怪しい図書館 前編 偽
半生死神の主人公、可解 舞武の親戚の女の子が巻き込まれた、ちょっとだけ不思議で全く怖くないお話、今ここで始まります
小学3年生の名探偵少女、可解 芽衣[かかい めい]は普段から通う大好きな図書館にやって来ていた。本の好きな彼女にとってここは最高の空間だった。そこには大人が普通に立っていれば本を取れるほどの、それでいて小さな子供たちにワクワクを与えるほどの高い棚とぎっしりと詰められた数々の本があった。
「凄いわ!ここにある本たち。お父様の書斎と同じくらいかしら。一生かけてやっと読み切れるくらいじゃないかしら。」
興奮していた芽衣の元に誰かが現れる。
「芽衣ちゃん。こんな本はどうかしら。」
司書さんがそう言ってファンタジー小説を芽衣に渡そうとした。
最近入ってきたバイトのようで図書館に来る子どもたちに良くしてくれる可憐な司書さんだ。
「ごめんなさい。私現実味のない小説を読むのはあまり好みではないですの。」
「そっか、ごめんね。」
最近やってきたから芽衣の本の趣味を知らなかったのだろうと芽衣は思いながら評論文を手に取り、いつもの席へと向かった。そこには四人の少女が集まっている。
「昨日ぶりです。芽衣さん。」
一人の少女、回生 輪廻[かいせい りんね]が口を開く。
「今度は何読んでんだ?ウチに内容はよくわかんないけどよ。」
金子 得[かねこ どく]も芽衣に向かって挨拶をした。神宮寺 千代[じんぐうじ ちとせ]は静かに本を読んでいた。
「ふう、本を読むのにも少し疲れたね。芽衣くんには来たところで悪いんだが少しお話をしないかい?」
「いいぜ。」
得も乗り気だ。
「意味がわかると怖い話を・・・、おっと。芽衣くんは非現実的なお話が好きじゃなかったんだった。それじゃあ、『本当に怖くない話』で怪談話をしよう。これなら芽衣くんでも楽しめるだろ?」
「賛成です。」
「みなさんがやるというのであれば私も参加させていただきますわ。」
「さて、では始めようか。まずは言い出しっぺの僕から話し始めるよ。」
千代はみんなが千代の話に耳を傾けようとするまで一息ついた。そして彼女はおもむろに自身の話を始めた。
◇◇◇◇◇
「あるところにね、トランプが好きな小学生の集団がいたんだ。彼女たちは普段から5人で仲良しでね、お泊まり会の時に夜更かししてトランプをしてたんだよ。1時間くらいするとトランプに飽きてきた子が言ったんだ。肝試しをしない?ってね。」
(既に少し怖そうな雰囲気が出てしまっているけどここからどうやって怖くない話に繋げるのかしら。)
「彼女たちは電気を落として部屋の角に散ったんだって。二人一緒に向かった角が一個だけあったってことだよ。あらかじめ決めた子が動き始めて角まで移動したらそこにいる子の肩を叩いて今度は肩をた叩かれた子が次の角へと向かうんだ。」
(読んだことあるわ。これ、有名な怪談でしょう?そこからどう怖くなくなるのかしら・・・。)
「彼女らはそれを10周繰り返したんだけど何も起こらなかったんだ。なぜだか分かるかい?移動する子と角で立ち止まる子でちょうど5人必要だったからだよ。」
◇◇◇◇◇
「なんだよ。下らない話をしやがって。」
「得くんはこの流れで怖い話をするかと思ったのかい?言ったじゃないか。怖くない話をするよって。」
(そう。これくらいの現実的な話が丁度いいわ。)
「ハードルが上る前に次はウチが話す。」
得は千代とは違い、もったいぶらずに唐突に話し始めた。
◇◇◇◇◇
「幼稚園児の小さな女の子がいたんだ。その子はウサギのぬいぐるみが大好きだった。その子が持ってるぬいぐるみは既に黒ずんでいて寝る時だろうと抱きしめ、親が一瞬でも触ろうとするとすぐ起きて親のことを威嚇するんだとよ。だからその親はぬいぐるみに触れるタイミングが無かったらしい。ある日、幼稚園でプールに入る時間があったんだよ。その子は聞き分けのいい子だから仕方なくぬいぐるみは置いてプールに入ったんだ。」
(前回と違って最初から怖い雰囲気な訳では無いようですわ。これからどのようにお話が展開されるのかしら。)
「プールから帰るとな、その子のぬいぐるみはなくなっちまってたんだよ。その子はひどく取り乱して帰るまで一人の保育士さんがほぼつきっきりでいてあげたんだとさ。そしてその子が帰るタイミングになって親が迎えに来てくれたんだ。その時、一人の保育士の男がそこに現れたんだ。そして持っていたぬいぐるみをその子に渡して言ったんだ。『これは君のぬいぐるみだろう?もうなくしちゃダメだよ。』ってね。頑張って探してくれたいい人もいるもんだなって話。これでウチの話はおしまいだ。」
◇◇◇◇◇
「すごいいいお話ですね。私もそんなふうに人のためになる事をしたいです!」
輪廻はとても感動しているようだった。
(この話・・・、全くもって怖いのかもと少しでも思わせる要素が無いわね。)
「さて、次は私が話させてもらいましょうか。現実味のない話が大好きな芽衣さんなら大トリを務められるでしょう?」
輪廻はそう口にしてゆっくりと姿勢を変えた。
「このお話、いかがだったかしら。何で後書きなのに作者じゃなくて主人公がしゃべっているのか、ですって?そんな事を気にしちゃダメですわ。ということで、後編も楽しんでくだされば嬉しいですわ。」




