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1.一歩どころか、何やってんのよ!

え?煽り文句と語り手が違う?まあ。( *´ー`)基にしない気にしない

おお

勇者カルバン・クライン

無敵の英雄

聖なる天使の命を受け

魔王ガンドルを打ち倒し

我らに平和をもたらせり



 街中をそんな流行り歌が流れて、子供達が棒切れを振り回して勇者ごっこに駆け回る。


 シアル国の王都オルブランは、今日帰還した英雄カルバン・クラインの話題でもちきり。


 当然よね。


 カルバン・クラインはこの二年間、みんなの心の支えだったんだもの。


三年前、魔王の軍団が街を半壊させて、人をいっぱい殺して挙げ句に王女様を拐って行った。


 みんなみんな絶望したけど、一年後。王女様は帰って来たの。石化の魔法を掛けられて、東の小島に監禁されていたのを、とある騎士が助け出したから。


 それがカルバン・クライン。天から魔王討伐を命じられた勇者。しかもオルブラン出身、街には一気に希望が戻ったわ。


 カルバンが頑張ってるんだから、自分たちも頑張ろうって。


 まだまだ魔王の攻撃はあったけど、それでもカルバンが拠点を潰したって知らせがくる度に希望が増していったわ。


 国も街も一歩一歩、ゆっくり戻り出して、半年前、北の空にずっとあった黒い雲が消えた。


 カルバンが、魔王を倒したっていう知らせがしばらくして届けられたの。


 国中が、ううん国々が、カルバン・クラインを讃えたわ。


 そして彼が帰って来る日を待ちわびて。


 そして今日、遂に街の門を白い馬に乗った騎士が潜ったの。


 白銀の鎧を身に纏い、豪華な剣を帯びて鏡のように磨かれた盾を携えた、金髪碧眼の美丈夫。


 誰もがピンときたんですって。彼がカルバン・クラインだって。


 情報は一気に街中を走った。


 そして直ぐにお城から迎えが来て、近衛隊に囲まれてパレードになったの。


 私も遠くからでもカルバンが見たくて、大通りまで仲間と出ていったのよ。


 大通りはもう人で溢れかえっていたわ。二階の窓まで鈴なりでね、ものすごかった。


 知り合いの肉屋のおかみさんが呼んでくれなかったら、きっとパレードなんて見れなかったわ。


 肉屋の二階の窓にお邪魔して、通りを見たらちょうどパレードが来たところだった。ヤリッと思って身を乗り出して……私達はフリーズした。


 固まる私達の横で、おかみさんの家族が口々に感動を表しているのが聞こえてくる。


「ああ、なんて良い男だろうねぇ」


 眉目秀麗な英雄さんは本当に美男子。


 金髪碧眼で鼻筋通って細面。女装させたい位よね。


「あの鎧兜、立派だよな」


 きらびやかな近衛隊にも全然負けない白銀の鎧兜。盾を磨くのに何時間掛けたんだろう。


「あの剣で魔王を倒したんだな」


 なんかでっかい宝石とか細かい細工とかしてある剣って、実用向きなのかしら。


「あ、手を振ってくれた」


 うん。さっきからにこやか爽やかに手を振ってるわね。


「気品があるねぇ」


 そうね。手の振り方とか、笑い方とか、優雅っての? まあまあ、道に並んだ娘さん達がメロメロになってるわ。


 私と三人の仲間達は、呆然としたままパレードを見送って、何をどう言ったのか憶えて無いけどおかみさん達にお礼して肉屋を後にして。ぼーっと道を歩いて、自分達の店に戻ってきたの。


 ぼーっとしたまま戸締まりして、皆で店のテーブル囲んだところで……堰が切れた。


「誰? あれ!」


 これ私。


「何だよ! あの優男!」


 これエルトン。


「どうしてあんな美形がカルバンなの?」


 可愛い声はリンフェル。


「マジに偽物じゃないか!」


 男前なマリンピア。


 我ら『女神の食卓亭』の一同は、本物とは似ても似つかない(しかも本物より数段美形な)偽物にいきり立ったって訳。



 そりゃね、カルバンが騎士ポレール様の見習い騎士になって、オルブランから旅立って行ったのが六年前で。彼はまだ十三だったし、魔王の攻撃で知り合いもたくさん亡くなったんだし。十九になったカルバンを、街の人達が知らないのは仕方がないとは思うよ。


 でも、でもね。


 それが私達に通用すると思ったら大間違いよ!


「絶対、あの偽物の化けの皮、剥がしてやるわ!」


がんばってるのはヒロインらしい。

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