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ある日、

長い旅に 出ていた 魔女の師匠が、

ようやく 家に 帰ってきました。


師匠は、

見習い魔女の 話を、

だまって 最後まで 聞きました。


そして――

しばらく 空を 見つめたあと、

静かに 言いました。


「……この国を 出ましょう」


見習い魔女は、

びっくりして 目を まるくしました。


「え?」


師匠は ほほえんで、言いました。


「あなたが 今まで 直したもの、

この家の もの、ぜんぶ つめて 行きましょう」


ふたりは、

直してきた ぬいぐるみや 時計、

おもちゃや 食器を、

ゴミ箱に つめました。


見習い魔女は ゴミ箱の 上に のって、

師匠は ほうきに のって。


そして――

ふたりは 空へ 飛び立ちました。


雲の 上を 飛びながら、

見習い魔女は 小さな声で 言いました。


「師匠……

出来損ないの 私のために、

ごめんなさい」


すると 師匠は、

やさしく 首を ふりました。


「あなたは 出来損ない なんかじゃ ないわ」


「人より、ほんの 少し時間が かかるだけ」


「でも、今は もう

修復の魔法が できるでしょう?」


見習い魔女は、

そっと うなずきました。


「それなら、あなたは立派な 魔女よ」


師匠は、遠くに 見える国を 指さして 言いました。


「あの 国はね、

新しいものを 持つことが

一番 大事な 国だった」


「古いものを 大切にしない 国」


「だから ゴミが たくさん 出るの」


「そのうち ゴミに 沈むか、

魔法で燃やすか……どちらか でしょうね」


師匠は ため息を ついて、

でも すぐに ほほえみました。


「でも、もう 関係ないわ」


「次の国は、百年、二百年と

ものを大切にする国よ」


「あなたは、きっと

たくさん 感謝されるわ」


それから 師匠は、

少し まじめな 顔で 付け加えました。


「でも、ひとつだけ気をつけなさい」


「すべてを 新品みたいに

直せばいい、というわけじゃないの」


「そのものの 歴史を大切にすること」


「キズや へこみが、

大事な 思い出のこともある」


「それを 消してしまったら、

かえって 怒られて しまうわ」


見習い魔女は、ゴミ箱の上で、

そっと その言葉を かみしめました。


雲の すきまから、

新しい 国の 光が 見えてきました。


今度は、

捨てられる ためじゃなく。


大切にされる ために、

直す魔女として。


見習い魔女は、

はじめて 少しだけ、

自分の 魔法を 信じられた 気がしました。


おしまい。

SDGsや「ゴミを減らそう」という言葉が広がる今、

ものを大切にするのはヨーロッパ、では私たちはどこにいるのでしょう。

この物語は、その問いから生まれました。

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