4.友よ!
おお
勇者カルバン・クライン
無敵の英雄
魔王ガンドルを打ち倒し
我らに平和をもたらせり
なんだか、遠くで変な歌が聞こえる。
「知らないのか?」
前に来たときには聞いた事ない。
「そりゃ、魔王のおっさん倒してやる前だったし」
ああ、それで流行ってるのか。
「そゆこと」
ふぅん。
「他人事かよ」
だって俺一人がした訳じゃねぇし。
「しょうがないさ。カルバン・クラインしか名乗れなかったんだから」
厄介だよ。
「すまねぇな」
もう、いいさ。
「お前さんのそういうとこ、大好きだよ」
「ははは……」
腹がいてえ。
「声出すな。考えるだけで俺には聞こえるんだからな。体も動かすな。腹の傷は、まだ止血しただけでくっついてないんだ。目も開けるなよ。角膜に着けた薬が流れるからな」
くっそ…あの野郎。不意討ちしやがって。
「脇腹かなり掻っ捌かれたけど腹膜は無事だ。全身打撲に足と肋三本骨折。油虫並の生命力があるお前なら大丈夫さ」
うるせぇ。聞いてるだけで痛い。
「お前ならすぐに治る。奇跡の復活記録更新さ」
へえへえ。これで五回目か?
「ああ、俺と遭った時だろ、フェンリム狼の群れに突っ込んだときだろ? アブアラスカの遺跡が崩れた時に、初めての中ボス……グイトネルだっけ? やっこさんと単独決闘した時と、魔王のおっさんの一人前の親衛隊長だな。あいつマジで魔王より強かったんじゃね?」
ああ、間違いなく強かった。あれで脳味噌あったら魔王になれたんじゃねえか?
「馬鹿でよかったよなぁ」
ほんとになぁ。
「……すまん」
何が?
「今の俺じゃあ、傷も塞げない」
気にすんなよ。俺らのために無理した結果だろう? 元々俺にはお前のでも、あんまり効かねぇし。
「でも、よりによってこんな時にだからな。柄にもなく悔やんじまうのさ」
それを言うなら、俺も油断し過ぎてたのさ。
「何にせよ。今は休めよ」
だな。
「俺は居るから」
なぁ。
「なに?」
何でお前、消えねぇの?
「うわ、ひっでぇ。苦楽を共にした仲間に、そりゃねぇんじゃないかい?」
いや、お前。魔王のおっさんに受けた致命傷で死にそうだから、あの世にちょっくら行ってくるとか言ってなかったか?
「ああ~んだほい。おかげさまで今はうごけねぇよ。だからお前と居るんじゃん」
俺は居るからってそういう意味かよ。
「まぁな」
情けねぇなぁ。野郎二人で寝っころがって、労りあいかよ。
「むさいが諦めろ。俺が動けるようになったら、レイニーちゃんを連れてきてやるよ」
バーローあいつは巻き込むな。
「はいはい冗談っすよ。トパが今頃泣いてるだろうから、アイツに知らせて連れてくるさ」
ああ、あいつなら頼りになる。
「泣き虫だけどな」
裏表の無い、イイヤツさ。
「それにしても、あのパレードはおかしかったな」
ああ、傑作だった。あいつ人が良すぎるぜ。しばらくあれでからかえるな。
「さぁ、もう寝ろよ」
そうだな。結構疲れた。
「お休み」
おやすみ……
|_・)誰やこいつ。
え?
ばればれ?
こりゃ失礼。