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14.勇者よ剣を取れ?

おお

勇者カルバン・クライン

輝く戦士

全てを貫く弓を射て

全てを切り裂く剣を以て

白き翼を広げたり



 

 楽士さん。


 盛り上げたいのは判るけど、そんなに朗々と歌い上げなくたっていいんじゃない?


 ファンファーレでも困っちゃうけど、こう、穏便に然り気無く…ね?


 駄目か。


 まあ、華麗に登場してくれちゃった王女様が会場の真ん中でに~っこりしてるし、その相手が件の英雄なんだから、楽士さんがカルバン・クラインを讃えるのは当然だし、他に何かすることある? だとは思うんだけど~


 何故か腕掴まれて一緒に舞台に登った状態なのは勘弁して~!


 回りのお貴族様達が一斉に注いでくる、好奇心いっぱいな視線が痛いんです。ひそひそ声に居たたまれないんですぅ。


 しかも私の腕を掴んでいるのは偽英雄さんじゃあ無くて、何故か王女様。つまり私まで会場のど真ん中に居るわけね。


 さっき颯爽と現れた王女様は、変態おじさんに如何にカルバン・クラインが東の孤島から自分を助け出してくれたかを熱く語った後、私の腕をむんずと掴んでここまで引きずってきたのよ。


 びっくりしたわ。


 だから私は、しがみ付いてたエルトンの腕を放さずにここまで一緒に来ちゃった。


 真っ赤になって突っ立ってるエルトンも可愛いかも……ととと、そういう場合じゃないわね。


「あの、王女様……」


 私たち何時まで晒し者?


 全部言い切る前に、王女様は変態おじさんににっこり顔を向けたわ。


「ではクーヴルール子爵。貴方は何を彼に望むのです?」


 これに待ってましたとばかりに頷いたのは、件の変態おじさん。相変わらず権力には弱いみたいね。へこへこと腰低~く王女様を窺ってるわ。


 そういえばマイウおばさんにも直接権勢づくで手出しができなかったのも、おばさんが伯爵様のご愛妾だったからよね。


 顔も人格も品格も、全部伯爵様に敵わないどころか比べ様もないわ。


 そこんところが全然判ってない変態さんは、今もさも自分が正しいって顔してなんか言ってる。


 しっかり聞く気も無いけど、要するにこの場で英雄らしい事してみろって意味らしいわ。


 口だけは上手いみたいで、何人かが好奇心満載でそうだそうだと尻馬に乗りだしたの。


「あいつら頭あるの?」


 エルトンが呆れた声で呟いたけど、ほんとにそうよね。


 魔王なんてものすごいモノ相手にしてきた人、自分が敵うとでも思っているのかしら。


「よろしい」


 トパさんが威厳のある声で頷いたわ。


 真っ直ぐ背を伸ばして凛々しく前を向いてると、美形度合いでも英雄でございって押出があるのよ。


 どちらかって言うとチンピラ臭いカルバンより、悔しいくらいかっこいいわ。


「では皆さん。私は剣と弓どちらを披露致しましょう。なにぶんこの宴の余興故、無粋なことは避けたいのですが」


 剣だ、弓だ。喧々囂々。みんな好き勝手に囃し立ててる。こうしてみると大道芸見ている街の人と変わらないわね。お貴族様も。


 あんまり纏まらないから、とうとう王様が手を叩いたわ。


「夜会の余興に血は好まぬ。弓を見せよ」


 歓声が上がって用意が始まる。


 でもね。王女様はまだ私を放してくれないの。


「あ……あのう……」


 恐る恐る声掛けたら、にっこりしたままこっち見た!


「レイニー様」


「は、はい!」


 うわ、声が裏返っちゃった。


「覚悟は宜しくて?」


 へ?


「な……なんの?」


 うわ、いや~な予感。


「もちろん、弓の的になる覚悟ですわ。私と共に並びましょうね」


 きゃぁ~やっぱりぃ~


がんばれヒロインズ

次回はウイリアム・テル?

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