヨハンはポケットから紙切れを出し、さやかに渡した。

「あのダイヤ、ルミナール反応がでるかもしれない・・・・・・」

「えっ」

 さやかは眉をひそめながら尋ねた。

「知ってるよな。血痕反応だ」

「も、もちろん。でもなんでそんな」

「さあ。いずれにしても、オークションで何かつかみたいな。俺もいやな予感してきた。あのダイヤは、ある事件の重要な手がかりになるかもしれない・・・・・・」

 さやかはいつになく引き締まった顔のヨハンに惚れ直し、ぽうっとなっていた。

「どうかした?」

「ううん。仕事、今日は遅いのかなと」

「だろうね、調べなきゃならないことが山積みだし! でもちゃんと門限は守るから」

 おとうさまは、ヨハンが浮気しないようにと十二時を門限に決めてしまったのである。

 さやかに触れさせない、しかも浮気禁止で門限つきという最悪なルールにしばられたヨハン。

 それでも愛しているといってくれるが、いったい、いつまで彼の愛情は続く(もつ)のだろう、とさやかは不安だった。

「あんたもあの人も、苦労人だねえ」

 ともだちの英理子が、さやかの肩をたたいた。

「えりちゃ〜ん」

 おいおいと泣き出すさやか。

 早く家を出たいと、心に誓っていた。      

 だめですねぇ。

 こんなお約束オヤジは・・・・・・。

 浮気三昧で愛人作り放題ってのも困るんですが。

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