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8.ロマンスグレーで囁いて‏

おお

勇者カルバン・クライン

無敵の英雄

聖なる天使の命を受け

魔王ガンドルを打ち倒し

我らに平和をもたらせり



 馬車がコンストン広場に差し掛かると、いつもの流行り歌が聞こえてきたわ。聞きあきた歌だけど、あの辻歌手は良い声してるわ、深くて延びがあって朗々としてて。


「良い声ね~」


 あ、リンフェイもそう思う?


「だよね~どんな人かな? 今度昼休みにでも聞きに来ようよ」


「良いわね。お弁当でも持ってこようか」


 リンフェイがニコニコとプランを立ててくれるから、私も楽しみになったわ。


「今聞きに行っちゃ駄目なの?」


 私の向かい側には、ちっちゃい頃からの定番でジェブの膝の上にちょこんと座ってるサニー。しっかり抱っこされてて普通に座席に座るより安全なんだけど。その変態の膝が安全圏になるのはサニーならではよね。


 カルバンの友達が、これを『イソギンチャクに護られたクマノミ』とか言ってたっけ。最凶な相手を自分の最強の守りにしちゃう豪胆な魚らしいわ。


 おかげでサニーの真上にジェブの緩んだ顔があるけど、これは無視。


「今は伯爵様のお屋敷に皆で行くでしょ? だから行けないのよ」


 私達『女神の食卓亭』の全員は、ジェブが乗って来た豪華な伯爵家の馬車に乗って、現在移動中なの。


 理由は伯爵様に呼ばれたからよ。


 エルトンと買い出しに行ったマリンピアが郵便局に手紙を取りに行って、伯爵様からの招待状を受け取ったんですって。


 ほら、田舎と違って、オルブランの街では、私書箱できちんと管理されるから盗難や紛失が無くて安心なのよ。定期的に取りに行かないとならないけど、生まれたときからこうだから気にならないしね。


 で、そこに書いてあったのが、舞踏会に私達全員が王女様に呼ばれてる事。一昨日ジェブに報せに行かせた事、ドレスは用意してあるから、衣装合わせを今日したいんでジェブを迎えに行かせたって事。


 一昨日にジェブが来たのはその先触れだったらしいわ。結局私に迫っただけだったけどね。


 帰って来たときにマリンピアが異様に怒って居た筈よね、今日だって私だけを誘って、皆も呼ばれてるなんて一言もなかったんだから。


 阿呆が袋叩きにされたのは当然よ。


 んで、お昼のデートに行ってたリンフェイが戻るのを待って、お店は臨時休業の札下げて出てきたって訳。


 慌ただしいわ、阿呆のおかげで。


 ちょっと前の騒動を思い出してムカついてると、サニーが首を傾げてる。


 表情が乏しいけど、姉の私には解るわ、変なのって目が言ってる。


「どうかしたの?」


「伯爵のおじさん、あそこ」


 そう言って窓の外を指差す。


 そこに見えてるのは広場と中央の噴水。そしてその回りに憩う街の人達と、それを当てにした大道芸人達、の中のさっきから良い声で歌っている歌手の人。ロマンスグレーがお日様に映えてなかなか渋目のハンサ……ええええ?!


「レニ姉。あれマジ伯爵様じゃないか?」


 エルトンが呆れた声で言う。そりゃ呆れるわよね。


「間違いない父上だ」


 何だが疲れた声でジェブが言う。多分あんたが今感じている脱力感は、私達がいつもあんたに感じていることよ。


「何やってんだ、あの道楽親父」


 マリンピア、お父さんにも辛辣よね。


「や~ん素敵」


 リンフェイは相変わらず面食い。心に刻んで置こう。


 そして私は、深~くため息。


「伯爵様の声なんて、よくわかったな、サニー」


 エルトンがサニーに聞くと、サニーはこくんと頷いたわ。


「よく、歌わせた」


 もらったんじゃなくさせたのね。


 そういえば、伯爵様もサニーの下僕その二だっけ。我が妹ながら大物だわ。


「とにかく、父上も拾って行かないと」


 珍しく真面目な顔で、ジェブが馭者さんに指示をだして、まだ名調子で歌っている伯爵様を拾う為に、近くの車寄せへ向かわせたの。


 伯爵様って、相変わらずワケわかんない人だわ。


( *´ー`)クマノミ。映画のファイティング・ニモっすね

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