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39.北の男と西の女


「こげなめんこい娘ッコだちがいるさげって、カルバンはおらだちを『女神の食卓亭』に連れて来ねがったんだなや」


 すみません、通訳ください。


「ほんまいけずやで、あの男」


 カイエンタ弁とカメハールン弁の相互攻撃!


 なんとなく、カルバンが私たちを勇者さんたちに会わせなかった文句を、言ってる気がするわ。


「そうでしょう? (わたくし)だって、もっと早くに『女神の食卓亭』のみんなとお友達になりたかったんですのよ」


 お姫、いろんな意味で凄いわ。そしてありがとう。


 魔物の襲撃を撃破して、私たちはまた『女神の食卓亭』で会議中(雑談?)です。


 新たに加わったのは、北の魔法王国から駆け付けてくれたコクトー御夫妻。なんと旦那様は十七歳、奥様は十八歳!


 若っ!


 はぁ、びっくり。


 魔王を倒した後、二人はそれぞれの故郷に報告する為にカルバンたちと別れたんですって。


 で、二人でカイエンタに新居構えて、カサリアさんの懐妊も判って、幸せいっぱいで暮らしていたそうなんだけど。


 さすがは天才魔導士。


 魔王の首の事は判っていたらしいわ。ただ、カサリアさんが安定期に入るまで動けなかったんだって。


 何で? もちろん聞いたわ。そしたらクラリスクさん『リアが腹ぼてなのに、離れられるはずねぇべや』だって。


 アリィさんの通訳に因れば、妊娠中の奥さんを置いて、一人で出てくる訳にはいかないっていう事。凄い愛妻家よね。


 サラサラの銀髪に、眼鏡の奥で金色の目が優しいの。しかもかなり美形!


 点数高いわよ!


 難点は今のところ何言ってるのかよくわからない、っていう事くらいかな?


 まぁ、些細よね。


 奥さんのカサリアさんも可愛いのよ。


 豪快で明るくて、強い!


 お姫の親友なんだって。


 カメハールンの王様から魔王討伐をたった一人で任命された、天才格闘家なのよ。


 特徴的な明るい橙色の髪に焦げ茶の目がクリってしてて可愛いの。


 お姫に拠ると料理上手。


 今度カメハールン料理教えて貰おうっと。


「くっそぉ!」


 あ、凄い声。


 厨房から怒声が聞こえるのは、ターグさんが氷室のお菓子を確認中だから。


 あの分だと、お菓子は壊滅ね……やれやれ。


 実はね。魔王の襲撃があったんでもう街中では危険だから、警備のしっかりしたお城の離宮に移る事になったの。


 侍女さんとかは無しで、気楽にしていいよ、ってお姫は言ってくれてるわ。


 クラリスクさんやカサリアさんも詰めてくれるって話。もちろんトパさんもね。


 だから、私たちは手分けして移動の用意してるの。


 着替えや身の回りのものを纏めてる間に、アリィさんとターグさんが厨房の片付けと食品の始末をしてくれてるのよ。


 でも、無事だったら離宮で食べようって言ってた冷たいお菓子は、諦めた方が良いみたい。


「レニ。サニーのも終わったよ」


 ジェブがサニーの大きな荷物を抱えてやってきたわ。


 あの大きさからすると、きっと枕も入ってるわね。この間は疲れてたからお城で寝れたけど、サニーは枕が変わると寝れなくなるのよね。


 今使ってる枕も、子供の頃からずっと同じなの。


 色々修繕してるけどね。物持ちが良いって言うべきかな?


「おまたせ~」


「忘れ物はないか?」


 リンフェルとマリンピアも降りてきたわ。


「サニーは完璧」


 荷造り担当のジェブが応えるのは当たり前。ほんとに、あんたの妹は誰? って聞きたくなるわ。


「私も大丈夫よ。後は厨房の方だけ」


「こっちも完了。使える物はエルトンと一緒に離宮のキッチンに送っといた」


 きっちんってなんだろう? とりあえず、アリィさんが便利屋してくれて助かるわ。


「馬車も到着していますのよ。さあ、参りましょう」


 にっこり揉み手するお姫の言葉に頷いて、私たちは『女神の食卓亭』を後にしたの。


 乗るのは、伯爵様が寄越してくれた、お屋敷に呼ばれる時と同じ辻馬車風の質素な馬車が二台。


 下町に立派な馬車で来られたら悪目立ちするものね。


 勿論ジェブは歩いてくるわ。え? サニーのクッション? ああ、そうだったわね。


 一応狙われてるのは私だから、お姫とコクトー御夫妻とアリィさんに囲まれてるの。うう、ちょっと居心地悪いかも。なんて思ったんだけど、アリィさんとカサリアさんの『漫才』なる調子のいい会話に笑い転げちゃって、すぐ気にならなくなっちゃったわ。


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