17話【完】
シーラ・マクニースの死は、瞬く間に社交界へと広まった。
呪血によって命を落としたのではないか——。
兄であるグレンに殺されたのではないか——。
そんな噂も、同時に囁かれていた。
◇
参列者達の視線も、背後で交わされる声にも、グレンは全く意に介さなかった。
長年求め続けていたものを、ようやくこの手に収めたのだ。ただそれだけで、他の全ては些末なことだった。
葬儀は滞りなく終わり、グレンはしんと静まり返った廊下を一人歩く。
——結局、公子は来なかったな。
参列者の中に、オリバーの姿はなかった。
バーネル邸にも訃報はきちんと届けてある。
余程ショックを受けたのか、それとも——。
そこまで考えたところで、グレンは思考を打ち切った。
あの男のことなど、もはやどうでもいいことだ。
庭園へと繋がるドアを押し開ける。
快晴の空の下、色とりどりの花々が風に揺れていた。
その中央に佇む少女の金髪もまた、ふわりとなびいている。
「……あまり外に出るな。幽霊が出たと騒ぎになる」
グレンが冗談めかして小さく笑うと、シーラはくるりと振り返った。
「今この家にいるのは、私とグレン様だけです。しばらくは、使用人も戻ってこないのでしょう?」
彼女の言葉通り、喪に服したいという名目で、使用人達には暇を出している。
屋敷は、今や二人だけの世界だった。
グレンも花畑の中へ足を踏み入れ、シーラの片手を取り口付けを落とす。
「……これからも定期的に暇は出すつもりだが、行動の制限は避けられない。——別邸に身を隠すという手もあるが……」
「多少の不自由は、覚悟の上です」
シーラははっきりと口にし、グレンの腕にそっと抱きついた。
「手放さないと、誓ってくださったでしょう?」
上目遣いでこちらを見つめる。
その仕草の一つ一つが、ひどく愛おしい。
「ああ、そうだな」
グレンは彼女の髪に触れ、静かに囁いた。
二人は見つめ合い、穏やかな笑みを交わす。
誰にも祝福されることのない、歪な愛だけれど。
それでも二人にとっては、これ以上ないほどの幸せだった。
完
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