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12.疑惑は踊る

 カルバン様がレイニー・ブルースと踊っている。


 彼の白い礼服と、淡い黄色のドレスが華やかに咲く。


 初めて見たレイニー・ブルース。


 美しい娘だった。


 鮮やかな青い髪は癖もなく、揺れる度に涼やかな音がするかのようだ。


 ほっそりとした肢体は、淡い色のドレスですら華奢な印象を強めている。どんな女性でも羨むに違いない小鳥のような少女。


 野に咲く碧き花。


 少し戸惑った表情は愛らしさを強調し、微笑み見つめる彼の英雄と相俟って、踊る二人の姿がどれほど似合いの一対であることか。


 胸の奥が少しだけ痛むのは、罪悪感なのか、それとも別の感情なのか……


 捕まってはいけない。この感情に。


 ああ、でも甦ってしまう。


 あの声が……


――カルバン・クラインが心寄せるのは、レイニー・ブルースのみ――


 シャルトンの花が脳裏に甦る。


 咲き乱れ、風に舞う白い花。一面の花の野に一人立つ、あの背中。


 胸が痛い。


 しかし、もう振り回されたりはしない。


 私のするべき事は決まっているのだから。


 目を転ずれば、まるで射殺さんばかりにレイニー・ブルースを見詰める令嬢方が目に入る。


 いずこも同じ。


 行き場のない嫉妬が、レイニー・ブルースに集まっていく。


 そうやって見ていても、彼が貴女方へ歩み寄って行く事は有り得ないと早く悟るべきだろうに。


 私が、この一段高い王女の椅子から気楽に降りては行けないのと同じ。


 選ばれし乙女になるのは、貴女方では無理なのだから。


 しかし、無知蒙昧な輩は、理解を望むのも無謀に違いない。


 ああ、もう駄目。


 愚かな。


 なんと些細な事に拘るか。


 もっと大きく見なければ。


 彼女を呼んだのは彼の希望。しかし実際は我々の計画の一部なのだから。


 見つけ出さなくてはならない。彼の為にも、あの方の為にも。


 曲が終わる。夢の一対が動きを止めたが、何か様子がおかしい。


 周りが異常を勘付く前に、彼はレイニー・ブルースを抱えてバルコニーへ半ば駆け出した。


 何が起きたのだろう?


 予想外の事が起きたのだろうか? それとも何か別の……?


 気にはなる、しかしまだ動けない。


 わずかに衆目が彼の背を追う。しかしすぐにさんざめきが戻ってきて、執拗に視線をバルコニーのある掃き出し窓へ向けたままなのは、次の曲へのお相手を得られなかったか断ったかの令嬢のみ。


 いや。あと数人。違う視線を向ける者達が居る。


 パーディタ家からの者達は除外できる。家族とも言える女性が男性にバルコニーへ連れて行かれれば、心配するのは当然だから。今も二人の後を追うように、少年がバルコニーへの窓へ取り付いた。


 私が気にするべきは別の者。


 さり気無く、ゆったりとした足取りでバルコニーでは無く、庭へ向けた階段へ歩く男。


 思わず父王を振り返る。


 陛下はゆっくりと頷かれた。


 やっと、動ける。


 それでも機会はよく見際ねばならなうだろう。


 陛下に一礼し、玉座前の階段を下りれば、待ち構えている貴公子達の壁が出来上がる。


 退けと一蹴したいのを堪えて、私はゆっくりと足を運ぶ。


 神よ。


 カルバン・クラインを守りたまえ。


相変わらず、謎めくお姫様ww

やっと何か起きそうです。

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