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30.意外な事実!

フライング掲載で訳の判らないもの読んじゃった方すみません。

これが完成版。

おお

勇者カルバン・クライン

雄々しきますらお

広野を進み山を駆け

魔王の魔手を打ち払い

我らに希望を与えたり




 勇者の歌は相変わらず街に流れ、今日も『女神の食卓亭』は繁盛してます。


 六の鐘(午前十時)の開店から七の鐘(正午)のお昼迄は女性客や、お子様連れの奥さん達がお客様の中心。


 お昼はやっぱりお昼休み中の男性客よね。


 で、八の鐘(午後二時)過ぎから九と半の鐘(午後五時)までがお店の休憩と夜に備えた仕入れや仕込みの時間。


 この時間大抵私は一人でか、サニーとお留守番なのよ。


 料理の仕込みがあるからなんだけど、お城から帰ってからかれこれ五日、なんだかやたらに人数増えてるのよね。


 まず最近は、サニーが元気に起きてる。顔色も良くて嬉しいわ。


 次に、リンフェルが出かけ無い。


 これは私とお店の護衛としてターグさんが張り付いてくれてるから、わざわざデートにお城に行かなくても良いからなのよね。


 だから、当然ターグさんは居る。


 マリンピアとエルトンは買い出しと雑用で居ないけど、あれからアリィさんも顔を出してくれてるから、総勢五人が閉めた店先に(たむろ)ってる訳よ。


 まあ、テーブルは数あるし、元々宿屋の食堂を改造して作ってあるから店内広いしで問題は無いんだけど、慣れないから変な感じ。


 しかも今日は、馬鹿も来た。


 うん、ジェブ。


 まぁ、サニーも居るし、みんなも居るし、私は奥の厨房でアリィさんと下ごしらえしてるから、気にしなくても襲って来ないわよね?


 アリィさんってね、すっごく料理が上手いのよ。


 アリィさんのお父さんとお祖母ちゃんから直伝で、旅の間もよく作ってたんですって。


 天使の親って神様かな?


 レシピも色々教えて貰っちゃった。


 今日も教えて貰った料理を新メニューに加えるのよ、キノコのパイ。美味しいんだから。


「……に、してもさ、レイニーちゃん」


 ん? 何?


「いやさ、ジェブだけど。変くね?」


 へ? ジェブが変なのは何時もだし。


「ん~なんつうか、何時もの変じゃないから変だ」


 なにそれ?


「おとなしい。すげ~おとなし過ぎ」


 あ、そ~いえば、私とアリィさんが並んで厨房に居るのに、文句の一つも言いに来ないっていうのは意外だわ。普段のジェブなら『レニーに何をする!』なんて、すっとんきょうな事を喚きながら飛んで来るわね。そして私がフライパンで、厨房から叩き出す。


 何時もの事よ。


 でも、今日は何だか静かに離れたテーブルに居るわ。


 ぽつんって感じ。


 サニーが正面に座っても気が付いて居ないみたい。確かに変だわ。


「なんか持って行ってやるか」


 アリィさんが飲み物を作り出したから、私も氷室から冷たいお菓子を出してくる。


 お店用だけど、最近リンフェルがターグさんの為にってたくさん作るからいっぱいあるのよね。


 ターグさんが甘党だなんて意外だわ。


 それにしてもアリィさんって、口調はチャラいクセに思いやりがあって気配りも上手いんだよね。いいお兄ちゃんって感じ。


 サニーやエルトンも、以前からすっかりなついてるのよ、やっぱり天使だからかな?


「いや、俺。兄弟多いから。妹とか弟の相手するの慣れてるんだ」


 ふぅん。そうなんだ。だからお兄ちゃんって感るんだ。


「あれ?」


「ん?」


 私、いつの間に声に出してたんだろう?


 あ、アリィさんがちっさく笑った。


「早く持って行こうぜ、茶がぬるまる」


 それもそうね。


「しかし、この店にくる奴は幸せだぜ。飯は美味い、菓子も美味い。ついでに俺の茶が美味い」


 アリィさんったら。笑わすの上手いんだから。


 カルバンとは正反対な明るい人だよね。カルバンみたいなぶっきらぼうが天使の勇者なんて、よく勤まるなぁって思ってたけど。アリィさんなら納得よね。さぞかしお世話掛けたんだろうけど。


「ど~した? 湿気た面して」


 お盆をジェブの前に置くと、お茶とお菓子をジェブとサニーの前にだす。


「レニー……」


 アリィさんは見ずにいきなり私?


 アリィさんは苦笑で済ませてくれてるけど、かなり失礼よ?


「まぁ、いいからいいから。睨んじゃ可哀想だぜ」


 ポンポンと頭撫でられちゃった。


「さて、何なんだ? 話したいから、ここまで来たんだろう? ジェブ」


 ジェブの頭もポンポンって撫でて、アリィさんが促すと、ジェブはでっかいため息を吐いたわ。


 思わずサニーと顔を見合せちゃった。


 こんなに落ち込んだジェブなんて、以前サニーをはしゃがせ過ぎて熱を出させた時以来よ。


「何かあったの?」


 ジェブの顔を覗き込んだら、店のドアが開いたわ。


「ただいま~」


 あ、マリンピア。


「よ、マリンちゃん」


「おかえり~マリン」


「無事でよかったな」


 皆がマリンピアに声をかけていると、おもむろにジェブが立ち上がったわ。


「マリン。こっち来てくれ」


 何? すっごい思いつめた顔してる。


「どうした? 馬鹿兄貴。またレニーを口説いてるのか?」


 胡乱な眼差しでテーブルにやってきたマリンピアに、サニーが首を振ったわ。


「今日はしてない。だから変」


 サニーの言葉に、何を考えたのマリンピア? いきなりジェブのおでこに、自分のおでこをこつんこしたわ。頭突きじゃなくて、熱測るあれ。


 マリンピアって手で測らずに、かならずおでここつんするのよ。マイウおばさんもそうだったから、継承したのね。


「……熱は無いな」


 マリンピアがそう言うと、ジェブがまたおっきくため息。


「高熱で朦朧としてての夢ならどれだけいいか……」


 なんだか凄い落ち込みねぇ。


「ま、みんな座れよ」


 いつの間にか席を外していたアリィさんが、人数分のお茶とお菓子持ってきたわ。


 厨房の裏口から帰ってきてたらしいエルトンも一緒。


「何? どうしたの~?」


 好奇心いっぱいな顔でやってきたリンフェルとターグさんも混じって、テーブル二つ繋げての会議状態になっちゃった。


「兄貴。何があったんだ?」


 マリンピアが横に座って促すと、ジェブはもう一回ため息吐いて、マリンピアを見詰めたの。


「マリン。パーディタの嫡子はお前だって知ってたか?」


「はぁ?」


 ジェブの言葉に、マリンピアが変な声を上げたわ。


 そりゃそうよね。


 ご愛妾の娘が嫡子の筈無いじゃない。


「やっぱり知らなかったのか……僕もこの間知って、昨日父上から真実を聞いてきた」


 真実? 何があったの?


「父上が正式に結婚していたのは、マイウ母さんだったんだ」


 ジェブ、衝撃の告白!


「なにぃ!?」


「え~? マジ?」


「何だよそれ?」


「うそぉ」


 以上、マリンピア、リンフェル、エルトン、私。


「……びっくり」


 ちょっと遅れてサニーでした。


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