11.私は可愛い林檎なの
おお
勇者カルバン・クライン
輝く戦士
全てを貫く弓を射て
全てを切り裂く剣を以て
白き翼を広げたり
え~と、今のが二番だから、三番はどんなだっけ?
ダメ思い出せない。ってか頭真っ白よ。
う~、なんだか目の前がチカチカしてるんですけど~
パレードでも絵になる美形だとは思ったわ。でも、ここまで近所に来られたら、もう目眩がしてくるわよ。
しかもこいつ、ダンスめちゃくちゃ上手いの。
たいして踊れやしない私をリードして、全然問題無くくるくる回しちゃうんだもの。
うううう~
超絶美形で優雅でダンスもバッチリなんて。こっちのほうが本物の英雄臭い~
カルバンなんて、お祭りの時のダンスでも足がこんがらかっちゃうのよ。
なんだか悔しいわ。
ところでさっきから背中がぴりぴり痛いのは、この美形を狙ってるご令嬢方の嫉妬の殺気かしら?
ううう。生きて帰れるかな?
だけど、どんなに美形でも、嘘はダメよね。こいつはカルバンの名を騙る偽物なんだもの。どういうつもりか聞き出さなきゃ!
「あの」
「はい?」
「~~!」
ダメだ、顔の破壊力で頭が真っ白になる。
こいつ、顔だけで相手の血圧上げて殺せるんじゃないかしら。
ちょっと! 止めてよね、そんなふわっと笑うの。あんたには興味ないの! だのにドキドキして顔が勝手に赤くなるでしょ!
「貴女はとても可愛らしい。瑞々しい林檎のようです」
く……口説いたって無駄なんだから。
「なんて、貴女に囁いたら、カルバンに半殺しにされてしまいますね」
え?
「彼に伝えてくれませんか? いい加減出てきて下さい。と」
ええぇ?
「あんたがカルバンを騙ってるんでしょ?」
なにその鳩に豆叩きつけたみたいな顔。
「彼に聞いて無いんですか? 相変わらず人が悪いなぁ。街に入った時に間違われて、その上彼自身から任せた、と肩まで叩かれてしまったのですよ。お陰で恥ずかしい思いをしました」
あれだけ堂々とパレードしといて恥ずかしい? でもちょっと待って。この人の口振りって、まるで…
「もしかして、あんたカルバンの友達なの?」
美形って困った顔でも様になるのね。
「それも話してくれていないんですか? 酷いなぁカルバン。僕は彼の仲間です。故あって今は名乗れませんが、トパとでも呼んで下さい」
うわぁ、なんだかいい人っぽいわ。
でも、なんか微妙にずれてる気がする。だって
「カルバンは、何時帰ってきてるの?」
これって爆弾発言だったみたい。
トパさんは真っ青になって立ち竦んじゃった。丁度曲が終わったのは、天の采配かしら。
「大丈夫?」
聞いてみたけど返事はない。カチンって音がしそうなほど固まってるわ。
せめて手を離してからにして欲しいんだけど。
でも、美形が蒼白になると、もんのすっごい色気が撒き散らされるんだって事を、私は今初めて知ったわ。
『驚愕』とかって題名つけて、彫刻でございと飾って置きたいくらい。
至近距離過ぎて心臓に悪いけどね。
と、いきなり動いた!
「とにかく此方へ」
腰抱いたままどこに持っていくつもりよ~
「何すんの?」
取り敢えず抗議しとこう。目の端に、エルトンが人波掻き分けてこっちに向かってくれてるのが見えた! 早く来て早く来てさ~ら~わ~れ~るぅ~
「拐いません。バルコニーで話したいだけです。ここは人が多すぎる」
ちょっといったいなにがどうなってるのよ~!
おかげさまで、ユニークアクセス1,250人通算5,943アクセスいただきました。
ありがとうございます。
パソコン故障中で少々更新もたつくかもしれませんが、がんばりますね。




